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峯森誠司
14話 約束をかわした仲だからな(1)
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「ぎゃーっ! せ、誠司くんがっ、変っ!」
羽馬が飛び上がった拍子に、手元から落ちたペットボトルが見事な音を立てて地面のコンクリートに刺さった。
俺だって自分の口から溢れたとは、にわかに信じられないでいる。だから、羽馬が両腕で自分を抱き締めるようにして驚愕の表情をも隠さず怯えて見てくる様子に、大いなる共感さえある。
「へん、かやっぱ」
「変! だよ! え? なんか変なものでも食べちゃった!?」
今度は心配そうに顔を近付けてきた。本気で心配になってきたのか真剣そのものの表情を無防備に寄せてくるもんだから、たまったもんじゃない。さっきから抑えようとしている心臓の爆音が、自分を煽ってでもいるようで。
「よし!」
喝と気合いを入れるように腿を打ち、立ち上がった。
「羽馬!」
「は、はいっ!?」
お互い向き合い、敬礼でもし合うような背筋の伸び具合である。
「付き合うって、結局どういうことだと思ってる?」
「へ?」
羽馬は瞳をまんまるにしてから、首を捻った。
「えーっと、え?」
「結局さ、俺もまだよくわかってなくてさ」
「うん」
「だから、これからどういうものなのか飛び込んでみようか。ふたりで」
「うん。……え?」
羽馬はいまいち意味を呑み込めていない様子だ。だけど、呑み込まないうちに進めておかなければならない。とにもかくにも一撃必勝なんて技は、今の羽馬には効かないし、俺には扱えない代物。過去の俺が何層にも埋めてきたものを少しずつ掘っていくことが必要なんだと思う。だから、俺たちが時間を共有するチャンスを沢山作らなければならない。
「まずは、毎日登下校を一緒にするっていうの、やってみる?」
これならハードル低いだろう。羽馬も断りにくいだろうし、初心者な俺的にも可能な行動だ。なんせ、そもそも俺のほうが手探り状態なんだから。
羽馬の表情は、見事なくらいクルクルと変化している。ポカンと唇を開いたかと思ったら、眉を押し上げるように瞳を見開き、はたまた犯人でも見てるかのような疑いの視線を投げては、不安そうに首を傾げている。
こうなってくると、こっちもだんだん不安になってきた。今、過呼吸なくらい状態異常の脳みそ熱湯中なため、勢いに任せて押せ押せでいっているが、そもそも今現在の羽馬の俺に対する気持ちがどこに着地しているのかよくわかっていないのだ。
「……俺と、いるの邪魔くさかったら、無理にすることでも――」
「やります!」
羽馬はピョンっと一歩前に跳ねて、敬礼した。
「ぜひ! 一緒に! 登下校お願いします!」
「お、おうっ!」
なんとなく、俺の右手も敬礼のポーズを取っていた。
なんとか、第一歩を踏み出せた。一発ドンッといくよりもジリジリと距離を詰めていけば、羽馬が変に身構えず複雑に考えずにいられるだろう。
「じゃあ、さっそく、一緒に帰ろうか」
「うん! あ! でも美乃里ちゃんと約束してたから一言伝えとかないと」
「げっ」
「え?」
「あ、いや、なんでもない」
やはり避けては通れない、門番を。でもそれさえクリアすれば、これからの羽馬との時間は共有しほうだいなのだ。
羽馬は嬉しそうに歩き出した。その様子にホッとした。嫌じゃないってことだ。俺と帰るということが、むしろスキップするぐらいには嬉しいことであってくれた、ようだ。
俺も思わずスキップしそうになりつつも、校舎内へ戻った。
羽馬が飛び上がった拍子に、手元から落ちたペットボトルが見事な音を立てて地面のコンクリートに刺さった。
俺だって自分の口から溢れたとは、にわかに信じられないでいる。だから、羽馬が両腕で自分を抱き締めるようにして驚愕の表情をも隠さず怯えて見てくる様子に、大いなる共感さえある。
「へん、かやっぱ」
「変! だよ! え? なんか変なものでも食べちゃった!?」
今度は心配そうに顔を近付けてきた。本気で心配になってきたのか真剣そのものの表情を無防備に寄せてくるもんだから、たまったもんじゃない。さっきから抑えようとしている心臓の爆音が、自分を煽ってでもいるようで。
「よし!」
喝と気合いを入れるように腿を打ち、立ち上がった。
「羽馬!」
「は、はいっ!?」
お互い向き合い、敬礼でもし合うような背筋の伸び具合である。
「付き合うって、結局どういうことだと思ってる?」
「へ?」
羽馬は瞳をまんまるにしてから、首を捻った。
「えーっと、え?」
「結局さ、俺もまだよくわかってなくてさ」
「うん」
「だから、これからどういうものなのか飛び込んでみようか。ふたりで」
「うん。……え?」
羽馬はいまいち意味を呑み込めていない様子だ。だけど、呑み込まないうちに進めておかなければならない。とにもかくにも一撃必勝なんて技は、今の羽馬には効かないし、俺には扱えない代物。過去の俺が何層にも埋めてきたものを少しずつ掘っていくことが必要なんだと思う。だから、俺たちが時間を共有するチャンスを沢山作らなければならない。
「まずは、毎日登下校を一緒にするっていうの、やってみる?」
これならハードル低いだろう。羽馬も断りにくいだろうし、初心者な俺的にも可能な行動だ。なんせ、そもそも俺のほうが手探り状態なんだから。
羽馬の表情は、見事なくらいクルクルと変化している。ポカンと唇を開いたかと思ったら、眉を押し上げるように瞳を見開き、はたまた犯人でも見てるかのような疑いの視線を投げては、不安そうに首を傾げている。
こうなってくると、こっちもだんだん不安になってきた。今、過呼吸なくらい状態異常の脳みそ熱湯中なため、勢いに任せて押せ押せでいっているが、そもそも今現在の羽馬の俺に対する気持ちがどこに着地しているのかよくわかっていないのだ。
「……俺と、いるの邪魔くさかったら、無理にすることでも――」
「やります!」
羽馬はピョンっと一歩前に跳ねて、敬礼した。
「ぜひ! 一緒に! 登下校お願いします!」
「お、おうっ!」
なんとなく、俺の右手も敬礼のポーズを取っていた。
なんとか、第一歩を踏み出せた。一発ドンッといくよりもジリジリと距離を詰めていけば、羽馬が変に身構えず複雑に考えずにいられるだろう。
「じゃあ、さっそく、一緒に帰ろうか」
「うん! あ! でも美乃里ちゃんと約束してたから一言伝えとかないと」
「げっ」
「え?」
「あ、いや、なんでもない」
やはり避けては通れない、門番を。でもそれさえクリアすれば、これからの羽馬との時間は共有しほうだいなのだ。
羽馬は嬉しそうに歩き出した。その様子にホッとした。嫌じゃないってことだ。俺と帰るということが、むしろスキップするぐらいには嬉しいことであってくれた、ようだ。
俺も思わずスキップしそうになりつつも、校舎内へ戻った。
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