告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~

鶴時舞

文字の大きさ
4 / 13

第4話 腹ペコ高校生

しおりを挟む
 カレーが出来上がり、120cm四方の座卓のテーブルに向かい合って並べられる。カレー特有のスパイスの芳醇な香り。人類の発明の中でも一際輝いているであろう料理だ。

 この強烈な引力には、腹ペコ高校生は到底抗えない。

「「いただきまーす!」」

 二人きれいに声がそろったところでカレーを食べる。さて雪代さんの反応は如何に。

「おいひーよぅ!」

 大きな目をさらに大きくして、雪代さんが絶賛する。その表情を見るだけで満足度が伝わってくるようだ。続いて俺もカレーを食べる。

「うん、これはなかなか!」

 一人で食べても美味しいが、二人で食べると美味しさがさらに増すような気がした。

 三合炊けば、明日朝の分まで持つかなと思っていたが、二人で調子よく食べていたらすっきり無くなってしまった。

「食べすぎた~! こんなにお腹いっぱいに食べること無いかも」

 よほど気に入ってくれたのか、しっかりおかわりもしてくれた雪代さん。その幸せそうな様子には、ほっこりしてしまう。もう放課後の時の怯えた表情はすっかり消え、いつもの明るく朗らかな雪代さんに戻っていた。

「食後のデザートは入らないかな? プリンあるけど」

 俺が冷蔵庫から自家製プリンを取り出すと、雪代さんは目を輝かせた。

「プリン大好き! それは別腹だよ~」

「こんなのもあるけど使う?禁断のホイップクリーム。これをかけると……飛ぶよ」

「なん……だと! かける~!」

 プリンにホイップクリームをデコレーションする。

「はい、デザート! さあお食べよ!」

 お腹いっぱいのはずの雪代さん。プリンを眼の前にして目を輝かせ一口ぱくっと食べる。それはそれは幸せそうな表情に。

「このプリンすごく美味しいよう~。自家製なんてすごいね!」

 すごい、これほど美味しそうに食べてくれる人は、なかなかいないんじゃないか?
 最大の賛辞を表情で示してくれるのは、作った身としては嬉しすぎる。

 誰かのために料理を作ることは今までもあったけど、眼の前で美味しそうに食べてくれるのは本当に嬉しいな。

 ――誰かのために作ったものを、自分で廃棄するほど虚しいものはないけど。

「あれ、藤崎くん、私なんか変なこと言っちゃった?」

 雪代さんが俺の表情を見て、そんなことを言う。しまった、以前の嫌な記憶に囚われてしまったようだ。

「ごめん! なんでもないんだ。小骨が喉に引っかかった。」

「小骨って……、カレーの豚肉の骨?」

 雪代さんがそう言ってケラケラ笑う。笑顔が可愛すぎて一緒にいるのが本当に幸せ。

 食後のコーヒーを二人で飲む。プリンの甘さにはぴったりだ。ただ、さっきお店で飲んだコーヒーに比べると、やっぱり敵わないな。

「このコーヒーも美味しいよ。誰かが入れてくれるのは、やっぱり美味しいね」

 雪代さんがそんな事をいってくれる。確かにそういうものかもしれないな。

「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとうね」


 しばらく談笑した後に、雪代さんが少しため息をもらしつつ、
「なんか学校行くの、もうやだな……」などと口走る。

「――告白なんて本気ならさ、本当はなかなか出来ないし、された方も普通なら嬉しい気もするんだけどね。雪代さんの場合は確かに度を超えてるのかもね」

 俺がそう言うと、少し悲しそうな表情になる雪代さん。

「本当に私のことをよく知って、好きになってくれて告白してくれるなら、そりゃ真剣に受け止めて考えるよ。でも、あの人達は違う」

 雪代さんは見た目の美しさもさることながら、成績もトップクラスだ。才色兼備な彼女と付き合えるのはきっとステータスなんだろうな。

「学校に行きたくなくなるほどなんて、相当深刻だよね……」

「もうやだ……」

 ああ、楽しい気分だったのが思い出して落ち込んじゃった。テーブルに突っ伏した雪代さんの頭を思わず撫でてしまう。

 こっちを少し覗き見て、くすっと微笑む雪代さん。

「藤崎くん、――私のこと羽依って呼んでもらっても良い?」

「うん、じゃあ俺のことも名前で呼んでね」

 そう言って、俺が撫でていた手をそっと握り返し、羽依は指を絡めてきた。
 その瞬間、心臓がドクンと跳ねた。

「蒼真。蒼真なら触っても大丈夫なんだよね。嫌な感じが全然しない」

「俺は羽依に手を握られてめっちゃ動揺してるけどね!」

 俺が顔を真っ赤にしてそう言うと、羽依はニマ―っと笑う。ちょっと悪そうな顔だ。

「んふ、男の人の照れって何か可愛いよね。男の人がみんな蒼真みたいだったら良かったのにね~」

「羽依には一度聞きたかったんだけどね、何で俺とは普通に話せるの? 最初は男として見られてないのかと思ったけど」

 冗談ぽく言う俺の言葉に羽依は少し考えてる様子。

「なんでだろ? 理由は無くはないんだけどね。ただ、う~ん……直感? 蒼真は優しいし気遣ってくれるし、見た目も好きだし」

 なんか大絶賛してくれる。見た目が好きってなに? 別に俺はイケメンでもないし、中学の時モテたこともない。美醜については感性は人それぞれだからね。ただ、こんなに可愛い子にそう言われて、悪い気がするはずがない。

 きっと今の俺の顔は、この上ないぐらい真っ赤になってると思う。
 だって羽依はものすごく悪戯な顔してるし。
 からかわれてる?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

処理中です...