告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~

鶴時舞

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第5話 新婚の距離感

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 食後のコーヒーの後にゲームをすることに。

「羽依は、一人でゲームとかやるの?」

「あまりやらないけどね、やるなら格闘ゲームとかレースのゲームかな」

 カジュアルな女の子が好みそうなゲームだ。それなら『マリオンカート』かな。

 俺もゲームに熱中してたのは中二のときまでだ。持っているソフトはそれより前のもの。
 久しぶりの対戦ゲームにちょっとワクワクしている。相手は女の子だから加減もしなくてはだめかな? いや、ここは手を抜かずに全力で行こう!さあスタートだ!

 羽依選手、いきなりロケットスタートをかましてくる。あれ? そんなに経験ないのでは……俺はのんびりスタートになってしまった。
 妨害アイテムを巧みに使いこなし、羽依選手圧勝。

「やったー! 蒼真下手だね!」

 こやつ、煽りよる……!

「ちょっと久しぶりだったからね。次は負けないよ!」

 その後10回ほどプレイするも完敗。いや全く勝てる目がない。どういうこと?

「格闘ゲームやろっか!『シュマブラ』がいいかな!」

「いいね! それ好き!」

 端的な「好き」に、ちょっとした恐怖を覚える。もしかしてこれも勝てんのか……。

「KO!」

「あはは! 蒼真よわいね! ざーこざーこ!」

 むうう、敗者になんて仕打ちを。ぷぷぷと笑ってるその顔をギャフンと言わせてやりたい。

 何戦かした後に、ようやく一勝。情けをかけてくれたのかな。だとしたらちょっと悔しいな。

「……蒼真、今のはなに? ハメ技? 」

「え? いや、そんな事はなかった……かな」

「鉄拳制裁!」

 そういって俺の脇腹をめっちゃ突いてくる。やめてー!

 ――散々つついて満足げな表情の羽依。汚されちゃった……。

「――俺も負けたら、つついてもいい?」

「女の子にそんなことしちゃ駄目だよ?」

「あ、はい」

 理不尽だ……。

 どうもゲームは勝てそうにない。勝ったところで実力行使されるのはさすがに如何なものか。

 いや、じゃれ合いで色んなところが見えたり当たったりするのが嬉し恥ずかしで大変なんだよ……。

 なんだかまるで恋人同士だな。すっごく楽しい。こんな子と付き合えたら俺の高校生活はきっと毎日が楽しくて仕方なくなるだろうな。

 そろそろお風呂の時間かな。お湯はさっき沸かしておいたから。

「お風呂はいろうか? 羽依から先に入ってね」

「ありがとう。一緒に入る?」

「馬鹿なこと言わないでさっさと入ってね」

 ニマニマしながら「はーい」と返事をし、風呂に向かう。羽依の「一緒に入る?」という言葉が頭の中でずっと繰り返していた。心臓に悪いって……。今日だけでどれだけ心臓に負担がかかったことか。

 放課後から怒涛の展開だったなあ……。たまたま芝の上で寝転んでたら同級生の女の子――しかも一目惚れの相手――とお泊りになるとか。

 まあ、その原因も解決してないんだよな。告白を断る負担を無くす方法かあ……

 そんなことを考えてるうちに羽依が風呂からでた。まだ湿った髪に、火照った顔。可愛らしいピンクのパジャマがとても似合う。

 ……どうみてもノーブラらしき突起物は指摘するべきか否か……まあ女の子も寝る時ぐらい楽になりたいだろうからな。見て見ぬふりが良いのかな。

「じゃあ入ってくるね。」

「ごゆっくり~」

 笑顔で見送る羽依。何か恋人というより、まるで新婚のような、そんな距離感。羽依の俺に対する信頼感は一体なんだろうか? 裏切る気は全く無いけど、ちょっと不用心が過ぎるんじゃないかとは思ってしまう。

 色々考えるとのぼせそうになるので無心で頭と体を洗い、身を清める。
 寝間着を着て風呂場から出ると、羽依は寝支度が済んでいたようだった。

「羽依はベッド使ってね。俺は床で良いからさ」

「そんなのは駄目だよ蒼真。家主がベッドを使うべき。」

 頑なその表情。きっと迷惑をかけてしまっているという負い目なんだろうな。

 ちょっとふざけて「じゃあ一緒に寝ようか」などと馬鹿みたいな冗談を言ってみる。羽依はきょとんとしたあと、そっと微笑んで――

「……うん、一緒に寝ようよ。蒼真だったら安心できるし、今日は一人で寝たくないの」

 ……まだ引きずってるのか。

 実際、放課後に周りに誰も居ないあの状況。俺がいなかったら先輩の行為はどこまでエスカレートしてしまったんだろう。おそらくキスだけでは済まずに、相当なことになってしまっていたのかもしれない。全部未遂で済んで本当によかった。

 一緒に布団に入り電気を消す。仰向けに寝る俺の右腕に、羽依がしがみついてきた。

「――今日の先輩の告白はね、私もあんな人気のないところで二人きりになるのは嫌だったんだ。先生からの呼び出しって話だったのに、行ったらあの先輩がいてね。」

「先生からの呼び出しって……。言ってきたのは誰だったの?」

 煮えくり返る腹をぐっとこらえて絞り出した声だったので、ちょっと低めなトーンになってしまった。
 俺の声に羽依は少しだけ身をすくめて話を続ける。

「私も迂闊だったんだよね。知らない女子の先輩だったんだ。まさか連携プレイだったのかな」

「……。」

 言葉を失う。
 ――そもそも告白云々ってよりも、襲う気満々だったのかもしれない。女子の先輩からしたら、モテモテの後輩とか面白くない存在なのかもしれない。これはもう、本当に危険が迫ってるように感じる。

 一つ閃いたが、それは俺に何もメリットがない。むしろマイナスだ。羽依だって快くは思わないかもしれない。

 でも他にいい方法があるとも思えない。
 彼女を守れるなら、それでいいと思った。

 腹をくくって羽依に提案してみよう。

「羽依、俺と付き合わない?」
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