7 / 13
第7話 謝罪
しおりを挟む
――甘い香り、柔らかい感触。
朝の日差しがカーテンの隙間から入り込む。
アラームよりも先に覚醒する。――なんだか随分良く眠れたようだ。
「――?……!!」
目が覚めると、隣に寝ていた羽依に後ろからしがみついていたことに気付く。
柔らかい肌の感触で、一気に脳が覚醒する。右手の指先には突起の感触をしっかりと感じてしまっていた。左手は、腰骨から鼠径部にかけて触れていた。
こ、これは完全にやらかした……!
上から下まで、はだけたパジャマ姿が艶めかしすぎる。
慌てて羽依のパジャマを整え、布団から出る。
不可抗力とは言え、大変申し訳ないことをしてしまった……。
羽依が起きたら謝るべきか、知らぬが仏の言い伝えに則るべきか……。
――とりあえず、日課のロードワークに出よう。
今の自分に必要なことは、心のクールダウンだ。
表に出てストレッチを行う。程良く体が温まったところで、5kmほどジョギングをする。
運動部では無いから、何もしないとどうにも体が訛ってしまう。
中学の受験勉強で体力も筋力も激減したから、ジョギングと筋トレだけは、なるべく毎日欠かさないようにしている。
全行程を1時間程度で済ませ、帰宅する。
家に着くと、パンの焼けるいい香りがしてきた。
羽依はもう起きているようだ。
「おかえりー! 食材使わせてもらっちゃったから、後でお金払うね~」
「ああ、ありがとう。いい香りだ。お金は良いよ。手間賃と相殺で」
だめだ、どうしても顔が蕩けてしまう。
おかえりの言葉。自分のために作ってくれた食事。俺が欲してやまないものが、そこにあった。
……誰かに“待たれている”って、こんなにも嬉しいことなんだな。
テーブルにはトーストとサラダにハムエッグが用意されてるが、今日の配置は向かい合わせでは無く、羽依のお皿は俺の右隣に配膳されている。
特にこだわりも無いので好きな場所に座ってもらおう。
「いただきまーす」
羽依を見ると、何だか顔が赤い。まさか熱でも有るのかな?
俺は一口目のコーヒーを飲む。
タイミングを見計らったように、俺の方を見ずに話し始める羽依。
「――蒼真、私の抱き心地どうだった?」
「ブーーッ!!」
俺は飲みかけたコーヒーを思いっきり吹いた。
「ガハッ!ゲホッ!……お、起きてたの!?」
「私のパジャマ直してくれて、ありがとう」
ジト目で睨まれながらお礼を言われても、全然嬉しくない。
「大変申し訳ございません!!」
盛大に土下座する俺に、吹き出す羽依。でも怒っている顔は継続中。
まあ、頬を膨らませてるだけで目は笑っているが、許された訳では無いので、謝罪を続ける。
「俺に出来る事なら何でもするから、本当にごめん!」
ああ、羽依が俺の知る限り、過去一悪い顔になっている。
「何でもするって言ったね! 言質取りましたあー!」
勝ち誇る羽依。俺、何されるの……。
吹き出したコーヒーを拭いてから、食事を再開する。
「悪気がないのは分かってるからね~。気にしなくてもいいよ。なんでも言う事聞いてくれるんだし♪」
やたらと上機嫌の羽依。好きでもない男に体を触られて嫌な気しないのかな?女の子の考えることは、よく分かんないや。
「で、俺は何をすればいいのかな?」
羽依が顎に指をあてて考えてる。
「蒼真、今日動物園にいきたいって言ったら連れて行ってくれる?」
それってデートじゃない!? 土日は全く用がないし、断る理由が見当たらない。
「もちろんかまわないよ。でもそれじゃ謝罪にはならないよね?」
「そうかな? 私のわがまま聞いてくれるんだから、それでもう良いよ」
羽依は茶目っ気たっぷりに笑って、そう言ってくれた。怒りが収まったのか、そもそも怒ったフリしてたのか。何にしてもよかった~……。
「今日は動物園で遊んで、明日は勉強しよっか! 蒼真がどれだけ出来るか、確認もしておきたいしね~」
「ありがとうね。動物園なんて久しぶりだから楽しみだよ」
色々気を遣ってくれているのが伝わって、心がほっこりと温かくなる。本当に優しい子だなと思う。
食事と片付けを済ませて、支度を始める。
「ちょっとシャワーだけ浴びるね。ジョギングの後だからさ」
風呂場に行こうとする俺に羽依がニマニマしながら近づいてくる。
「覗いても良いよね?」
「いや、駄目でしょ!?」
「私の裸見て触ったのに?」
「人聞き悪すぎね!? やっぱり羽依、俺のこと許してないよね!?」
俺は逃げるように風呂場に入って鍵をかけた。ケラケラと羽依の笑い声が響いてきた。ああ、当分いじられそうだなこれは……。
朝の日差しがカーテンの隙間から入り込む。
アラームよりも先に覚醒する。――なんだか随分良く眠れたようだ。
「――?……!!」
目が覚めると、隣に寝ていた羽依に後ろからしがみついていたことに気付く。
柔らかい肌の感触で、一気に脳が覚醒する。右手の指先には突起の感触をしっかりと感じてしまっていた。左手は、腰骨から鼠径部にかけて触れていた。
こ、これは完全にやらかした……!
上から下まで、はだけたパジャマ姿が艶めかしすぎる。
慌てて羽依のパジャマを整え、布団から出る。
不可抗力とは言え、大変申し訳ないことをしてしまった……。
羽依が起きたら謝るべきか、知らぬが仏の言い伝えに則るべきか……。
――とりあえず、日課のロードワークに出よう。
今の自分に必要なことは、心のクールダウンだ。
表に出てストレッチを行う。程良く体が温まったところで、5kmほどジョギングをする。
運動部では無いから、何もしないとどうにも体が訛ってしまう。
中学の受験勉強で体力も筋力も激減したから、ジョギングと筋トレだけは、なるべく毎日欠かさないようにしている。
全行程を1時間程度で済ませ、帰宅する。
家に着くと、パンの焼けるいい香りがしてきた。
羽依はもう起きているようだ。
「おかえりー! 食材使わせてもらっちゃったから、後でお金払うね~」
「ああ、ありがとう。いい香りだ。お金は良いよ。手間賃と相殺で」
だめだ、どうしても顔が蕩けてしまう。
おかえりの言葉。自分のために作ってくれた食事。俺が欲してやまないものが、そこにあった。
……誰かに“待たれている”って、こんなにも嬉しいことなんだな。
テーブルにはトーストとサラダにハムエッグが用意されてるが、今日の配置は向かい合わせでは無く、羽依のお皿は俺の右隣に配膳されている。
特にこだわりも無いので好きな場所に座ってもらおう。
「いただきまーす」
羽依を見ると、何だか顔が赤い。まさか熱でも有るのかな?
俺は一口目のコーヒーを飲む。
タイミングを見計らったように、俺の方を見ずに話し始める羽依。
「――蒼真、私の抱き心地どうだった?」
「ブーーッ!!」
俺は飲みかけたコーヒーを思いっきり吹いた。
「ガハッ!ゲホッ!……お、起きてたの!?」
「私のパジャマ直してくれて、ありがとう」
ジト目で睨まれながらお礼を言われても、全然嬉しくない。
「大変申し訳ございません!!」
盛大に土下座する俺に、吹き出す羽依。でも怒っている顔は継続中。
まあ、頬を膨らませてるだけで目は笑っているが、許された訳では無いので、謝罪を続ける。
「俺に出来る事なら何でもするから、本当にごめん!」
ああ、羽依が俺の知る限り、過去一悪い顔になっている。
「何でもするって言ったね! 言質取りましたあー!」
勝ち誇る羽依。俺、何されるの……。
吹き出したコーヒーを拭いてから、食事を再開する。
「悪気がないのは分かってるからね~。気にしなくてもいいよ。なんでも言う事聞いてくれるんだし♪」
やたらと上機嫌の羽依。好きでもない男に体を触られて嫌な気しないのかな?女の子の考えることは、よく分かんないや。
「で、俺は何をすればいいのかな?」
羽依が顎に指をあてて考えてる。
「蒼真、今日動物園にいきたいって言ったら連れて行ってくれる?」
それってデートじゃない!? 土日は全く用がないし、断る理由が見当たらない。
「もちろんかまわないよ。でもそれじゃ謝罪にはならないよね?」
「そうかな? 私のわがまま聞いてくれるんだから、それでもう良いよ」
羽依は茶目っ気たっぷりに笑って、そう言ってくれた。怒りが収まったのか、そもそも怒ったフリしてたのか。何にしてもよかった~……。
「今日は動物園で遊んで、明日は勉強しよっか! 蒼真がどれだけ出来るか、確認もしておきたいしね~」
「ありがとうね。動物園なんて久しぶりだから楽しみだよ」
色々気を遣ってくれているのが伝わって、心がほっこりと温かくなる。本当に優しい子だなと思う。
食事と片付けを済ませて、支度を始める。
「ちょっとシャワーだけ浴びるね。ジョギングの後だからさ」
風呂場に行こうとする俺に羽依がニマニマしながら近づいてくる。
「覗いても良いよね?」
「いや、駄目でしょ!?」
「私の裸見て触ったのに?」
「人聞き悪すぎね!? やっぱり羽依、俺のこと許してないよね!?」
俺は逃げるように風呂場に入って鍵をかけた。ケラケラと羽依の笑い声が響いてきた。ああ、当分いじられそうだなこれは……。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
半世紀の契約
篠原皐月
恋愛
それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。
一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる