夢に向かって翔け

結城時朗

文字の大きさ
上 下
23 / 25
最終章

顔合わせ

しおりを挟む
ーー1月25日・OTSーー
エントランスで、入館証をもらう2人。

ーー16階・会議室1601ーー
ノックして入ると、部屋には何人かがいる。
その中に青野の姿があった。
「おはようございます!  宮澤さん、竹中さんはこちらです」
席に案内され、座るとすぐ、扉が開き山内と安河内、依藤が入ってくる。
「全員揃ってそうですね。  では、早速顔合わせしていきます」
「あの、岡田さんは?」
「どうしても外せない用事があって遅れるとのことです」
「では、初めて行きます。  まずはそれぞれ自己紹介からですね。  何人か知ってる方もいますが、プロデューサーの依藤です宜しくお願いします」
「特プロの山内です」
時計回りに始まっていく自己紹介。
「APの仁川です」
「撮影の近藤です。  記憶に残るカット撮っていきます」
「音声の時本です宜しくお願いします」
「照明の吉本です。  作品楽しみにしております。」
「特効の長谷川です。  ミニチュアが映える特効していきます」
「造形の東海林です。  複雑なデザインでもやり遂げます」
「広報の青野です。  作品盛り上げて行きましょうね」
山内から紹介が入る。
「そして、今回セカンドライターとして入ってもらうお2人です」
「宮澤英二です。  初めての業界なので御指導宜しくお願いします」
「竹中美波と申します。  私も初めての業界なので緊張していますが頑張ります」
「この2人は、応募総数42568作品の頂点に輝いたんですよ!」
拍手が起こる。
「2人とも宜しくお願いします」
「お願いします」
「では、初めに今回の作品、主役は女性、ヒーローではなくヒロインです。  なので東海林さん、シンプルなデザインお願いしますよ!」
「了解でーす」
「原案は今回のコンテストの入選作からになります」
「原案なのにセカンドなんですか?」
青野が質問する。
「ここで発表してあれだけど、原案は宮澤さん達ですが、2人にはセカンドとして入ってもらいます。  が、セカンドの2人がメインを支える事で成り立つ作品があってもいいのではないかと言うことで」
依藤が話している最中に割り込む山内。
「いつ決まったんですか?」
「えっ?」
「私、把握してませんけど・・・」
「それは・・・1ヶ月前です」
「私たちに連絡なしに?」
「いや、作るのは私たちなんで」
「版権は私たちにあります。  私たちがノーと言えばあな方は作れませんし、無断で作れば著作権法違反ですから」
「そこまで言わなくてもいいんじゃないですか?」 
「いや、やっぱりこうして宮澤さん、竹中さんを迎えたわけですから、この2人がメインライターじゃないんですか?」
会議室が一気に緊張感に包まれる。
冷や汗が止まらない英二。
下を向いている美波。
各々資料を見たりして、依藤と山内を見ないようにしているその他スタッフ。
大声をあげる依藤
「だったら2人に決めて貰いましょうよ」
「宮澤さん、竹中さんどっちがいいですか?  メインとセカンド。もちろんあなたの作品だからメインですよね?」
ギスギスした空気が漂う部屋。
突然扉が開き、岡田が入ってくる。
「すみません。遅れました!  今回セカンド担当します岡田彩貴です」
頭の上にハテナを浮かべる2人。
すると突然、モニターが映り、ド定番のアタック音とともに【ドッキリでした】と文字が出る。
状況が飲み込めない2人。
山内が微笑みながら話しかける。
「宮澤さん、すみません!  実はこれ全部ドッキリなんですよ」
「意味が分かりません」
依藤が説明する。
「実は、これ新しいライターさんが入る時の恒例なんです」
安河内が入り込む。
「あなた、隣見てみなさい」
言われた方向を見ると今にも吹き出しそうな美波の顔があった。
「この子もねグルよ」
「はっ?  なんで?」
「ごめん!実は自信なさそうな顔してたからさ、安河内さんに相談したのよ」
「いつ?」
「いつって、1月8日」
「そんな前から?」
山内が話し出す。
「実は、当初、本当にセカンドで入ってもらう予定だったんですよ。  そこにいる岡田さんと安河内さんに猛反対くらいまして・・・」
「当たり前じゃない、メインで入れると思った作品が実はセカンドでしたなんて、詐欺よ詐欺」
「私もそれじゃ納得いきません」
「ということで、毎年恒例のドッキリを使ったんですよ。  いつもよりヘビーな内容ですけどね・・・」
「英二くん?  そういうことよ」
「自分がメインライターってことですか?」
「はい。  宜しくお願いしますね」
「はい!  ぜひ宜しくお願いします!」
そこからは、談笑混じりの会議が進んでいく。

しおりを挟む

処理中です...