青い石との奇妙な生活

結城時朗

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第一幕

夢の中

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史緒里は、夢を見ていた。
「ここはどこ?」身に覚えのない場所に戸惑いながら、辺りを見回す。
ジメッとした何もない空間に立っている史緒里。
慎重に1歩ずつ歩を進めていくと、何かに引っかかりその場に転んでしまう。
「痛ったー。何よ!」
立ち上がり、躓いた場所を見ると、何もない。
不思議に思いながらも再び歩を進める史緒里。
何かしらの違和感を感じ、振り返るが何もない。
後ろを気にしながら、歩を進めていくと、自分以外の足音に気づく。
「誰? 誰かいるの?」史緒里の問いかけに答えるはずもなく、虚しく自分の声が反響する。
不気味に思い、歩くスピードを早める史緒里。
耳をすますと、同じスピードで追いかけてきているのが分かり、全速力で走る。
それに答えるが如く、スピードをあげる足音。
振り返るが、居ない事に、恐怖を感じる史緒里。
もう一度、耳をすますと、追いかけるものは素足なのか、ペタペタと音がしていた。
「なんなのよ!」
再び転んでしまう史緒里。
「痛っ! もう! なんなの! 姿現しなさいよ!」
姿を表さない相手に怒鳴る。
立ち上がり、再び歩を進めようと前を向いたした瞬間、目の前に人が立っていた。
目が合う史緒里。
その正体に、悲鳴をあげる。
史緒里が見たその姿は、自分自身そのものだった。
同じ顔、同じ容姿の者は、史緒里に向かって首を傾げ、ペロッと舌を出した。
その舌は、真っ青で人間と異なるものであった。

飛び起きる史緒里。
肩で息をしている。「今の何?  夢?」
落ち着かせるために、リビングに行き、水を飲む。
「気持ち悪い夢」
ベランダに出ると、陽が沈み夜になっていた。
深呼吸をする史緒里。
部屋に入り置き時計の時間を見ると夜の11時を回っていており、リビングの椅子に座り込む。
「もう、まだこんな時間じゃん! 寝れるかなー」

再び寝室へ行き、ベッドに寝転ぶと目を閉じる。
何かを思い出したかのように目を開け、枕元の棚に置いた青い石を見る。
史緒里が朝拾った時より、少し大きくなっている気がした。
「あれ? こんなサイズだっけ?」
最初は5㎝ほどの大きさだったものが一回り大きくなっていた。

それからというもの、史緒里は毎夜うなされるようになる。
「う、ううん・・・ 来ないで! 来ないで!」
飛び起きる史緒里。額にはべっとりと脂汗をかいている。
時計を見ると朝の6時。いつも起きる2時間前には目が覚めてしまうため、目の下のクマが日に日に濃くなっていく。

港区・品川駅近くのオフィス。
創立5年と比較的新しい会社である。事業内容、アパレル系ファッションアイテムの輸入品を棚卸しする代理店業務を行う部署や文具などの開発する部署、不動産など多岐にわたる会社である。
史緒里が働いているのは映画やテレビドラマなどのロケーション時に必要なケータリング斡旋部門である。
なんとも言えない顔で出社する史緒里。
「おはようございます・・・」
先輩社員である里中が嫌味を言いに来る。
史緒里は、この里中が苦手というより嫌いである。
「あんたね、朝の挨拶ぐらいハキハキと出来ないの? 全く! 少し可愛いからって調子乗るんじゃないのよ!」
「すみません。 決して調子乗ってるとか無いです。」
「どうだか」
同僚の岡田が来る。「史緒里おはよ! 朝から大変だね!」
「もう、ほんとだよ!」「史緒里、最近顔色良くないけどちゃんと寝たり食べたりしてる?」
「してるよ!ただ、最近変な夢ばっかり見て、寝れないんだ」
「変な夢・・・」
「そう! それがさ、不気味でさ!」
そこに里中がまた、嫌味を言いに来る。
「若いふたりは良いわねー。 朝から喋るだけで!」
いつもだったら何も思わない史緒里だが、怒りが込み上げ、鋭い眼光で睨む。
「な、何よ! その顔」
我に返る史緒里。自分が睨んでいたという記憶も感覚もない。
この日から、自分の感情など無しに睨んだり、舌打ちをしたりという行動を取るようになって行った。

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