托卵だった娘が『パパのお嫁さんになる!』って言っているのだが?!

万和彁了

文字の大きさ
7 / 8
壊れる日常

新婚さんごっこ

しおりを挟む
 パパのお嫁さんになる。それはありふれた子供の戯言。大人になれば忘れる。だけど今ここに大人になろうとしている女が俺に向かってそう言っている。

「戸惑ってる?でも本気だよ」

 欹愛は妖艶に微笑みながらそう言った。俺はその艶やかな色気に圧倒されている。だから何も口にはできない。欹愛は俺の頬を撫でながら、愛おし気な目で俺を見詰めてくれている。

「ねぇねぇ。せっかくのお家デートなんだし新婚さんごっこしようよ」

「なにそれ?」

 欹愛は立ち上がり冷蔵庫から牛乳と卵を出してきた。そして戸棚からホットケーキの粉も。そしてボールに材料をぶちまけて泡だて器で混ぜ始める。

「ほらほら。新婚のお嫁さんが料理してるんだよ。旦那さんとしてはやることあるでしょ?」

 やることとやらを想像してみる。自分の新婚時代を思い出したけど、当時はデキ婚だった上に、俺は警察学校に通っていたというなんとも味気のないものだった。だからだろうか。どこかの映画で見たシーンの真似をすることにした。

「きゃん!うふふ。まだ出来てないよ~。せっかちさん♡」

 俺は料理をしている欹愛の後ろから抱き着いた。両手は料理の邪魔にならないように彼女の腰に回した。欹愛は抱き着かれて嬉しいのか体をくねくねと揺らす。

「ほら。さぼるなよ。早く食べたいんだから」

 欹愛の体が俺の腕の中で揺れるたびに色々な柔らかさを感じてちょっと恥ずかしかった。でもそれは同時に高揚感を覚えるものであり、まるで絵に描いた新婚さんのような気持ちになれたような気がする。

「ふふふーん。待っててね。あ、そうだ?味見する?」

 欹愛は混ざったホットケーキのもとに人差し指を突っ込んでそれをペロリと舐めた。

「ホットケーキって焼く前の方が美味しくない?」

 欹愛は再び指を突っ込んでホットケーキのもとを掬ってきた。それを俺の口の方に近づけてくる。本当は焼く前のホットケーキの粉は体にはよくないそうだ。だからそれはやってはいけないことだ。でも俺は欹愛の指を咥える。

「…んっ。くすぐったいようぅ。ふふふ」

 ホットケーキのもとは濃厚でとても甘かった。やってはいけないことなのに、だからこそとても気持ちがいい。そしてすぐに欹愛はフライパンでホットケーキを焼いていく。さすがに焼いているときにはお互いにふざけることはなかった。そして出来上がったホットケーキの山をテーブルまで持っていった。

「わたしと再婚したらとってもお得だよ。ママのホットケーキはマーガリンと蜂蜜のけち臭いやつだけど、わたしのはバターとメープルシロップの豪華なやつだからね」

「そう。それは贅沢だね」

 普段はあんまり使わないバターを冷蔵庫の奥から取り出して、俺と欹愛はそれをたっぷりとホットケーキに塗った。普段冷蔵庫の主である妻がいないからこそできる贅沢。

「はい、あーん」

 欹愛は手でちぎったバターまみれのホットケーキを俺の口に近づける。俺はそれにぱっくりと食らいつく。

「ふふふ、お腹空いてたのねぇ。かわいいかわいい」

「子供扱いされたらたまんないな。これでも中年なんだけど」

「そう?でもね。かわいいって思っちゃうの。理屈なんかないの。かわいいの。かわいくてかわいくて仕方がないの」

 そう言って欹愛は俺にキスしてきた。不意打ちされた俺の顔は自然と熱くなる。

「ほら。顔が真っ赤。かわいい…」

 さらにキスを続けてくる。舌を絡めてきて的確に気持ちいいところを責めてくる。

「わたしのキス、気持ちいい?」

「ああ。そうだな。一体どこでこんなテクを学んだのやら」

「あ、ひどーい。わたしはママと違って一途なんですけど!こんなことする人は、世界でたった一人。あなた・・・だけだよ」

 ふっとその言葉に痛みを覚えた。妻は俺以外の男とこんな風にキスをしたのだろう。その証が目の前の女だ。妻を寝取られた情けない男が、間男の置き土産とキスしてる。なんという皮肉なのだろうか。間男と娘ではなかった女。二人とも俺を舐め腐ってる。八つ当たりがしたくなった。

「そうか。そんなの言葉でならいくらでも言える」

 俺は欹愛を床に押し倒す。両手の手首を抑えて、彼女の上に覆いかぶさる。一瞬だけ驚いたような顔を欹愛はした。だけどすぐにどこか興奮したように瞳を濡らして俺を見詰めてくる。

「本当に一途なら。きっと痛いだろうけど。俺を恨むのはやめろよ」

「うん…!大丈夫!」

「お前が悪いんだ。娘じゃないのに綺麗で可愛いのが悪いんだ」

「うん!わたし、悪い子なの!生まれたときから悪い子なの!娘じゃなくってごめんなさい!だからいっぱいいっぱい痛くしてよ!娘じゃないって体に刻み込んでよ!…あっ…」

 もう言葉はいらない。俺は欹愛の唇を塞ぐ。舌を思い切り絡めあって。体をまさぐり合って。








 俺たちは一つになって、一線を越えてしまったんだ。





 だからもう。退くことは出来ないんだ。







しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...