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第一章 立志篇 Fräulein Warlord shall not walk on a virgin road.
第11話 俺TUEEE奴ほどチェスが好き!
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放課後、勝手に早退したことについて学園長に呼び出しをくらい、事情を適当に説明し、実家の権力をチラつかせて、やっとお説教から解放された。
その頃には夕日で空も赤く染まっていた。
遠くに見える聖樹もファンタジックにキラキラと光ってみえた。
聖樹ウィルビウスはこの大陸にいればどこからでも見える(大陸の広さを考えるとあり得ないはずなのだが…)。
その幹は雲さえも貫いて遥か天高く伸びている。
設定上は宇宙まで届いているそうだ。
見た目は確かに樹に見えなくもない。
前世の記憶を取り戻してから見ると、その威容に改めて驚かされる。
大きなものはそれだけで人々に神の姿を想起させ錯覚させるのだ。
だからあの樹の麓に聖都アリキアと呼ばれる都市があり、宗教的聖地として人々の信仰の対象の一つとなっている。
この異世界には大陸は一つしかない。
この大陸はプロセルピナと呼ばれている。
プロセルピナ大陸には宗教は事実上一つしか存在していない。
聖樹の名でもあるウィルビウス教という宗教がこの大陸の人々の心を支配している。
まあすでに色々な歴史的事件のせいで世俗権力の方が強くなってしまったため、存在感は薄いが…。
それでも宗教というフォーマットは強い。
例えばギムレーはウィルビウス教が認定する『聖女』という称号を持っている。
この『聖女』は一種の聖職者の一種であり、かつ病気などを治せる医療従事者でもある。
この世界の人間は基本すごく丈夫で、しかも回復力がすごく高い。
ビルの上から落ちても捻挫くらいで済んじゃったり、馬車に轢かれても痣が出来るくらいで済んだり、手足がちぎれようが、脊柱が砕けようが、内臓がはみ出ようが、回復魔法があればケロッと治ってしまったりするようなびっくり人間しかいない。
なんというかすごく戦争向きな連中なのだ。
だけどそんな異世界人たちも病気には弱い。
病気は魔法では簡単に治せず、ちゃんとした医者にかからないといけない。
その例外が聖女であり、数少ない魔法で病気を治せるというチートを持っている。
そのおかげで聖女は人々から尊敬され崇められているのだ。
そう、だから目の前の人混みはその聖女様、ギムレーのせいだとすぐにわかった。
もう放課後なのに、校門近くのテーブル付きベンチの周りを人々がぐるりと囲んでいた。
そこに座っているのは王子とギムレーの二人、その向かい側にはやたらと前髪の長い黒髪の少年が座っていた。
つーか王太子、放課後もギムレーを連れまわしてるのか…。
本当にしょうがない奴だな。
「さあさあ!一口賭けないか!現在のオッズは王太子殿下が圧倒的に優勢だ!賭けておけば確実に帰ってくるぞ!どうだ!」
ヒンダルフィアルがメガホン片手に大声で生徒たちに呼びかけていた。
そして彼の横には様々な色の髪色の美少女たち(パッケージに写っているメインヒロインたちだ)が並び、かけ札を売りさばいていた。
彼らの足元には立て看板が出ていた。
そこにはこう書かれていた。
『賭けチェス。挑戦者求む!!』
原作で見ましたねこれ。
このゲーム、プレイヤーの視点は一年生の4月からスタートする。
そこから一年間は平和な学園パート。
様々なミニゲームやらリア充イベントやらラブコメやらが楽しめる。
王道のコメディーパートは、プレイしていて楽しい。
だからこそ一年後の戦争パートの地獄の描写とのギャップから『あの頃は何も知らないでいられて幸せでした』とか『平和の尊さと大切さと美しさを知りました』とかいうコメントを引き出すことに成功し、後に出たぬるい平和な学園ラブコメもののファンディスクの売り上げに貢献しているわけで。
なおファンディスクでもジョゼーファは幸せになれない、でもいちおう肉便器からセフレくらいには昇格できる。
…それは昇格なのだろうか?
さて、このチェスもミニゲームの一種だ。
勝つとアイテム等がゲットできる。
一部キャラクターはこれで好感度もあがる。
「頑張れ殿下!」「おこずかい全部賭けましたよ!」「いっそここは大穴に…!」「でも王子って強いんだろ。成績はガチでいいし。あの黒髪の奴じゃ無理じゃないか?」
王太子は自信満々な笑みを浮かべ、ギムレーに何かを囁いていた。
ギムレーは王太子相手にニコニコと笑みを浮かべていたが、王太子が視線を離すと、途端に何処か白けた顔になっていた。
うわぁ…露骨だなぁ。
王太子が見ていないときは、髪の毛の先とか弄ってる。
めちゃめちゃ退屈してるみたい。
ギムレーって全然王太子のこと好きじゃないよね。
魅了はしているけど、なんだろう、キャバ嬢みたいなもんか。
父親に王子に近づけと言われているから近づいているだけで、まったくその気がない。
「カンナギ・ルイカだったかな。あいにくだが、相手が平民であっても手加減はしない。むしろ王族として君たち民草に敬意を持っているからこそ、手は抜けないのだ。もちろん掛け金も没収する。まあ一種の税だと思って諦めて欲しい」
なんか上から目線だなぁ。
まあ身分制全盛の社会だし仕方ないのかも知れない。
でも冷めるよね。
よくレストランで店員さんにため口で話すカレピに冷めたって聞くけど、その気持ちがよくわかった。
実際となりに座っているギムレーは王子にドン引きしている。
「お手柔らかにお願いします。俺は外国人ですが、王太子殿下と一局打てることは望外の喜びです」
対して原作主人公は口元に微かに笑みだけ浮かべてさらりと流していた。
その頃には夕日で空も赤く染まっていた。
遠くに見える聖樹もファンタジックにキラキラと光ってみえた。
聖樹ウィルビウスはこの大陸にいればどこからでも見える(大陸の広さを考えるとあり得ないはずなのだが…)。
その幹は雲さえも貫いて遥か天高く伸びている。
設定上は宇宙まで届いているそうだ。
見た目は確かに樹に見えなくもない。
前世の記憶を取り戻してから見ると、その威容に改めて驚かされる。
大きなものはそれだけで人々に神の姿を想起させ錯覚させるのだ。
だからあの樹の麓に聖都アリキアと呼ばれる都市があり、宗教的聖地として人々の信仰の対象の一つとなっている。
この異世界には大陸は一つしかない。
この大陸はプロセルピナと呼ばれている。
プロセルピナ大陸には宗教は事実上一つしか存在していない。
聖樹の名でもあるウィルビウス教という宗教がこの大陸の人々の心を支配している。
まあすでに色々な歴史的事件のせいで世俗権力の方が強くなってしまったため、存在感は薄いが…。
それでも宗教というフォーマットは強い。
例えばギムレーはウィルビウス教が認定する『聖女』という称号を持っている。
この『聖女』は一種の聖職者の一種であり、かつ病気などを治せる医療従事者でもある。
この世界の人間は基本すごく丈夫で、しかも回復力がすごく高い。
ビルの上から落ちても捻挫くらいで済んじゃったり、馬車に轢かれても痣が出来るくらいで済んだり、手足がちぎれようが、脊柱が砕けようが、内臓がはみ出ようが、回復魔法があればケロッと治ってしまったりするようなびっくり人間しかいない。
なんというかすごく戦争向きな連中なのだ。
だけどそんな異世界人たちも病気には弱い。
病気は魔法では簡単に治せず、ちゃんとした医者にかからないといけない。
その例外が聖女であり、数少ない魔法で病気を治せるというチートを持っている。
そのおかげで聖女は人々から尊敬され崇められているのだ。
そう、だから目の前の人混みはその聖女様、ギムレーのせいだとすぐにわかった。
もう放課後なのに、校門近くのテーブル付きベンチの周りを人々がぐるりと囲んでいた。
そこに座っているのは王子とギムレーの二人、その向かい側にはやたらと前髪の長い黒髪の少年が座っていた。
つーか王太子、放課後もギムレーを連れまわしてるのか…。
本当にしょうがない奴だな。
「さあさあ!一口賭けないか!現在のオッズは王太子殿下が圧倒的に優勢だ!賭けておけば確実に帰ってくるぞ!どうだ!」
ヒンダルフィアルがメガホン片手に大声で生徒たちに呼びかけていた。
そして彼の横には様々な色の髪色の美少女たち(パッケージに写っているメインヒロインたちだ)が並び、かけ札を売りさばいていた。
彼らの足元には立て看板が出ていた。
そこにはこう書かれていた。
『賭けチェス。挑戦者求む!!』
原作で見ましたねこれ。
このゲーム、プレイヤーの視点は一年生の4月からスタートする。
そこから一年間は平和な学園パート。
様々なミニゲームやらリア充イベントやらラブコメやらが楽しめる。
王道のコメディーパートは、プレイしていて楽しい。
だからこそ一年後の戦争パートの地獄の描写とのギャップから『あの頃は何も知らないでいられて幸せでした』とか『平和の尊さと大切さと美しさを知りました』とかいうコメントを引き出すことに成功し、後に出たぬるい平和な学園ラブコメもののファンディスクの売り上げに貢献しているわけで。
なおファンディスクでもジョゼーファは幸せになれない、でもいちおう肉便器からセフレくらいには昇格できる。
…それは昇格なのだろうか?
さて、このチェスもミニゲームの一種だ。
勝つとアイテム等がゲットできる。
一部キャラクターはこれで好感度もあがる。
「頑張れ殿下!」「おこずかい全部賭けましたよ!」「いっそここは大穴に…!」「でも王子って強いんだろ。成績はガチでいいし。あの黒髪の奴じゃ無理じゃないか?」
王太子は自信満々な笑みを浮かべ、ギムレーに何かを囁いていた。
ギムレーは王太子相手にニコニコと笑みを浮かべていたが、王太子が視線を離すと、途端に何処か白けた顔になっていた。
うわぁ…露骨だなぁ。
王太子が見ていないときは、髪の毛の先とか弄ってる。
めちゃめちゃ退屈してるみたい。
ギムレーって全然王太子のこと好きじゃないよね。
魅了はしているけど、なんだろう、キャバ嬢みたいなもんか。
父親に王子に近づけと言われているから近づいているだけで、まったくその気がない。
「カンナギ・ルイカだったかな。あいにくだが、相手が平民であっても手加減はしない。むしろ王族として君たち民草に敬意を持っているからこそ、手は抜けないのだ。もちろん掛け金も没収する。まあ一種の税だと思って諦めて欲しい」
なんか上から目線だなぁ。
まあ身分制全盛の社会だし仕方ないのかも知れない。
でも冷めるよね。
よくレストランで店員さんにため口で話すカレピに冷めたって聞くけど、その気持ちがよくわかった。
実際となりに座っているギムレーは王子にドン引きしている。
「お手柔らかにお願いします。俺は外国人ですが、王太子殿下と一局打てることは望外の喜びです」
対して原作主人公は口元に微かに笑みだけ浮かべてさらりと流していた。
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