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第一章 立志篇 Fräulein Warlord shall not walk on a virgin road.
第19話 父の影
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エレイン州にはそのための礎となってもらおうか。
「そんな…何を言っているのですか?そんなことできるわけが…」
「大義名分はすでにこちらにあります。あなたは有能なテクノクラートだ。合法に見える行動計画を策定してください。夏休みに入ったら、わたくしは軍を率いて州境を越え、盗賊を討伐します。そのために利用できる法的根拠をかき集めておきなさい」
メネラウスは愕然としている。私の気が狂ったのかと疑っているのだろう。
「お嬢様。落ち着いてください。それはただの蛮勇ですよ!いいですか。盗賊共は大した問題ではないのです。ヒヒイロカネの鉱毒もそう。アイガイオン家の領内経営に深刻なダメージを及ぼすようなものではないのです。無理におかしな行動をする必要はないのです」
メネラウスは官僚としてまっとうな行動を取っている。
上役の暴走を諫めることができる者は中々いない。
得難い人材だ。だからこそ味方にしないといけない。
「エヴェルトン・ネモレンシス・アイガイオンを超えたくないのですか?」
メネラウスの顔が引きつる。彼の地雷を私は思いきり踏み抜く。
「何をおっしゃっているのですか?」
「あなたはエヴェルトン・ネモレンシス・アイガイオンの庇護下にある。あなたはわたくしの父の後見がなければ家督を継げなかった。あなたはエヴェルトン・ネモレンシス・アイガイオンにすべてを与えられて、そしてすべてを奪われ続ける定めだ」
この男はチュートリアルバトルの時、ジョゼーファの副官として登場する。
一年後の大戦の前に私の父はあるイベントにてすでに他界している。
カルメンタはその時点で自由の身。
メネラウスはとくにアイガイオン家に義理立てする必要はないのだ。
だけどアイガイオン家がカンナギ・ルイカに滅ぼされるまで一応忠義を尽くすのだ。
サブイベントでカンナギに語るのだ。
メネラウスはエヴェルトン・アイガイオンを超えられなかったと。
メネラウスはエヴェルトン・アイガイオンという男にすべてを支配されている。
生殺与奪のすべてを私の父に握られている。
それは男にとっては耐えがたい屈辱だろう。
同時にメネラウスは妹の事を除いても、エヴェルトン・アイガイオンという男を尊敬しているのだ。
幼いころ両親を失い親族に財産と家を奪われる恐怖から助けてもらった恩。
才能を認められて帝王学を授けてもらい。
カドメイア州の官僚という栄誉ある仕事への任命。
エヴェルトン・アイガイオンはメネラウスにとって父の様な存在だった。
与えてもらったもの恩が大きすぎて、メネラウスはエヴェルトン・アイガイオンの呪縛に縛られ続ける。
サブイベントにおいてカンナギとの交流の中でそのトラウマは消えていくのだが…。
私はカウンセラーじゃない。
だからこの男のトラウマを利用することに抵抗なんてない。
私は心の傷を舐めてはやらない。
だが超えるための手助けくらいはしてやろうじゃないか。
「メネラウス・ボルネーユはエヴェルトン・アイガイオンを超えない限り幸せにはなれません。だからわたくしに協力なさい。わたくしはいずれ父からその実権を奪います」
「実権を奪う?御館様から?」
「ええ。財も地位も武力も権力もこのわたくしのものとします。あなたにはそれ等を采配できる地位を与えてあげます。わかるでしょう?超えられますよ。私たちの偉大なる父の背中をね」
カルメンタは原作には登場しない。
サブイベントでメネラウスの口からその趨勢を語られるだけだ。
察するにあまりうまくは行っていない。
難しいのだろう、兄妹とは言え、一度は他所の誰かに奪われて帰ってきても、きっとグシャグシャするのだろう。
守れなかった者と守られなかった者。
この両者の溝はあまりにも深いはずだ。
だけどメネラウスが父に勝っていたならどうだろう?
きっと二人の関係は原作よりも良好になるはずだ。
男の自信は女にもいい影響を与えるはずなのだ。
「お嬢様…私は…」
メネラウスは私の申し出に戸惑っている。
だけど反応は悪くない。
悩むと言うことは私の提案にはそれなりの魅力を感じているということなのだから。
「終業式の日。学校が終わったらそのままカドメイア州に帰ります。汽車のチケットを二枚取っておいてください。わかりましたね?」
私はメネラウスの返事を聞かず、そのまま遊戯室を出て寝室に向かったのだった。
「そんな…何を言っているのですか?そんなことできるわけが…」
「大義名分はすでにこちらにあります。あなたは有能なテクノクラートだ。合法に見える行動計画を策定してください。夏休みに入ったら、わたくしは軍を率いて州境を越え、盗賊を討伐します。そのために利用できる法的根拠をかき集めておきなさい」
メネラウスは愕然としている。私の気が狂ったのかと疑っているのだろう。
「お嬢様。落ち着いてください。それはただの蛮勇ですよ!いいですか。盗賊共は大した問題ではないのです。ヒヒイロカネの鉱毒もそう。アイガイオン家の領内経営に深刻なダメージを及ぼすようなものではないのです。無理におかしな行動をする必要はないのです」
メネラウスは官僚としてまっとうな行動を取っている。
上役の暴走を諫めることができる者は中々いない。
得難い人材だ。だからこそ味方にしないといけない。
「エヴェルトン・ネモレンシス・アイガイオンを超えたくないのですか?」
メネラウスの顔が引きつる。彼の地雷を私は思いきり踏み抜く。
「何をおっしゃっているのですか?」
「あなたはエヴェルトン・ネモレンシス・アイガイオンの庇護下にある。あなたはわたくしの父の後見がなければ家督を継げなかった。あなたはエヴェルトン・ネモレンシス・アイガイオンにすべてを与えられて、そしてすべてを奪われ続ける定めだ」
この男はチュートリアルバトルの時、ジョゼーファの副官として登場する。
一年後の大戦の前に私の父はあるイベントにてすでに他界している。
カルメンタはその時点で自由の身。
メネラウスはとくにアイガイオン家に義理立てする必要はないのだ。
だけどアイガイオン家がカンナギ・ルイカに滅ぼされるまで一応忠義を尽くすのだ。
サブイベントでカンナギに語るのだ。
メネラウスはエヴェルトン・アイガイオンを超えられなかったと。
メネラウスはエヴェルトン・アイガイオンという男にすべてを支配されている。
生殺与奪のすべてを私の父に握られている。
それは男にとっては耐えがたい屈辱だろう。
同時にメネラウスは妹の事を除いても、エヴェルトン・アイガイオンという男を尊敬しているのだ。
幼いころ両親を失い親族に財産と家を奪われる恐怖から助けてもらった恩。
才能を認められて帝王学を授けてもらい。
カドメイア州の官僚という栄誉ある仕事への任命。
エヴェルトン・アイガイオンはメネラウスにとって父の様な存在だった。
与えてもらったもの恩が大きすぎて、メネラウスはエヴェルトン・アイガイオンの呪縛に縛られ続ける。
サブイベントにおいてカンナギとの交流の中でそのトラウマは消えていくのだが…。
私はカウンセラーじゃない。
だからこの男のトラウマを利用することに抵抗なんてない。
私は心の傷を舐めてはやらない。
だが超えるための手助けくらいはしてやろうじゃないか。
「メネラウス・ボルネーユはエヴェルトン・アイガイオンを超えない限り幸せにはなれません。だからわたくしに協力なさい。わたくしはいずれ父からその実権を奪います」
「実権を奪う?御館様から?」
「ええ。財も地位も武力も権力もこのわたくしのものとします。あなたにはそれ等を采配できる地位を与えてあげます。わかるでしょう?超えられますよ。私たちの偉大なる父の背中をね」
カルメンタは原作には登場しない。
サブイベントでメネラウスの口からその趨勢を語られるだけだ。
察するにあまりうまくは行っていない。
難しいのだろう、兄妹とは言え、一度は他所の誰かに奪われて帰ってきても、きっとグシャグシャするのだろう。
守れなかった者と守られなかった者。
この両者の溝はあまりにも深いはずだ。
だけどメネラウスが父に勝っていたならどうだろう?
きっと二人の関係は原作よりも良好になるはずだ。
男の自信は女にもいい影響を与えるはずなのだ。
「お嬢様…私は…」
メネラウスは私の申し出に戸惑っている。
だけど反応は悪くない。
悩むと言うことは私の提案にはそれなりの魅力を感じているということなのだから。
「終業式の日。学校が終わったらそのままカドメイア州に帰ります。汽車のチケットを二枚取っておいてください。わかりましたね?」
私はメネラウスの返事を聞かず、そのまま遊戯室を出て寝室に向かったのだった。
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