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第一章 立志篇 Fräulein Warlord shall not walk on a virgin road.
第81.5話 尊敬
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エレイン州 エレイン湖沿岸 王家の離宮 王太子の私室
急ぎ王家の離宮に戻ってきた侍従たちは会談の内容を王太子フェンサリルに伝えた。
王太子は彼らの話を静かに聞いていた。
「彼らは用意周到に準備した上で今回の占領を行っています。間違いなく領土的野心に基づく行為であると断じてもいいでしょう。なのでこのままこの街にいるのは危険です。いつカドメイア州軍が殿下のお命を狙うかわかりません。すぐにご学友をお連れしてこの地より離れるべきです」
「おれにしっぽを巻いて逃げろと卿ら言うのか?」
王太子は不機嫌そうな声音でそう言った。
それに一瞬びくっと体を震わせる侍従たちだったが、進言を続ける。
「これは戦略的な撤退です。アイガイオン家は再び独立闘争を始めたのです!ここで王太子殿下を捕えれば、彼らの独立運動は成功…」
「それはありえない。おれをここで軍事的手段で捕えて人質とすれば、それを大義名分として帝国政府が独立運動を政治的につぶしにくるだろう。アイガイオン家は狂犬ではない。ここでおれに手を出すことのリスクはよくわかってるはずだ。だからジョゼーファが言う様におれたちの安全は保障されている。むしろおれたちがここで安全にバカンスを楽しんでいることも宣伝の材料にする気だろう。ここで逃げればおれの評判に傷がつく。女の指揮する軍から逃げたと人々に噂されれば、おれは玉座につくことは決してできなくなるだろうな」
フェンサリルは悔し気に唇を噛み締める。
すでに彼は詰みに持っていかれている。
「それにこの地の問題をおれは知らされていなかった。知っていれば対策もできたかも知れない。この情報をおれの耳に入れないようにしていたのは母上の仕業か?」
侍従は気まずげに頷く。フェンサリルはそれを見て溜息を吐く。
「おれはこの件においては最初から蚊帳の外だった。戦場以外ですでに敗北している。なのにこれ以上逃げるわけにはいかんよ。ん?戦場以外…盤面の外?」
ふとフェンサリルはカンナギ・ルイカとチェスした時のことを思い出した。
その時ジョゼーファがカンナギに何かを囁いていた。
うまく聞き取れなかったが、盤面の外という単語が聞こえたような気がした。
「この状況…あの時のチェスに似てる…?だがカンナギの勝ち方じゃない。あいつが負けた時の状況と同じ?予定調和からズレて奇襲を喰らう…。ああ、やっとあの時のイカサマのやり方がわかった。横にズラしていたのか。一つ卿たちに聞きたい。今回の事件の計画を首謀したのは誰だ?そういった話は出たか?」
「ジョゼーファ様はご自分の意志でやったと言っていました。ですがいくらなんでもそれはあり得ないでしょう。エヴェルトン・アイガイオンが後ろにいるに決まっています。失敗したら娘のせいにして責任逃れするために、やらせたのでしょう」
「…その予測は確かに合理的だな…。だが引っかかる…」
フェンサリルは目を瞑りジョゼーファについて考えてあることを思い出す。
「夏休みに入る少し前のことだ。ジョゼーファはディアスティマの頬を叩いた」
「たしかにそんなこともありましたね。ですがそんなことはご婦人によくあることでは?」
「他の女ならばそうかも知れない。だがジョゼーファがそうするのはおかしいんだ。そもそもディアスティマに対する態度がおかしい」
「お言葉ですがそれに関してはジョゼーファさまの行動も仕方がないと思いますよ。婚約者が自分以外の女を可愛がっていたら面白くはないはずです」
「それについてはその通りなのだが…。ジョゼーファがいじめなんかするはずないんだ。絶対にな」
侍従たちはその言葉に困惑して互いに顔を見合わせます。
「あいつは優しい。とても他人に優しい。おれはあいつよりも優しい女を知らない。産みの母よりも自分に優しくしてくれる女がこの世界にいるとは思わなかったよ。まあ最近はおれにトゲトゲしいがね」
「それは惚気ですか?」
侍従がある意味皮肉気にそうフェンサリルに問う。
だがその問いには答えず、フェンサリルは続ける。
「あいつはチェスが弱い。あいつと打ってもちっとも楽しくない。あいつは駒を手元に置いたままだ。こっちが攻めると駒を逃がしてしまう。駒を本物だと思って可愛がっている。いくつか駒を取るとすぐに機嫌を損ねる。悲しそうに眉を歪めるんだ。そして自分からキングの駒を前進させておれに獲らせてしまうんだ」
「それは強い弱い以前の問題なんじゃ?」
侍従の突っ込みは無視してフェンサリルは話を続ける。
「王家に仕える女官の一人がエルフの血を引いていることを隠して勤めていたことが問題になったことがある。王国法は亜人種の公職への登用を認めていない。遺憾ながら大陸辺境の諸国家ではごく一般的なことだ。だがジョゼーファはその女官を憐れんだ。彼女は周りに隠してその女官にムルキベル市の公務の仕事を斡旋した。だがそのことを誰にも誇ったりはしていない。黙ったままだ。なぜそんなことをしたのかと聞いた。ジョゼーファは言った。『人の悲しみに触れてしまったから。だから撫でてあげたかった』ただそう言った」
ファンサリルの声には不思議な尊敬のような色が混じっている。
「身分も人種も気にせずジョゼーファは人々に優しく接する。だからおかしい。ディアスティマへの態度は常軌を逸している。おれはかつて見たよ。恐ろしい光景を。あれは学園の入学式だ。ディアスティマが入学式の後、中庭で男たちに群がられていた。俺とジョゼーファはその横を通った。いやな光景だったよ。男たちは鼻息荒くディアスティマに迫り、女たちはそんな男たちを見てディアスティマを嫉妬で憎む。浅ましい光景だ」
「そういう殿下だってディアスティマ嬢を連れまわしてますよね?」
「くくく。そう言われると立つ瀬がない。だが彼らよりはまだましだと言わせてくれよ。おれには彼女の色香に夢中になっている自覚があるのだから。まあおれのことは棚にあげておこう。その時のジョゼーファだ。どんな顔をしていたと思う?」
「他の女性と同じでは?ディアスティマ嬢は魔性の女です。たまにいますよ、ああいう女は。自分の魅力をコントロールできないから、役にも立たない男ばかりが味方になって、周りの女と上手くやっていけないんです」
「だろうね。だがジョゼーファは違う。あいつはじっとディアスティマを見ていた。だがその目には嫉妬も怒りも何もなかった。ただ一言こう言った『女神を辱め、王子を弑し奉る時は今ぞ。金枝、折られるべし』と。あの時の瞳はいつもの温かさはどこにもなく、とてもとても似合わない冷たさしかなかった。かなしいものが、そこにはあった」
「殿下を殺したいってことですか?めっちゃくちゃ嫉妬してません?というか危険発言なんじゃ…?王家への反逆を示唆してません?それどころか女神様への信仰の否定?パンク過ぎる…」
「おれだってそう思って聞き返した。今のはどういう意味かとね。だがジョゼーファはそんなことを言った覚えがないと言った。嘘じゃなかったよ。ジョゼーファは女だから自分をよく見せるために嘘をつく。そういうつまらない嘘の匂いなら男のおれにだってわかるさ。だからこそだ。ジョゼーファは自分が言ったことを覚えてない。そしてその日からディアスティマへのいじめ、というか嫌がらせがはじまった。あいつは「王子に近づこうとするから警告してるだけ」そう言った。みんなはディアスティマとおれの距離が近づいたから苛めているんだと思ってる。だけどいじめが始まったその頃のおれはまだディアスティマと言葉さえ交わしていなかった」
「それ本当なんですか?ジョゼーファさまは殿下に関係なくディアスティマさまに嫌がらせを?」
「そうだ。だからこそおれはあのジョゼーファに執着される女に興味を持ってしまった。ディアのクラスを変えさせたのは保護のためだよ。おれのいるA組においておけばいじめはエスカレートしないという判断だった。実際おれの前ではいじめを抑制して大人しかったよ。いいや、今思えばH組からディアスティマを離したからだな。だからいじめを抑えた。王子から離すという目的を達成したからだったんだ。ジョゼーファにはその自覚はないようだがね」
「H組に王子はいないでしょ?何を言ってるんですか、殿下」
「ジョゼーファの言った『王子』とは何かのメタファーだ。この間の夜会でそれがやっとわかった。…あの日の騒ぎでやっとすべての違和感が腑に落ちた。ジョゼーファがいう『王子』も、ディアスティマが言う『王子』も決しておれのことではない。…それはあの男の…」
「あの男?」
「口が滑った。気にするな。おれも卿らに話して考えを整理できた。だから話はおしまいにしよう。どちらにせよ今のままではなにも状況は動かないだろうからな。この騒動を知った母上の動きも気になる。だからこれをあるところに持って行ってくれ」
そう言ってフェンサリルは手紙を侍従の一人に渡す。
それには王家の印が押してある封蝋が施されていた。
つまり公的な命令が入っているということである。
「あるところ?」
「王家の飛び地が海の方にあるのは知っているか?」
「ええ、海兵がいるところですよね?普段は海賊退治の拠点だとか」
「そうだ。そこの司令官に渡せ。いいか、絶対に母上には気取られるな。うまく行けば状況は動く」
「殿下は何をなさる気なのですか?」
その問いに対してフェンサリルはニヤリと少年の様に楽し気に笑う。
「ジョゼーファと同じさ。ひとつ賭けに出ようと思う。たとえこれで王位継承権を失っても構わない。…ジョゼーファ。思い知ればいい。優しすぎるお前に剣を握り続けることなどできないのだということを…。野蛮とは男の手の中にしかないのだということをな」
こうして会談は終わってフェンサリルは部屋を後にした。
口元にはどこか楽し気な笑みを浮かべて。
急ぎ王家の離宮に戻ってきた侍従たちは会談の内容を王太子フェンサリルに伝えた。
王太子は彼らの話を静かに聞いていた。
「彼らは用意周到に準備した上で今回の占領を行っています。間違いなく領土的野心に基づく行為であると断じてもいいでしょう。なのでこのままこの街にいるのは危険です。いつカドメイア州軍が殿下のお命を狙うかわかりません。すぐにご学友をお連れしてこの地より離れるべきです」
「おれにしっぽを巻いて逃げろと卿ら言うのか?」
王太子は不機嫌そうな声音でそう言った。
それに一瞬びくっと体を震わせる侍従たちだったが、進言を続ける。
「これは戦略的な撤退です。アイガイオン家は再び独立闘争を始めたのです!ここで王太子殿下を捕えれば、彼らの独立運動は成功…」
「それはありえない。おれをここで軍事的手段で捕えて人質とすれば、それを大義名分として帝国政府が独立運動を政治的につぶしにくるだろう。アイガイオン家は狂犬ではない。ここでおれに手を出すことのリスクはよくわかってるはずだ。だからジョゼーファが言う様におれたちの安全は保障されている。むしろおれたちがここで安全にバカンスを楽しんでいることも宣伝の材料にする気だろう。ここで逃げればおれの評判に傷がつく。女の指揮する軍から逃げたと人々に噂されれば、おれは玉座につくことは決してできなくなるだろうな」
フェンサリルは悔し気に唇を噛み締める。
すでに彼は詰みに持っていかれている。
「それにこの地の問題をおれは知らされていなかった。知っていれば対策もできたかも知れない。この情報をおれの耳に入れないようにしていたのは母上の仕業か?」
侍従は気まずげに頷く。フェンサリルはそれを見て溜息を吐く。
「おれはこの件においては最初から蚊帳の外だった。戦場以外ですでに敗北している。なのにこれ以上逃げるわけにはいかんよ。ん?戦場以外…盤面の外?」
ふとフェンサリルはカンナギ・ルイカとチェスした時のことを思い出した。
その時ジョゼーファがカンナギに何かを囁いていた。
うまく聞き取れなかったが、盤面の外という単語が聞こえたような気がした。
「この状況…あの時のチェスに似てる…?だがカンナギの勝ち方じゃない。あいつが負けた時の状況と同じ?予定調和からズレて奇襲を喰らう…。ああ、やっとあの時のイカサマのやり方がわかった。横にズラしていたのか。一つ卿たちに聞きたい。今回の事件の計画を首謀したのは誰だ?そういった話は出たか?」
「ジョゼーファ様はご自分の意志でやったと言っていました。ですがいくらなんでもそれはあり得ないでしょう。エヴェルトン・アイガイオンが後ろにいるに決まっています。失敗したら娘のせいにして責任逃れするために、やらせたのでしょう」
「…その予測は確かに合理的だな…。だが引っかかる…」
フェンサリルは目を瞑りジョゼーファについて考えてあることを思い出す。
「夏休みに入る少し前のことだ。ジョゼーファはディアスティマの頬を叩いた」
「たしかにそんなこともありましたね。ですがそんなことはご婦人によくあることでは?」
「他の女ならばそうかも知れない。だがジョゼーファがそうするのはおかしいんだ。そもそもディアスティマに対する態度がおかしい」
「お言葉ですがそれに関してはジョゼーファさまの行動も仕方がないと思いますよ。婚約者が自分以外の女を可愛がっていたら面白くはないはずです」
「それについてはその通りなのだが…。ジョゼーファがいじめなんかするはずないんだ。絶対にな」
侍従たちはその言葉に困惑して互いに顔を見合わせます。
「あいつは優しい。とても他人に優しい。おれはあいつよりも優しい女を知らない。産みの母よりも自分に優しくしてくれる女がこの世界にいるとは思わなかったよ。まあ最近はおれにトゲトゲしいがね」
「それは惚気ですか?」
侍従がある意味皮肉気にそうフェンサリルに問う。
だがその問いには答えず、フェンサリルは続ける。
「あいつはチェスが弱い。あいつと打ってもちっとも楽しくない。あいつは駒を手元に置いたままだ。こっちが攻めると駒を逃がしてしまう。駒を本物だと思って可愛がっている。いくつか駒を取るとすぐに機嫌を損ねる。悲しそうに眉を歪めるんだ。そして自分からキングの駒を前進させておれに獲らせてしまうんだ」
「それは強い弱い以前の問題なんじゃ?」
侍従の突っ込みは無視してフェンサリルは話を続ける。
「王家に仕える女官の一人がエルフの血を引いていることを隠して勤めていたことが問題になったことがある。王国法は亜人種の公職への登用を認めていない。遺憾ながら大陸辺境の諸国家ではごく一般的なことだ。だがジョゼーファはその女官を憐れんだ。彼女は周りに隠してその女官にムルキベル市の公務の仕事を斡旋した。だがそのことを誰にも誇ったりはしていない。黙ったままだ。なぜそんなことをしたのかと聞いた。ジョゼーファは言った。『人の悲しみに触れてしまったから。だから撫でてあげたかった』ただそう言った」
ファンサリルの声には不思議な尊敬のような色が混じっている。
「身分も人種も気にせずジョゼーファは人々に優しく接する。だからおかしい。ディアスティマへの態度は常軌を逸している。おれはかつて見たよ。恐ろしい光景を。あれは学園の入学式だ。ディアスティマが入学式の後、中庭で男たちに群がられていた。俺とジョゼーファはその横を通った。いやな光景だったよ。男たちは鼻息荒くディアスティマに迫り、女たちはそんな男たちを見てディアスティマを嫉妬で憎む。浅ましい光景だ」
「そういう殿下だってディアスティマ嬢を連れまわしてますよね?」
「くくく。そう言われると立つ瀬がない。だが彼らよりはまだましだと言わせてくれよ。おれには彼女の色香に夢中になっている自覚があるのだから。まあおれのことは棚にあげておこう。その時のジョゼーファだ。どんな顔をしていたと思う?」
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「だろうね。だがジョゼーファは違う。あいつはじっとディアスティマを見ていた。だがその目には嫉妬も怒りも何もなかった。ただ一言こう言った『女神を辱め、王子を弑し奉る時は今ぞ。金枝、折られるべし』と。あの時の瞳はいつもの温かさはどこにもなく、とてもとても似合わない冷たさしかなかった。かなしいものが、そこにはあった」
「殿下を殺したいってことですか?めっちゃくちゃ嫉妬してません?というか危険発言なんじゃ…?王家への反逆を示唆してません?それどころか女神様への信仰の否定?パンク過ぎる…」
「おれだってそう思って聞き返した。今のはどういう意味かとね。だがジョゼーファはそんなことを言った覚えがないと言った。嘘じゃなかったよ。ジョゼーファは女だから自分をよく見せるために嘘をつく。そういうつまらない嘘の匂いなら男のおれにだってわかるさ。だからこそだ。ジョゼーファは自分が言ったことを覚えてない。そしてその日からディアスティマへのいじめ、というか嫌がらせがはじまった。あいつは「王子に近づこうとするから警告してるだけ」そう言った。みんなはディアスティマとおれの距離が近づいたから苛めているんだと思ってる。だけどいじめが始まったその頃のおれはまだディアスティマと言葉さえ交わしていなかった」
「それ本当なんですか?ジョゼーファさまは殿下に関係なくディアスティマさまに嫌がらせを?」
「そうだ。だからこそおれはあのジョゼーファに執着される女に興味を持ってしまった。ディアのクラスを変えさせたのは保護のためだよ。おれのいるA組においておけばいじめはエスカレートしないという判断だった。実際おれの前ではいじめを抑制して大人しかったよ。いいや、今思えばH組からディアスティマを離したからだな。だからいじめを抑えた。王子から離すという目的を達成したからだったんだ。ジョゼーファにはその自覚はないようだがね」
「H組に王子はいないでしょ?何を言ってるんですか、殿下」
「ジョゼーファの言った『王子』とは何かのメタファーだ。この間の夜会でそれがやっとわかった。…あの日の騒ぎでやっとすべての違和感が腑に落ちた。ジョゼーファがいう『王子』も、ディアスティマが言う『王子』も決しておれのことではない。…それはあの男の…」
「あの男?」
「口が滑った。気にするな。おれも卿らに話して考えを整理できた。だから話はおしまいにしよう。どちらにせよ今のままではなにも状況は動かないだろうからな。この騒動を知った母上の動きも気になる。だからこれをあるところに持って行ってくれ」
そう言ってフェンサリルは手紙を侍従の一人に渡す。
それには王家の印が押してある封蝋が施されていた。
つまり公的な命令が入っているということである。
「あるところ?」
「王家の飛び地が海の方にあるのは知っているか?」
「ええ、海兵がいるところですよね?普段は海賊退治の拠点だとか」
「そうだ。そこの司令官に渡せ。いいか、絶対に母上には気取られるな。うまく行けば状況は動く」
「殿下は何をなさる気なのですか?」
その問いに対してフェンサリルはニヤリと少年の様に楽し気に笑う。
「ジョゼーファと同じさ。ひとつ賭けに出ようと思う。たとえこれで王位継承権を失っても構わない。…ジョゼーファ。思い知ればいい。優しすぎるお前に剣を握り続けることなどできないのだということを…。野蛮とは男の手の中にしかないのだということをな」
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