曲がり角は異世界の始まり

ころ

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空間座標

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打ち返すことも弾くことも出来ないので
残された道は相殺。
頼むペン、ボールに打ち勝て!!

こちらに向かってくるボールに向けてペンを投げる。しまった!ちょっと焦って手に魔力があまり集まらなかった!

「さっき6本もペンを飛ばしてるからね。そろそろ魔力もキツくなって来るはずっス。」

魔力量の不足のためか、私が投げたペンに先程までの速度はない。放ったペンがボールに当たるも、弾かれてしまった!
ペンとの衝突により幾らか減速はしたものの、
ボールは変わらずこちらに向かってくる。

「ええい、ままよ!」
とりあえず顔面キャッチは避けたいので
手を顔の前に出して顔面ガード。顔は乙女の命やぞ。こうなったら気合いでボールをキャッチしてやる!

「うぇえ?!!避けるとかあるでしょ普通?!!」

ルートさんは驚いているがもう知らない。腹は決めた。来いよボール!!
そして顔の前でボールをキャッチ…と思いきや、急にボールの軌道が上に変わり、上空に飛んで行き、やがて落下してきて床に転がった。

「「……。」」

2人して転がったボールを見る。

「…魔球ですね。凄いですね方向転換するなんて。ピッチャーイカしてるぅ。」
「…何言ってるんスか。俺の『変換方式』はそんなんじゃありません。7点減点。」
「ジョークじゃないですか!採点厳しいなぁ。」

なんて冗談を言っている場合ではない。
ルートさんのせいでは無いとしたら答えは一択だ。…私の『変換方式』ってなんなんだろう。

「うーーーん。」
「そんなに顔見つめられても私だって分からないですよ。顔穴だらけにしたいんですか?キャッ照れちゃう。」
「狙った方向にブレずにものを投げられる…かつ力を与えられた物体の方向性を変えた…?」

懇親のギャグをスルーされた虚しさよ。良いけど。ルートさんは真面目にブツブツと考えているようだ。

私はそこまで賢くないのでシンプルに考えることにした。
恐らく使ってみた感覚としては『物に方向性を与える』のが私の『変換方式』だと思う。
そして発動条件としては『動きがあるもの』に対してのみ。目の前にある静止したボールに『こっちに来い』と念じてみても動かないから。うむ。いい線行ってそうだけどなぁ。


「さて、お互いの『方式』がチラッと分かったとこで答え合わせといこうか。じゃあ先に俺の『変換方式』は何だったでしょう?」

「見た感じは『瞬間移動』だと思ったんですけどね。…でも移動した後に魔力を使った痕跡みたいなものが残ってました。だから何処でも移動出来る訳じゃないのかなって。あれを指標にしてる感じですかね。」

答えが不味かったんだろうか。
ルートさんが5年漬けた梅干しみたいな顔をしている。よく漬かってんなぁ。

「んっっとに!シノ、たまには間違えた方が可愛げがあるっスよ!」
「おっと、正解ですか?やったぁ。」
「大体ね。俺は『座標』を打った場所に飛べるんス。ここもね、シノを呼びに行く前に予め寄って『座標』を仕込んどいたわけ。…だからシノを呼ぶのが遅れて隊長は不機嫌だったわけだけど。」
「とばっちり食いましたよ全く。それにしても万能じゃないですか!ほぼ瞬間移動だし。良いなぁカッコイイ。」
「…そうでもねーんだよ。」

そこまで和やかに話してくれていたルートさんの顔が突然曇ってしまった。
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