曲がり角は異世界の始まり

ころ

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確認は3回しろ

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「まず飛ぶ距離の限界があるんス。座標から座標への直線距離が長くなるほど、必要な魔力が変わってくる。込めた魔力が足りなかったら座標とは違う点に飛ばされちまう。」

「魔力の残量の把握と魔力使用量の見積もり…中々頭使いますね。」

「それに座標の正確な位置を把握しないといけない。直線距離を算出するために座標から座標への縦、横、高さの距離の目算が必要っス。」

「GPSとか無いですもんね…。天空に目とかあればもっと楽に距離出せそうなのに。」

「ふはは!面白い発想ッスね!!俯瞰で見れたらもっと遠くまで行けるかもしれないね。魔力量もえげつないだろうけど。
…まぁそんな夢物語無いんで。俺には小間使いぐらいがお似合いっスよ。」

なんだろう…唐突にネガティブになるなぁ。
使いようによっては凄く便利な異能だし、ルートさん使い方のセンスも良さそうだから、組み合わせ次第だと思うんだけど。

…悲しいかな、私の疲れた脳では画期的な使い方を提案してあげられない。せめて自分の異能を完全に把握してからにしないと…。

「…ま、言っても仕方ないことっス。さて、反対にシノの『変換方式』は『物体に方向を与える力』かな?命中率半端ねぇし。『能力強化』だとしたら多少向きがズレるはず。」

「私も使った実感としてそうだと思いました。最後のボールの軌道が変わったのも上方向に向きを与えたから、ですかね。」

「よっし!多少『診る』目が育ってきたってことッスね!!じゃあ勝負は俺の勝ちってことで♡」

とてもにこやかにルートさんは言い切った。
…なんですと??
さっきまでの鬱っぷりはどこ行った?励まさなきゃとか考えてたのに!

「え、私だってルートさんの『変換方式』当てましたけど?なんでこっちだけ負けなんですか!」

「あれれ~?シノ、条件は必ず確認しなきゃダメッスよ。俺は『シノは俺に1本でも当てられたら勝ち』って言ったはずッス。ざぁんねん!」

ぐぁぁあああ!そういや言ってた!!
『変換方式』しか考えてなかった!!! 
じいちゃんも『何か約束する時は3回は確認しろ』って言ってたのに!ごめんじいちゃん!
あぁ、もっと10本ぐらい投げときゃ良かった。1本ぐらいは当たったかもしれないのに…

「とりあえず数投げときゃ良かったって思ってない?言っとくけど魔力も無尽蔵じゃ無いんスから、そんなんじゃすぐ魔力切れするぜ。次の課題はそこっスかねー。」
「すぐバレるじゃないですか…心を読む変換方式もあるんですか?全く。
…あ!そう言えばルートさんの『変換方式』当てたら隊長の異能のヒントくれるって話でしたよね!そっちはせめて貰わないと今日寝れません!」
「おやぁ結構シノって負けず嫌いッスね。…その根性嫌いじゃないけど。隊長はね知っての通り『赤』は炎持ちで『黒』は『診る』ことに特化した能力ッス。つまり分析のスペシャリスト。どういう『素因』をそいつが持ってるのか『分解』して見えるんス。」

「『素因』ってのはどういうものですか?」

「俺も正確には教えて貰ってはいないけど、そいつを『構成する要因』って感じかな?『診た』対象物は分解された状態で見えるらしいッスよ。」

…どんな世界だそれは。うーん、人間が骨や筋肉が透けて見える感じのイメージなんだろうか。

「詳しくは隊長をしっかり『診て』、話してみるんスね。…弱みとか出て来たら俺にも教えて!期待してるッス!」

最後は滅茶苦茶強い口調で言われた。
ルートさん本当に苦労しているなぁ(遠い目)
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