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38.本当の気持ち①
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アレクシスは私を抱きかかえながら堂々とした足取りで進んでいく。
しかし私は周囲の視線が気になり、そわそわしていた。
彼が身につけている真っ白な騎士服には、金糸で作られた飾りがいくつも施されている。
王宮騎士だけあって、戦闘服なのに優雅さを感じさせる作りになっているようだ。
それだけではない。
アレクシスが着ているからこそ、存在感があり、様になって見えるのだろう。
(騎士服を着ている、アレクシス様の姿を見るのって初めてかも。すごく似合っているわ。これで騎士をやめてしまうなんて少し勿体ない気がする……、なんて言えないけど)
「リリア、怒ってる?」
「え?」
私がそんなことを考えていると、アレクシスは歩きながら問いかけてきた。
私は彼の方へ顔を向けて「何を?」と言いたげに不思議そうな瞳で見つめた。
「人前で結構激しく口付けてしまったからね」
「……っ」
先程の出来事が頭に過ると、カーッと顔の奥が熱くなっていくのを感じる。
アレクシスはそんな私の反応を見て、楽しそうに微笑んでいた。
(お願いだから、今はその話はしないで。折角忘れていたのにっ!)
「やっぱり君は可愛いな。顔がすぐに真っ赤になる。だけど、その素顔は他の人間には見せたくないな」
「……あ、眼鏡」
アレクシスの発言を聞いて、今自分が眼鏡をしていないことに気付いた。
次第に私は気まずそうな顔へと変わっていく。
(あんなことがあったから、眼鏡のことなんてすっかり忘れてたわ。怒ってる……かな)
「そんなに困った顔をしないで。今回は仕方がないことだし、リリアを責めるつもりはないよ。責めるのなら、そこまで考えが回らなかった己自身に、かな」
「そんなっ。アレクシス様は私の事を助けてくれました。それから、あのっ……、任務お疲れ様でした」
「ありがとう。リリアに言われるとすごく嬉しいよ」
アレクシスは柔らかく微笑むと、私の額にそっと口付けた。
次第に私の顔はじわじわと熱くなっていく。
久しぶりだからこんなにも照れてしまうのだろうか。
ドキドキと鼓動が高鳴っていくが、これは病の所為ではなさそうだ。
(アレクシス様、ここは廊下ですっ!!)
「本当にリリアは素直に反応するね。その顔を見ていると、戻って来たのだと実感出来るな。だけど、そんな可愛い顔はこれからは私の前だけにしてね」
「私、アレクシス様に言われるほど可愛くないと思います。さっきから可愛いって言い過ぎだからっ。それに、どうしてそこまで……」
アレクシスの言い方はいつも極端過ぎる。
分かっていても毎回まともに受け取って、照れてしまう私もどうかとは思っている。
そもそも私はアレクシスにとって何なのだろう。
都合の良いだけの相手だとは思いたくはない。
王太子妃にはしたくない、だけど側に置いておきたい。
そんな曖昧な関係を続けているが、アレクシスの本心は未だに良く分からない。
彼ならば感情を偽ることだって容易なのだろう。
だけど、私は『もしかしたら……』と期待したくて、真実から目を背けようとしているだけなのかもしれない。
この曖昧な関係のままでも良いから、アレクシスと繋がっていたい。
そう思っている自分も確かに存在している。
「リリアは強情だね。それならば、君が認めるまで何度だって『可愛い』って言い続けようかな」
「……っ!」
「ふふっ、からかいすぎたかな。ごめんね。久しぶりのリリアとの会話が楽しくて、ついね」
アレクシスは悪戯っぽい顔で笑っていた。
私も「ははっ」と続けて笑ってみせたが、内心少し残念がっていた。
(なんだ……。からかっただけか)
本気で言っているのか、冗談なのか分からない事が多すぎて、正直困ってしまう。
自分が可愛いとは思っていないけど、アレクシスに『可愛い』と言われるのは恥ずかしいけど嬉しくもあった。
他の誰かにお世辞を言われたら、軽く受け流して何も残るものはないが、アレクシスに言われるのは特別に感じていた。
そんな風に考えてしまう私は、既に深みに嵌っているのかもしれない。
彼の本当の気持ちを知りたい。
だけど聞くのが怖い、というのが今の私の素直な感情なんだと思う。
「どうしてか、だったね。そんなの決まっている。好きな女性を独占したいと思うのは当然のことだとは思わない?」
当たり前の様にさらりと返してくるアレクシスに対して、私は怪訝そうな顔を向けてしまう。
本当だったら嬉しい。
だけどそれが本心とは限らない。
何故なら、今の彼は一切表情を変えていないから。
私のように少しでも顔に出してくれれば、少しはアレクシスの気持ちを知ることが出来るかもしれないのに。
「信じられないって顔をしているね」
「……はい。アレクシス様って誤魔化すのも上手いし」
私が戸惑ったように答えると、アレクシスは一瞬驚いた顔を見せて困ったように笑っていた。
「参ったな。リリアに対しては、いつだって本気のつもりなんだけど。誤魔化しているつもりはないよ。んー、言い方が駄目だったのか」
アレクシスは「うーん」と唸るような声を上げて呟いていた。
私の前ではいつも優しくて気さくな態度を見せてくれる。
だけど彼と一緒に過ごすようになったのは最近のことだし、私が知っているのはほんの一面に過ぎないのだろう。
騙されているとは思っていないけど、私の知らないアレクシスが存在しているのも恐らく事実なのだと思う。
「アレクシス様……」
「どうしたの? 認める気になってくれた?」
「ち、違います。あのっ、帰ったらお話があります」
「うん、わかったよ。だけど、その前にリリアの体に溜まっている熱を全て出しきってからにしようか。もう苦しいのは嫌だよね」
「そんなこと出来るんですか?」
「可能だよ。私なら、ね。これからはずっとリリアの傍にいる。もうあんな目には二度と遭わせたりしないし、一人にはしないから安心して」
「はい……」
私はやっぱり軽い人間なのかも知れない。
こんなことを言われたら、簡単に信じてしまいそうになる。
惚れた弱みでもあるのだとは思うけど、やっぱり彼の傍にいたいと思ってしまう。
少し前までは自分から離れようと思っていたくせに、それは全て私の強がりだった。
いざ離れてみると思った以上に寂しくて、無意識に彼のことばかり考えていたような気がする。
私ではない誰かの傍にいて欲しくない。
私にしたようなことを、別の誰かにしないで欲しい。
そんな嫉妬に心が蝕まれ、醜くなっていく自分自身に恐怖を感じてしまう時もある。
(だけど、どうしよう……。国王陛下に言われた話をして、また拒絶されたら……)
アレクシスは私を王太子妃にすることを望んでいない。
それは以前はっきりと言われたことでもあり、この短期間で考えが変わるとは到底思えない。
国のためを考えれば、絶対にアレクシスを廃太子にさせるわけにはいかない。
だけど、アレクシスがこのまま王太子の地位に居続けるのであれば、近い将来必ず婚約者捜しは行われることになるだろう。
選ばれるのは教会に認められたアリスか、高爵位の家柄の令嬢なのか、あるいは隣国の王女かもしれない。
きっと立候補してくる令嬢は数多くいるはずだ。
陛下が言うことが本当で、アレクシスが私との婚姻を本当に望んでいるのだとしたら。
それは、私にとってはとても喜ばしい事。
大好きな人といつまでも一緒にいられる権利を貰えるのだから、嬉しくて当然だ。
だけど、私が彼の傍にいたいという理由だけで、決めてしまって良いのだろうか。
ラルスがもう少しまともな人間だったら……、と悔やんでしまう。
そして、大きな決断を私に投げてきた陛下のことを恨んだ。
しかし私は周囲の視線が気になり、そわそわしていた。
彼が身につけている真っ白な騎士服には、金糸で作られた飾りがいくつも施されている。
王宮騎士だけあって、戦闘服なのに優雅さを感じさせる作りになっているようだ。
それだけではない。
アレクシスが着ているからこそ、存在感があり、様になって見えるのだろう。
(騎士服を着ている、アレクシス様の姿を見るのって初めてかも。すごく似合っているわ。これで騎士をやめてしまうなんて少し勿体ない気がする……、なんて言えないけど)
「リリア、怒ってる?」
「え?」
私がそんなことを考えていると、アレクシスは歩きながら問いかけてきた。
私は彼の方へ顔を向けて「何を?」と言いたげに不思議そうな瞳で見つめた。
「人前で結構激しく口付けてしまったからね」
「……っ」
先程の出来事が頭に過ると、カーッと顔の奥が熱くなっていくのを感じる。
アレクシスはそんな私の反応を見て、楽しそうに微笑んでいた。
(お願いだから、今はその話はしないで。折角忘れていたのにっ!)
「やっぱり君は可愛いな。顔がすぐに真っ赤になる。だけど、その素顔は他の人間には見せたくないな」
「……あ、眼鏡」
アレクシスの発言を聞いて、今自分が眼鏡をしていないことに気付いた。
次第に私は気まずそうな顔へと変わっていく。
(あんなことがあったから、眼鏡のことなんてすっかり忘れてたわ。怒ってる……かな)
「そんなに困った顔をしないで。今回は仕方がないことだし、リリアを責めるつもりはないよ。責めるのなら、そこまで考えが回らなかった己自身に、かな」
「そんなっ。アレクシス様は私の事を助けてくれました。それから、あのっ……、任務お疲れ様でした」
「ありがとう。リリアに言われるとすごく嬉しいよ」
アレクシスは柔らかく微笑むと、私の額にそっと口付けた。
次第に私の顔はじわじわと熱くなっていく。
久しぶりだからこんなにも照れてしまうのだろうか。
ドキドキと鼓動が高鳴っていくが、これは病の所為ではなさそうだ。
(アレクシス様、ここは廊下ですっ!!)
「本当にリリアは素直に反応するね。その顔を見ていると、戻って来たのだと実感出来るな。だけど、そんな可愛い顔はこれからは私の前だけにしてね」
「私、アレクシス様に言われるほど可愛くないと思います。さっきから可愛いって言い過ぎだからっ。それに、どうしてそこまで……」
アレクシスの言い方はいつも極端過ぎる。
分かっていても毎回まともに受け取って、照れてしまう私もどうかとは思っている。
そもそも私はアレクシスにとって何なのだろう。
都合の良いだけの相手だとは思いたくはない。
王太子妃にはしたくない、だけど側に置いておきたい。
そんな曖昧な関係を続けているが、アレクシスの本心は未だに良く分からない。
彼ならば感情を偽ることだって容易なのだろう。
だけど、私は『もしかしたら……』と期待したくて、真実から目を背けようとしているだけなのかもしれない。
この曖昧な関係のままでも良いから、アレクシスと繋がっていたい。
そう思っている自分も確かに存在している。
「リリアは強情だね。それならば、君が認めるまで何度だって『可愛い』って言い続けようかな」
「……っ!」
「ふふっ、からかいすぎたかな。ごめんね。久しぶりのリリアとの会話が楽しくて、ついね」
アレクシスは悪戯っぽい顔で笑っていた。
私も「ははっ」と続けて笑ってみせたが、内心少し残念がっていた。
(なんだ……。からかっただけか)
本気で言っているのか、冗談なのか分からない事が多すぎて、正直困ってしまう。
自分が可愛いとは思っていないけど、アレクシスに『可愛い』と言われるのは恥ずかしいけど嬉しくもあった。
他の誰かにお世辞を言われたら、軽く受け流して何も残るものはないが、アレクシスに言われるのは特別に感じていた。
そんな風に考えてしまう私は、既に深みに嵌っているのかもしれない。
彼の本当の気持ちを知りたい。
だけど聞くのが怖い、というのが今の私の素直な感情なんだと思う。
「どうしてか、だったね。そんなの決まっている。好きな女性を独占したいと思うのは当然のことだとは思わない?」
当たり前の様にさらりと返してくるアレクシスに対して、私は怪訝そうな顔を向けてしまう。
本当だったら嬉しい。
だけどそれが本心とは限らない。
何故なら、今の彼は一切表情を変えていないから。
私のように少しでも顔に出してくれれば、少しはアレクシスの気持ちを知ることが出来るかもしれないのに。
「信じられないって顔をしているね」
「……はい。アレクシス様って誤魔化すのも上手いし」
私が戸惑ったように答えると、アレクシスは一瞬驚いた顔を見せて困ったように笑っていた。
「参ったな。リリアに対しては、いつだって本気のつもりなんだけど。誤魔化しているつもりはないよ。んー、言い方が駄目だったのか」
アレクシスは「うーん」と唸るような声を上げて呟いていた。
私の前ではいつも優しくて気さくな態度を見せてくれる。
だけど彼と一緒に過ごすようになったのは最近のことだし、私が知っているのはほんの一面に過ぎないのだろう。
騙されているとは思っていないけど、私の知らないアレクシスが存在しているのも恐らく事実なのだと思う。
「アレクシス様……」
「どうしたの? 認める気になってくれた?」
「ち、違います。あのっ、帰ったらお話があります」
「うん、わかったよ。だけど、その前にリリアの体に溜まっている熱を全て出しきってからにしようか。もう苦しいのは嫌だよね」
「そんなこと出来るんですか?」
「可能だよ。私なら、ね。これからはずっとリリアの傍にいる。もうあんな目には二度と遭わせたりしないし、一人にはしないから安心して」
「はい……」
私はやっぱり軽い人間なのかも知れない。
こんなことを言われたら、簡単に信じてしまいそうになる。
惚れた弱みでもあるのだとは思うけど、やっぱり彼の傍にいたいと思ってしまう。
少し前までは自分から離れようと思っていたくせに、それは全て私の強がりだった。
いざ離れてみると思った以上に寂しくて、無意識に彼のことばかり考えていたような気がする。
私ではない誰かの傍にいて欲しくない。
私にしたようなことを、別の誰かにしないで欲しい。
そんな嫉妬に心が蝕まれ、醜くなっていく自分自身に恐怖を感じてしまう時もある。
(だけど、どうしよう……。国王陛下に言われた話をして、また拒絶されたら……)
アレクシスは私を王太子妃にすることを望んでいない。
それは以前はっきりと言われたことでもあり、この短期間で考えが変わるとは到底思えない。
国のためを考えれば、絶対にアレクシスを廃太子にさせるわけにはいかない。
だけど、アレクシスがこのまま王太子の地位に居続けるのであれば、近い将来必ず婚約者捜しは行われることになるだろう。
選ばれるのは教会に認められたアリスか、高爵位の家柄の令嬢なのか、あるいは隣国の王女かもしれない。
きっと立候補してくる令嬢は数多くいるはずだ。
陛下が言うことが本当で、アレクシスが私との婚姻を本当に望んでいるのだとしたら。
それは、私にとってはとても喜ばしい事。
大好きな人といつまでも一緒にいられる権利を貰えるのだから、嬉しくて当然だ。
だけど、私が彼の傍にいたいという理由だけで、決めてしまって良いのだろうか。
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