【本編完結】 婚約破棄された令嬢は自由に生きたい!(R18)

Rila

文字の大きさ
54 / 87

54.運命の出会い②-sideアレクシス-

しおりを挟む
 彼女はそれから毎日王宮に登城してきて、私はその度にラルスと偽り彼女に会った。
 リリアが王宮を訪れたら、すぐに私の元に連れてくるようにと従者に伝えておいた。
 そんな手回しをしていたこともあり、何も知らない彼女は私に会いに何度も王宮にやってきた。

 もうすぐここで、お茶会という名の弟の婚約者選考会が開かれる。
 彼女は存在感が薄いから、自分の名前を覚えさせて少しでも有利に働くように、父親からそう命じられて仕方なく来ていると話していた。
 そして私に「迷惑ですよね、ごめんなさい」と何度も謝ってきた。

 しかし、迷惑だと感じたことは一度もなかった。
 それは当然だろう。
 私はラルスと偽って、自らの意思で彼女に会っているのだから。
 それにリリアと過ごす時間は、どんなことよりも楽しかった。

 その話を聞いた時、親近感のようなものを覚えた。
 彼女は私と同じように周りに振り回されて、自分の意思を殺して日々を過ごしているのだと知った。
 だけど私と違うところもあった。

 私よりも幼い彼女は、既に人生を諦めていた。
 自分は父親の道具として生きていくしかないのだと、分かっていてそれを受け入れようとしていたのだ。
 そして、そんな話をする彼女は笑っていた。

 もしラルスの婚約者になれたら、少しは役に立つことが出来て褒めて貰えるのでは無いかと嬉しそうな顔で語っていた。
 自分を利用しようとしている人間を、何故喜ばせたいと思うのか。
 私にはそれがどうしても理解出来なかった。

 そして彼女は言った。

「こんな風に話を聞いてくれる人と結婚出来たら、私も少しは幸せになれるのかな」と。 

 だけど、彼女は自分が選ばれないことは分かっているようだった。
 歴代の婚姻を辿れば簡単に分かる事だ。
 王家と深く繋がりのある家の令嬢が選ばれる。
 それはもう何百年も前から変わっていない。

 そこまで分かっていて来るなんて、彼女は相当の馬鹿なのか、それとも――。

 だけど、その話を聞いて私の心は揺さぶられた。
 彼女が幸せになったら、利用していた人間はどんな顔をするのだろうか。
 悔しがるのだろうか、それとも驚いて言葉を失うのか……。
 それが無性に見てみたくなった。
 今まで言われたことに従っていた人形が、ある時突然立場を逆転したら。

 恐らく彼女も私と同じで馬鹿では無く、賢い人間なのだろう。
 先のことを頭で考えて、一番良い選択を導いて行動している。
 
(面白い……)

 私は興奮していた。
 こんな感覚を持ったのは、恐らくこれが初めてだ。
 そして同時に、彼女のことが欲しいと強く思った。
 この時はまだ、彼女に対して恋愛感情を抱いたわけではなかったが、惹かれていたのは間違いないだろう。

「リリア、私は必ず君を選ぶよ」

 気付いたらそんな台詞を伝えていた。
 彼女は目を丸くさせて、驚いた顔で私のことを見つめていた。

 その後、彼女とラルスの婚約が決まったのは本当に偶然だった。
 私は弟の婚約を後押ししたつもりは無く、単に爵位の高い家柄の令嬢が集まらなかったという理由だけで決まった。
 有力貴族の令嬢は、私との婚約を狙い理由を付けて不参加したようだ。
 第一王子である私は王位継承権第一位であるため、王太子になり、いずれはこの国の王となる。
 魔力のこともあるので、覆ることはないだろうと誰もが思っていたに違いない。 

 彼女が弟の婚約者に決まってしまったので、何か策を取らなければならなくなった。
 気に入った彼女を、みすみす手放すことは絶対にしない。
 しかし幸いなことに、ラルスはリリアのことをあまり気に入っていない様子だった。
 ラルスは明るくていつも中心にいるような令嬢が好みのようだ。
 これは私にとっては好都合と言える。

 お茶会に参加した時点で、私がラルスだと嘘を付いていたことはバレたはずだ。 
 あの場に現れたのが全くの別人だと知った時、彼女は相当に驚いたはずだ。
 もしかしたら、私のことを嫌いになってしまったかもしれない。
 そう思うと少し不安に感じてしまう。

 こんな風に誰かに対して不安を抱くことも初めてだった。
 初めての感情を持つ時は、いつも彼女絡みだ。
 だけど、それは不思議と不快ではない。
 寧ろ、嬉しく感じてしまう。

 この時にはもうすでに、リリアに心を奪われていたのかもしれない。
 どんな手を使ってでも、彼女を必ず手に入れる。
 そう強く心に誓っていた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

処理中です...