森の中で勇者を目覚めさせたら、一目惚れされました!?【R-18】

Rila

文字の大きさ
7 / 41

7.パーティー結成

しおりを挟む
「セラ、お前はこんな場所で何をしていたんだ?」
「えっと、この森を向けてラーズに向かおうとしていました。私冒険者をしているので、各地を回ってみようかなって思っていて」

 突然名前を呼ばれて、まだ慣れていないこともありドキッとしてしまう。
 だけどその後はなるべく動揺を見せない口調で話を続けた。
 彼からは敵意を感じなくなったが、私はこの世界の人間を信じてはいない。
 特に権力を持つ人間には酷い扱いをされたこともあり、身構えてしまうようだ。

「冒険者? お前が? ……一人でか?」
「そう、ですけど。この森ってあまり魔物が出ない場所だと聞いていたし、行商人の方も頻繁に通ると言ってました。なので私が一人でいてもおかしくないかとっ!」

「……そうか。パーティーを組まず一人で旅をしているということか」

 彼はじっと私の方を窺うように見つめていた。
 弱そうに見える私が、こんな森の中に一人でいることを怪しんでいるのだろうか。

「レベルは?」
「10ですけど……」

「職は?」
「えっと、弓使い?」

 接近戦は怖いので、遠くから攻撃出来る弓を主に使っていた。
 鑑定スキルで倒せる敵のみを的確に狙い、遠くから一撃で倒す。
 それが私の戦闘スタイルだ。

「先程の短剣は護身用と言ったところか」
「はい」

「だけど安全面を考えれば、パーティーを組んで行動すべきだ。確かに鑑定眼を持っているお前には合っている職だとは思うが、防御面が弱すぎる。敵は魔物だけだと思わない方がいい。こんな森の中には盗賊が潜んでいる場合もあるからな。行商人が何故護衛を雇うと思う? こういったことが多く起こっているからだ」

 私は完全に見落としていた。
 異世界に来てからはずっと魔物相手に戦っていて、盗賊と遭遇したことは一度も無かった。
 それは当然だろう。
 いつも比較的安全な王都の傍で狩りをしていたのだから。
 森に入った時も、盗賊の存在なんて頭にはなかった。
 行商人の話を真に受けて、安心だと勝手に思い込んでいた。
 話を聞いていると、今更になって背筋がぞっとしてくる。

「ここまで何も起こらなかったのは、ただ運が良かっただけだ。そう思い、これからはもっと警戒すべきだな」
「貴重な助言、ありがとうございます」

 盗賊の存在を気付かせてくれたことには感謝したが、パーティーを組んで行動するということには少し戸惑ってしまう。
 私の能力は出来る限り周囲には知られたくない。
 もし誰かと組んで行動することになれば、安全性は増すが私の秘密を知られてしまうリスクが伴ってくる。

(どうしよう……。盗賊とか怖いし、やっぱり誰かと組んだ方がいいのかな)

「そこで提案なんだが……」
「……?」

「私と一緒に旅をしないか?」
「……はい?」

「自分で言うのもなんだが、私はそれなりに強いぞ。戦闘にも慣れているし、お前の苦手な接近戦を得意としている。私達は良い組み合わせだと思う」
「たしかに、強そうには見えますが……。死にそうになっていたじゃないですかっ!」

 突然のことに戸惑い、私はなんとかして断る口実を探してしまう。
 そして思いついたことをそのまま口に出してしまうと、彼は「はは……」と苦笑を浮かべてた。
 怒らせてしまったのでは無いかと一瞬ハラハラしてしまうが、彼からは怒っている様な素振りは見受けられなかった。

「痛いところを突いてくるな。たしかに弟に闇討ちされたのは事実だ。あれは完全に油断していた」
「闇討ち……!?」

「兄弟内での確執が色々とあるんだ。今回のことは良い教訓として頭に入れておくことにするよ。同じ過ちは二度と繰り返さない。だから安心してくれ、と言われても簡単には出来ないか」
「……はい」

 初対面の人間を簡単に信じることなんて出来ない。
 それは当然のことだと思う。

「それなら、私を雇わないか?」
「は? 勇者である貴族様を雇うとか絶対に無理ですっ! 私、そんなお金に余裕なんてありませんっ!」

 金貨はまだ残っているが、これは私の貴重な生活費だ。
 最近では節約生活を心掛けている程だ。
 無駄な出費は出来るだけしたくないというのが本音だった。
 ましてや貴族の護衛を雇うなんて、いくら取られるか分からない。
 そんなの絶対に無理だ。

「私は金には困っていない。ただお前に興味がある」
「意味が良く分からないんですが……」

 今の私の表情は、引き攣った顔に見えているかもしれない。
 私の鑑定スキルを悪用しようとしているのではないだろうかと、そんな風に考えてしまう。
 仮にも彼は権力を持つ側の人間だ。
 あの王子と同じように、私のことを利用しようとしている可能性も無いとは言えないだろう。

「あからさまに、そんなに嫌そうな顔をされると困るのだが」
「私のこと、利用しようと思っていますよね?」

「利用……? ああ、鑑定眼のことか。たしかにその能力を持つ者は稀な存在だが、私が興味を持っているのはそれではなく、お前なんだけどな」
「……私? どういう意味ですか?」

 私は眉を寄せて戸惑いがちに聞き返した。

「どうやら私は、お前に惚れてしまったようだ。一目惚れって言うものなのかもしれないな」
「……は?」

 予想もしない返答が返ってきて、私はぽかんとした顔で気の抜けた声を漏らした。

「さっきセラに触れた時、今まで感じたことのない感情が溢れてきた。言葉で説明するのは難しいが、お前のその甘ったるい匂いに発情した」
「は、発情……?」

「もっとお前のことが知りたくなった。このまま手放したくはない」
「なっ!」

「元はと言えば、先に仕掛けてきたのはセラだろう。私にキスをしたのだからな。だから責任は取って貰わないと、……なあ?」
「……っ!!」

 彼は口角を上げて意地悪そうな顔で告げてきた。
 私の顔は真っ赤に染まり、言い返したいのに何も言葉が浮かばない。

「そんなに顔を真っ赤にさせて。やっぱりお前、可愛いな。私の傍にいた女達とは全然違う。やはり手放すのは惜しいな」
「そんな不埒な考えな人と、一緒に旅なんて出来ませんっ!」

「そうやって私に素直に意見してくる所が、かなり気に入っている。そういう人間は中々いないからな」
「それが理由……?」

「他にどんな理由があると思っていたんだ?」
「……っ!!」

 私は勝手に違うことを想像していた。
 それが今は死ぬほど恥ずかしく思えてくる。
 不埒なことを考えていたのは、私の方だったようだ。

「少しからかい過ぎてしまったか。気を悪くさせたなら謝るよ。すまなかった。だけど、共に旅をすることに対しては、お互いメリットはあると思っている」
「やっぱり、からかったんですね。……酷い」

 私は不満そうな顔でムッと睨み付けた。
 すると彼は再び「悪かった」と謝ってきた。

「私にメリットがあるのは分かりますが、ユーリさんには何のメリットがあるんですか? 私、本当にお金ないですよ?」
「安心しろ。セラから金を取る気は無い。それに『さん』も必要ない」

「……分かりました」
「私が倒れてからどれくらいの時間が過ぎているのかは分からないが、恐らく私は死んだことになっているだろう。状況が把握出来るまでは、死んだものと思わせていた方が動きやすい。それにセラは私の事情を把握しているからな。頼みたいこともある」

「護衛をする代わりに、協力して欲しいと言うことですか?」
「ああ、そうなるな。だけど危険なことはさせない。それは約束する」

 ここで出会ったことには、何か意味があるのかもしれない。
 とんでもないことに巻き込まれ始めているような気はしているけど。

 だけど、彼が勇者であることは恐らく間違い無いと思っている。
 ということは、少なくとも悪役ではないということだ。
 勇者と言えば世界を救うヒーローであり、人々の希望。

 それに、一人で心細かったのも事実だ。
 盗賊の話を聞いて、少し怯えてしまった。
 彼は意地悪そうだけど、意外と話しやすそうだし、もしかしたら上手くやっていけるのかもしれない。
 私の鑑定スキルがバレてしまったこともあるし、隠す手間も省けるというものだ。
 考えようによっては、かなり都合の良い人間なのではないだろうか。
 そんな風に心が揺れ始めていた。

「分かりました。それでは暫くの間、よろしくお願いします」
「ありがとう。感謝するよ、セラ。だけど誤解の無いように一つだけ言っておく」

「なんですか?」
「一目惚れしたというのは強ち間違いではない。私はセラのことが好きらしいからな。だから、同行中は口説かせて貰う」

「は……?」
「嫌だったらはっきりとそう言って、私を諦めさせてくれ」

 ユーリは私の手に触れると、指先にそっと口付けた。
 その瞬間、私の頬は真っ赤に染まっていった。

「やっぱり、良い反応だな」
「もうっ、からかわないでくださいっ!!」

 そして私達は暫くの間、一緒に行動をすることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...