森の中で勇者を目覚めさせたら、一目惚れされました!?【R-18】

Rila

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36.夢の中で

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 食事を終えて、その後に必要なアイテムを揃えるために雑貨へと向かった。
 まずは仮面舞踏会に参加するために、仮面を用意した。
 なるべく私だと言うことがバレないようにするために、なるべく顔を覆う範囲が広いものを購入した。
 そしてその後はウィッグを買いに行くことにした。
 髪色は変えられないが、ウィッグが売られていることは以前から知っていた。
 しかし主に貴族が手に取るような品だったため、値段もそこそこ張っていた。
 以前ウルフを倒した時の資金をほぼ全て使い、漸く一つ購入することが出来た。
 地味な赤茶色のウィッグだが、この世界では一番多く見かける髪色であるため、目立つことは避けられそうだ。

(これで、とりあえず準備は完了かな……)

 私は宿屋に行き、部屋を借りると夕方までここで待機することにした。 
 日中に王都内をむやみに出回るのは危険だと判断したためだ。
 仮面舞踏会がどこで行われるのかは分からないが、昨日クリストフは約一日の猶予を私に設けた。
 ということは、夜行われる可能性が高いと言うことだ。

 日が落ちてしまえば浮遊しても闇に紛れることが可能な為、私の存在に気付かれる確率は格段に低くなるはずだ。
 上空から探せば難なく見つかるのではないかと考えた。
 昨日は寝ていなかったことも有り、少し仮眠を取ることにした。
 無理をして判断力を鈍らせるより、万全の状態で臨んだ方が絶対に良い。
 その為に、今は力を温存しようと考えた。
 目を瞑ると体が重くなり全身から力が抜け落ちて行く。
 瞼を閉じることですぐに眠気に襲われ、深い眠りへと墜ちていった。


 ***


『あなたなら、絶対にやれるわ。だってあなたは……』

 聞いたことがない声なのに、無性に懐かしさを感じるのは何故なのだろう。
 周囲は真っ白な霧に覆われていて、声はするが姿を確認することは出来ない。
 そこには私の意識があるだけで、動くことも叶わず、視線を動かすだけで精一杯のようだった。

(だれ……?)

『私はこの世界の女神、とでも言うべき存在かしら』

(女神って……。あ、あのっ! 女神様、私に力を貸してくださいっ! 助けたい人がいて……)

『分かっています。 あなたにとって大切な人なのですよね』

(はいっ! でも、ユーリには聖剣が無くて……。このままだと、また弟さんに殺されちゃうかも……)

『その心配はありません。あれは聖剣と言われているようですが、ただの剣に過ぎません。かつての祖先が使っていただけの品ですから』

(それってどういう意味ですか……?)

『簡単に言えば、本人が持たなければ何の効果も示さない品物。しかし、あれの持ち主は疾うの昔に亡くなっていますから、ただの遺品ってことになりますね』

(ええ……、そうなんですか!?)

『ええ、そうなんです。だけどあなたと彼が揃えば新たな聖剣が生まれるはずです。だって本物の聖女はあなたなのですから』

(……どうして、私が。だって白鳥さんが聖女ではなかったのですか?)

『それには少々事情がありまして、もう一人の方は強いて言えば囮です。あなたが本物の聖女だということを周囲に隠すために選んだ、偽者とでも言いましょうか」

(……私が、本物の聖女……?)

『はい。周囲に勘付かれないためにあなたから魔力を消して、逆にもう一人の彼女には微弱の魔力と聖属性を一時的に与えました』

 女神と名乗る者の話しはこのようだ。
 この世界に二人を召喚させたのは、クリストフが失敗したわけでもなければ、偶然そうなったわけでもない。
 召喚の儀式が行われると知った時、女神が力を使い傍にいたカレンを巻き添えにした。
 本来召喚される人間は、私だけだったということらしい。

 そして何故そのようなことを行ったのかと言えば、ある者に妨害されアルヴァールでは聖女召喚が出来なくなっていたからだそうだ。
 それは封印の力が弱まっていたことが関係しているそうだ。
 妨害していたのはバルムートの人間とは無関係であり、邪神自らが行っていたようだ。

 クリストフはバルムートがアルヴァールに及ばなかったのは、聖女のことが関連しているのでは無いかと考えていた。
 そして聖女さえ手に入れば、バルムートもかの国のように国を強化出来ると考えた。
 更に言うと、聖女を呼び寄せたことにより、次期国王になれる期待も膨らんだと言うことらしい。
 しかしクリストフが私に興味を示すことは想定外だったそうだ。

(邪神というのは、まさかクリストフ王子のことですか!?)

『違います。あれはただ欲に眩んだだけの人間です』

(それなら誰が……。分かっているのなら教えてくださいっ!)

『安心してください。邪神は今人間の器の中に閉じ込めてあります。封印を弱めることは出来ても、消し去るまでは至らなかった。所詮は人間の器だということなのでしょう。それに聖女であるあなたと勇者の血筋を持つ人間が出会ったことで、再び封印は強固なものに戻りつつあります。今の邪神はあなた達の前では脅威にはなり得ません』

(でも……、ユーリを助けるためにはどうしたら……)

『それはあなた自身が己を信じること。さすれば道は必ず開けます。今は隠蔽のためにあなたの魔力を封じていますが、時期が訪れれば解放されます』

(それはどうやったら……)

『先程も言ったとおり、己の力を信じること……とでも言っておきましょうか。そろそろお目覚めの時間のようですね。あなたには混乱をさせてしまったので、そのお詫びとして新たな加護を授けます。諦めないで……。あなたは決して一人ではないのだから』

 女神の加護に当てられていると、体が温かくなりとても心地よく感じる。
 だけどその間にも女神の声はどんどん遠ざかっていくような気がする。

(まって、まだ聞きたいことが……)

 そう思った瞬間、ぱちっと目が覚めた。
 部屋内は夕暮れ時なのか、赤黒い光がカーテンの隙間から入り込んできている。
 どうやら私は長い間眠ってしまっていたようだ。

 先程のことは夢だったのだろうか。
 だけど胸の奥はなんだか温かいままだ。
 私は気になって自分のステータス画面を開いてみることにした。
 するとそこには女神の加護+と言うものが追加されていた。
 効果を見てみると、全ステータスの上昇と、ヒットポイントが大幅に上がっていた。
 相変わらず魔力はゼロのままだが、これならば魔法が使えなくても十分戦えると判断出来た。

「さっきのって、多分夢……じゃないよね。己を信じることか……」

 私は胸に両手を当てて静かに目を閉じた。
 今自分がやるべきことはしっかりと分かっている。
 私は大切な人とこの世界で生きていくために、やらなくてはならないことがある。

「ユーリは傍にいてくれると約束してくれたから、私も頑張らないとね」

 そんな独り言を嬉しそうに漏らすとベッドから起き上がり、最終確認をした後に部屋を出た。
 そうこうしているうちに、外は真っ暗な闇へと呑み込まれていた。

「行こう……!」

 私は自分を奮い立たせ、決意した表情を浮かばせた。
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