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8.無茶振り

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私が学園に戻り2週間が過ぎた。
ハーラルトが放課後時間を作ってくれて、休んでいた所の勉強を教えてくれた事もあり授業に遅れることなく付いていける様になっていた。

ハーラルトは何を考えてるのかが良くわからない。
基本的には面倒見が良くて優しい人なんだとは思う。
婚約者はいないみたいだけど、好きでもない私に簡単にキスして来る位だから他の子にも平気でしたりしてるのかな。
クラスメイトの令嬢達とも仲が良いみたいだし、ハーラルトにとっては普通の事なのかもしれない。

貴族もそうだけど王族の人間は当然の様に側室とか持つし、一人を愛するよりも色んな人を愛したいと思ってる人が多いのかな。
私にはそれは理解出来ないけど、王子であるハーラルトはそうなのかもしれない。
だからあのキスの事はもう忘れよう。
きっとハーラルトにとっては私を慰める為にしてくれただけの事、きっと特別なわけじゃない。

でもハーラルトのおかげでマティアスの事は少しだけ気持ちの整理が出来た気がする。
無理して忘れる必要は無いと言う言葉が私の気持ちを少しだけ楽にしてくれた。

今まで早く忘れなきゃって思って、だけど忘れられない事に焦って自分で自分を責めてた。
そんな必要ないんだって分かった途端、気が楽になった。
それを教えてくれたハーラルトには感謝している。

そんな事を考えながらハーラルトを眺めていたら、目が合ってしまった。
焦って視線を逸らそうとしたら、ハーラルトが私の方にやって来た。

「リリー嬢、君はもう特別授業のパーティーは決めた?」
「まだ決まってません」

そう言えば、さっきの授業の終わりに次回は実際にダンジョンに潜って行う実践訓練になるとか先生が話していたことを思い出した。
ハーラルトはさっきまで話してた令嬢達とパーティーを組むつもりなのかな?

「それなら僕と組まないか?」
「え…?私も入れてもらって良いんですか?」
私が少し驚いた顔で言うとハーラルトは当然の様に「もちろん」と答えた。

「ではよろしくお願いします。他のメンバーは何人決まっているんですか?」
「僕と君の二人だけだよ」

「え…っと…私達は二人とも攻撃担当ですよね?支援してくれる方もいれないと…」
「まぁ、僕達二人なら問題ないよ」

「でも実践になるし…危険じゃないですか?」
「一応支援回復の薬は多めに用意するし、僕が支援に回っても構わないからね」
私は困った顔をした。
さすがに実践で支援無しで入るのは無茶過ぎる気がする。

「どうしてそこまで二人に拘るんですか?」
「君の実力が見てみたいんだ。人数が多いとあまり実力が出せないだろう?」
ハーラルトの言葉は分かるけど、やっぱり不安が残る。

「一応さっき先生にも聞いてみたんだ。そしたら僕達二人なら問題ないって言われたよ」
「………。」
ハーラルトはにっこり笑ってそう言った。
私はその言葉に何も返せなかった。

「決まりだな」
「はい…」

強引にハーラルトに押し切られる形で決まってしまった。
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