聖女が不要になった世界で王子と結婚しましたが、私は必要ないみたいなので出て行きます【R18】

Rila

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第一章:聖女から冒険者へ

53.ジースの街④

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 食事を終えると私達は店内から外へと出た。
 暖かい場所から寒い所に出ると、その温度差に身震いしてしまいそうになるが、食事を摂ったおかげで体の内側から温まり、ここに立ち寄る前よりは寒さを感じなくなっていた。

「外に出るとやっぱり寒いな。ルナ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。温かい飲み物を飲んだおかげで、体がぽかぽかしてる」

 私がにっこりと笑顔で返すと、彼は「そうか」と安堵した表情を浮かべた。
 イザナはいつも私の事を気に掛けてくれる。
 そんな優しいイザナが私は大好きだ。

 私はイザナの隣に並ぶようにして歩いているのだが、先程から横にあるイザナの腕にチラチラと視線を向けていた。
 何度か手を伸ばそうとするも、恥ずかしさが邪魔をして途中で止まってしまう。

(今日はデートだって言ってくれたし、私もくっついてるって言ったんだし……。大丈夫だよ!)

 私は自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、思い切ってイザナの腕にぎゅっと掴まった。
 彼にくっつくと次第に鼓動が速くなりドキドキしてしまったが、嬉しさが込み上げて来て顔が徐々に綻んでいく。

「本当にルナは可愛いな。私の腕に掴まるのでさえ必死そうで」
「……っ!! き、気付いてたの?」

 今までの私の行動を見ていたのだと思うと急に恥ずかしくなり、顔の奥がじわじわと火照っていくのを感じる。

(うそ、見られてた!? どうしよう……、すごく恥ずかしいっ)

「必死そうにするルナの姿があまりにも可愛らしくて、つい気付かないフリをしてしまったけどね」

 イザナは口端を小さく上げて、クスッと悪戯っぽく笑っていた。
 私は不満そうにむっとした表情をイザナに向けた。

「もしかして、怒った?」
「お、怒ってないけど……」

 急にそんな事を言われると、私の方が戸惑ってしまう。
 別に怒っているわけではなかったからだ。

「知ってるよ。ルナは恥ずかしがっているだけだもんな」
「……っ、イザナの意地悪っ!」

 分かっていて聞いて来たのだと気付くと、私は再びムスッとした顔でイザナの事を睨んだ。
 しかし、先程の彼の言葉を思い出すと急に恥ずかしさが込み上げて来てしまい、顔を反対側に背けた。

「ルナ、ごめん。謝るからこっちを向いて?」
「……っ」

 私は別に怒っているわけでない。
 だけどまたイザナの方を向いてしまえば、からかわれるかもしれない。
 そんな事を先読みして、私は敢えて知らん振りをすることにした。

「ルナの機嫌を損ねてしまったかな」
「……っ、そんなこと無いよっ」

 隣から寂しそうに呟くイザナの声が聞こえて来て、私は咄嗟に顔を戻した。
 すると満足そうに微笑んでいる彼と視線が合い、私は再び不満そうな顔を向けてしまう。

「やっとこっちを向いてくれたね。意地悪を言ってごめん」
「ううん、私もごめん……」

 イザナは足を止めると私の顔を見つめながら謝って来たので、思わず私も返してしまった。
 私が答えた直後にイザナは小さく微笑み、そっと私の額に口付けた。
 その瞬間、私の顔の温度が一気に上がった。

 私は慌てるように、辺りを見渡した。
 ここは街の中であり人通りは余りないが、もしかしたら誰かに見られている可能性だってある。
 イザナが人目をあまり気にしないことをすっかり忘れていた。

(近くには誰もいないみたい。良かった……)

「ルナ、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」

 私はこれ以上突っ込まれないように、それ以上は言わないことにした。
 彼のことだから私がまた恥ずかしがれば、きっと更に責めて来るに違いない。
 イザナとまた一緒に旅するようになって、彼の性格が段々分かってくるようになった。
 今までの優しいだけのイザナは仮の姿だったのだろうか。
 だけど私は、昔の優しいだけのイザナも、今の少し意地悪なイザナも、両方とも大好きなんだと思う。

「たしか、この道を進んだ先だったはずだ。行こうか」
「うんっ」

 私は嬉しそうに笑顔で頷いた。
 今日は折角のデートなのだから、目一杯楽しまなければ勿体ないだろう。
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