54 / 68
第一章:聖女から冒険者へ
53.ジースの街④
しおりを挟む
食事を終えると私達は店内から外へと出た。
暖かい場所から寒い所に出ると、その温度差に身震いしてしまいそうになるが、食事を摂ったおかげで体の内側から温まり、ここに立ち寄る前よりは寒さを感じなくなっていた。
「外に出るとやっぱり寒いな。ルナ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。温かい飲み物を飲んだおかげで、体がぽかぽかしてる」
私がにっこりと笑顔で返すと、彼は「そうか」と安堵した表情を浮かべた。
イザナはいつも私の事を気に掛けてくれる。
そんな優しいイザナが私は大好きだ。
私はイザナの隣に並ぶようにして歩いているのだが、先程から横にあるイザナの腕にチラチラと視線を向けていた。
何度か手を伸ばそうとするも、恥ずかしさが邪魔をして途中で止まってしまう。
(今日はデートだって言ってくれたし、私もくっついてるって言ったんだし……。大丈夫だよ!)
私は自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、思い切ってイザナの腕にぎゅっと掴まった。
彼にくっつくと次第に鼓動が速くなりドキドキしてしまったが、嬉しさが込み上げて来て顔が徐々に綻んでいく。
「本当にルナは可愛いな。私の腕に掴まるのでさえ必死そうで」
「……っ!! き、気付いてたの?」
今までの私の行動を見ていたのだと思うと急に恥ずかしくなり、顔の奥がじわじわと火照っていくのを感じる。
(うそ、見られてた!? どうしよう……、すごく恥ずかしいっ)
「必死そうにするルナの姿があまりにも可愛らしくて、つい気付かないフリをしてしまったけどね」
イザナは口端を小さく上げて、クスッと悪戯っぽく笑っていた。
私は不満そうにむっとした表情をイザナに向けた。
「もしかして、怒った?」
「お、怒ってないけど……」
急にそんな事を言われると、私の方が戸惑ってしまう。
別に怒っているわけではなかったからだ。
「知ってるよ。ルナは恥ずかしがっているだけだもんな」
「……っ、イザナの意地悪っ!」
分かっていて聞いて来たのだと気付くと、私は再びムスッとした顔でイザナの事を睨んだ。
しかし、先程の彼の言葉を思い出すと急に恥ずかしさが込み上げて来てしまい、顔を反対側に背けた。
「ルナ、ごめん。謝るからこっちを向いて?」
「……っ」
私は別に怒っているわけでない。
だけどまたイザナの方を向いてしまえば、からかわれるかもしれない。
そんな事を先読みして、私は敢えて知らん振りをすることにした。
「ルナの機嫌を損ねてしまったかな」
「……っ、そんなこと無いよっ」
隣から寂しそうに呟くイザナの声が聞こえて来て、私は咄嗟に顔を戻した。
すると満足そうに微笑んでいる彼と視線が合い、私は再び不満そうな顔を向けてしまう。
「やっとこっちを向いてくれたね。意地悪を言ってごめん」
「ううん、私もごめん……」
イザナは足を止めると私の顔を見つめながら謝って来たので、思わず私も返してしまった。
私が答えた直後にイザナは小さく微笑み、そっと私の額に口付けた。
その瞬間、私の顔の温度が一気に上がった。
私は慌てるように、辺りを見渡した。
ここは街の中であり人通りは余りないが、もしかしたら誰かに見られている可能性だってある。
イザナが人目をあまり気にしないことをすっかり忘れていた。
(近くには誰もいないみたい。良かった……)
「ルナ、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
私はこれ以上突っ込まれないように、それ以上は言わないことにした。
彼のことだから私がまた恥ずかしがれば、きっと更に責めて来るに違いない。
イザナとまた一緒に旅するようになって、彼の性格が段々分かってくるようになった。
今までの優しいだけのイザナは仮の姿だったのだろうか。
だけど私は、昔の優しいだけのイザナも、今の少し意地悪なイザナも、両方とも大好きなんだと思う。
「たしか、この道を進んだ先だったはずだ。行こうか」
「うんっ」
私は嬉しそうに笑顔で頷いた。
今日は折角のデートなのだから、目一杯楽しまなければ勿体ないだろう。
暖かい場所から寒い所に出ると、その温度差に身震いしてしまいそうになるが、食事を摂ったおかげで体の内側から温まり、ここに立ち寄る前よりは寒さを感じなくなっていた。
「外に出るとやっぱり寒いな。ルナ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。温かい飲み物を飲んだおかげで、体がぽかぽかしてる」
私がにっこりと笑顔で返すと、彼は「そうか」と安堵した表情を浮かべた。
イザナはいつも私の事を気に掛けてくれる。
そんな優しいイザナが私は大好きだ。
私はイザナの隣に並ぶようにして歩いているのだが、先程から横にあるイザナの腕にチラチラと視線を向けていた。
何度か手を伸ばそうとするも、恥ずかしさが邪魔をして途中で止まってしまう。
(今日はデートだって言ってくれたし、私もくっついてるって言ったんだし……。大丈夫だよ!)
私は自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、思い切ってイザナの腕にぎゅっと掴まった。
彼にくっつくと次第に鼓動が速くなりドキドキしてしまったが、嬉しさが込み上げて来て顔が徐々に綻んでいく。
「本当にルナは可愛いな。私の腕に掴まるのでさえ必死そうで」
「……っ!! き、気付いてたの?」
今までの私の行動を見ていたのだと思うと急に恥ずかしくなり、顔の奥がじわじわと火照っていくのを感じる。
(うそ、見られてた!? どうしよう……、すごく恥ずかしいっ)
「必死そうにするルナの姿があまりにも可愛らしくて、つい気付かないフリをしてしまったけどね」
イザナは口端を小さく上げて、クスッと悪戯っぽく笑っていた。
私は不満そうにむっとした表情をイザナに向けた。
「もしかして、怒った?」
「お、怒ってないけど……」
急にそんな事を言われると、私の方が戸惑ってしまう。
別に怒っているわけではなかったからだ。
「知ってるよ。ルナは恥ずかしがっているだけだもんな」
「……っ、イザナの意地悪っ!」
分かっていて聞いて来たのだと気付くと、私は再びムスッとした顔でイザナの事を睨んだ。
しかし、先程の彼の言葉を思い出すと急に恥ずかしさが込み上げて来てしまい、顔を反対側に背けた。
「ルナ、ごめん。謝るからこっちを向いて?」
「……っ」
私は別に怒っているわけでない。
だけどまたイザナの方を向いてしまえば、からかわれるかもしれない。
そんな事を先読みして、私は敢えて知らん振りをすることにした。
「ルナの機嫌を損ねてしまったかな」
「……っ、そんなこと無いよっ」
隣から寂しそうに呟くイザナの声が聞こえて来て、私は咄嗟に顔を戻した。
すると満足そうに微笑んでいる彼と視線が合い、私は再び不満そうな顔を向けてしまう。
「やっとこっちを向いてくれたね。意地悪を言ってごめん」
「ううん、私もごめん……」
イザナは足を止めると私の顔を見つめながら謝って来たので、思わず私も返してしまった。
私が答えた直後にイザナは小さく微笑み、そっと私の額に口付けた。
その瞬間、私の顔の温度が一気に上がった。
私は慌てるように、辺りを見渡した。
ここは街の中であり人通りは余りないが、もしかしたら誰かに見られている可能性だってある。
イザナが人目をあまり気にしないことをすっかり忘れていた。
(近くには誰もいないみたい。良かった……)
「ルナ、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
私はこれ以上突っ込まれないように、それ以上は言わないことにした。
彼のことだから私がまた恥ずかしがれば、きっと更に責めて来るに違いない。
イザナとまた一緒に旅するようになって、彼の性格が段々分かってくるようになった。
今までの優しいだけのイザナは仮の姿だったのだろうか。
だけど私は、昔の優しいだけのイザナも、今の少し意地悪なイザナも、両方とも大好きなんだと思う。
「たしか、この道を進んだ先だったはずだ。行こうか」
「うんっ」
私は嬉しそうに笑顔で頷いた。
今日は折角のデートなのだから、目一杯楽しまなければ勿体ないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~
サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる