聖女が不要になった世界で王子と結婚しましたが、私は必要ないみたいなので出て行きます【R18】

Rila

文字の大きさ
61 / 68
第一章:聖女から冒険者へ

59.安心感

しおりを挟む
 こちらに近づいてくる気配を感じて、私は視線をそちらへと向けた。
 するとイザナと視線が合ったような気がした。

「ルナ、起きていたのか?」
「……うん」

 私が起きていることに気付くと、彼はベッドの端に腰を下ろした。
 そして私の額にそっと掌を乗せて、優しく撫で始めた。

「もしかして、さっきの話、聞いてた?」
「少しだけ。私、狙われてるの?」

 私は不安をそのまま表情に出すように答えた。
 
「ごめん。ルナを不安にするような発言をしてしまったようだね。あれは用心するに越したことがないって意味で言っただけだよ。たしかに、ルナの存在は向こうにとっても貴重な情報源になるから、狙われないというのは嘘にはなるけど、私とゼロで守るから。安心していて欲しいな」
「二人とも強いし、きっと大丈夫だよねっ。私の方こそ、なんかごめんなさい。少し不安になっちゃって」

 イザナが心配してくれていることが分かると嬉しい反面、少し申し訳なくも感じてしまった。
 よくよく考えてみれば、Sランク冒険者である二人が付いてくれれば簡単に負けたりはしないだろう。
 そんな風に前向きに考えていると、次第に不安も薄れていき私の表情も明るくなっていった。

「いや、ルナが謝る必要はないよ。不安に思うのは当然のことだからね。それに私はまだベルヴァルトの王子だから、そう簡単に手を出しては来ないだろうな。だから、きっと大丈夫だよ」
「うんっ」

 彼がそう言うのなら、きっと大丈夫だろう。

「それと、急にはなるけど明日にはここを立とうと思っているんだ。もっとジースを見て回りたかったか?」
「ううんっ、大丈夫! 今日沢山イザナに案内して貰ったし、十分満足出来たよっ! デートも楽しかったし、イザナとの思い出も上書き出来たし……」

 私が恥ずかしそうにもじもじしながら答えると、イザナは「可愛いな」と呟いて、私の額にそっと口付けた。
 ソフィアとのことも、私が考え過ぎていただけなのかもしれない。
 イザナが今見ているのは私で、気持ちも私にだけ向けてくれている。
 それが分かっているのに、私は僅かな過去に嫉妬してしまった。
 今思うと、それがとても恥ずかしく感じてしまう。

(大事なのは過去ではなく、今だよね……)

「そういえば、あの場所で光を放っていたのって聖女だったの?」
「確定は出来ないけど、黒竜を一瞬で消し去るだけの魔力を持っていることは間違いないからね。可能性としは十分あると思う」
「そっか……」

 新しい聖女が現れたということは、いつ災厄が生まれてもおかしくないという状態なのかもしれない。
 そう思うと、いくら自分がその役目を終えたからといって、素直に喜ぶことは出来なかった。
 しかし、同時に気楽に考えることも出来た。
 かつてのような重圧を感じることもなければ、誰かに強いられることもない。
 私は自分に出来ることをすればいい。
 そんな風に思うと、気持ちも大分楽になった。

(いつまでも不安でいてもしょうがないよね。折角の旅なんだし、楽しまないとっ……!)

「急に嬉しそうな顔に変わったけど、どうしたの?」
「新しい地に行けば、またイザナとの思い出が増えるのかなって思ったら、ちょっと嬉しくなっちゃって。やっぱり旅は楽しい気分でするものだよねっ!」

 私が笑顔で答えると、イザナは微笑みながら「そうだな」と答えて、ゆっくりと顔を下ろしていった。
 急に距離が近づき、私はドキドキしてしまう。

「やっぱり、はしゃいでいる姿のルナはいいな。私は、その笑顔を絶対に守らなければならないな」
「……っん」

 イザナは優しい声で呟くと、私の唇をそっと口付けた。
 そして何度も触れるだけのキスを繰り返していく。
 私はその温かい感覚を心地よく思い、ゆっくりと目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

処理中です...