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第二章
63.不満と不安
あの光景を見てしまったことで、私の心は一日中靄がかかったかの様にどんよりとしていた。
ロランが嘘を付いたこと。
そして未だにそのことを打ち明けてくれないことに不満を感じてしまう。
授業が終わると私とロランは普段通り、同じ馬車に乗り屋敷までの道のりを移動していた。
ガタガタガタ……、と車輪の回る音が響く。
私もロランも先程から口を閉ざしたままだ。
(どうして、何も話してくれないの。私には話せないことなのかな……)
この状況が更に追い打ちをかけるかのように、私の不安を増大させていく。
ロランは先程から窓の奥をじっと見つめ黙ったままだ。
私が目の前にいるのに、そのことすら忘れている様に見えて胸が締め付けられる。
「ロラン……」
私は我慢出来なくなり、ゆっくりと口を開いた。
「…………」
しかしロランは私の呼びかけには全く気付かない程、考え事に没頭しているようだ。
ロランの態度に私の表情は次第に厳しくなる。
眉間に皺を寄せ、しかめっ面で視線を送っているが相変わらず反応は無い。
(なによ。今一緒にいるのは私なのに……)
そんな時、突然馬車が激しく揺れた。
「……きゃっ」
私はその衝撃で小さく声を漏らしてしまう。
今の揺れでロランはハッと我を取り戻したかのように、私の方へと視線を向けた。
そして漸くこちらへと視線を向けた。
「シャル、大丈夫か?」
「…………」
私は今更声をかけて来たことへの不満から『ふんっ』と視線を逸らし無視をした。
「シャル……?」
私のとった態度にロランは驚いた顔をしていた。
普段の私なら、こんなこと位でここまであからさまに嫌な態度をみせたりはしない。
だけど今日は違う。
一日中やもやしていたのは確実にロランの所為だし、その上何も言ってくれない態度に苛立ちは限界値を達していた。
あの時は傍にジェラルドもいたから話しづらいのかな、なんて思ったりもした。
だから馬車の中で、二人っきりになったタイミングで事情を話してくれるんじゃないかと密かに期待していた。
だけど未だにロランは何も話してくれない。
やっぱりあの時ルチアと会っていたのは、隠したいことだったのだろうか。
そんな風に考えてしまう。
「もしかして怒っているのか?」
ロランは困ったように呟いた。
私はロランの言葉に再び顔を顰めた。
今のロランの顔は、明らかに何故怒っているの分からないと言っているように見えたからだ。
「なんで、そう思うの?」
「なんでって……。そんな顔を見せられたら普通気付くだろ。俺、シャルに何かしたか?」
ロランの言葉で私の心は再び揺さぶられる。
心の奥がざわつき、不安という感情にぎゅっと締め付けられているようだ。
私は一瞬悲しそうな顔を浮かべてしまう。
「別に、なんでもない」
「何でも無いわけないだろう。もしかして、ジェラルドになにかされたのか?」
私が目を逸らして小さく呟くと、ロランは直ぐさま言い返してきた。
ジェラルドの名前が聞こえ、私は再びロランの方に視線を向けた。
「ジェラルドは関係ないよ。何もされてないし。課題を今度一緒にやろうって誘われただけ」
「ああ、あれか。違うのなら、シャルの機嫌を損ねているのは一体何なんだ?」
思わず『ロランだよ!』と言いたくなったが、その言葉をぐっと呑み込んだ。
ロランは全く心当たりがないという顔をしていたからだ。
もしかしたらルチアに会っていたのは本当に偶然で、ロランにとっては大したことではなかったのかもしれない。
だけど、それならどうしてあの時私を探していたなんて嘘を言ったのだろう。
ロランに嘘を付かれることが、こんなにも辛いだなんて思いもしなかった。
今この場でその事を問い詰めたらロランはどんな態度を示すのだろう。
「シャル?話してくれないか?黙ったままじゃ分からないぞ」
「……それは。ロランは心当たりないの?」
「俺?……やっぱり俺が何かしたのか?」
(本当に分からないの?)
私は自分の手をぎゅっと握りしめた。
そしてゆっくりと口を開く。
「今日、見ちゃったの」
「何を?」
「ロランが、……あの子とベンチに座って話してるところ」
「…………」
一瞬ロランの表情が強張って見えた様な気がした。
なにかまずいものを見られたといったような顔だ。
「あの時、ロラン言ったよね。私を探していたって。どうして本当のことを言わなかったの?」
「……そうか、あれを見られていたのか」
私が思いきって打ち明けると、ロランは深くため息を漏らして静かに答えた。
(やっぱり隠そうとしていたの……?)
ロランが嘘を付いたこと。
そして未だにそのことを打ち明けてくれないことに不満を感じてしまう。
授業が終わると私とロランは普段通り、同じ馬車に乗り屋敷までの道のりを移動していた。
ガタガタガタ……、と車輪の回る音が響く。
私もロランも先程から口を閉ざしたままだ。
(どうして、何も話してくれないの。私には話せないことなのかな……)
この状況が更に追い打ちをかけるかのように、私の不安を増大させていく。
ロランは先程から窓の奥をじっと見つめ黙ったままだ。
私が目の前にいるのに、そのことすら忘れている様に見えて胸が締め付けられる。
「ロラン……」
私は我慢出来なくなり、ゆっくりと口を開いた。
「…………」
しかしロランは私の呼びかけには全く気付かない程、考え事に没頭しているようだ。
ロランの態度に私の表情は次第に厳しくなる。
眉間に皺を寄せ、しかめっ面で視線を送っているが相変わらず反応は無い。
(なによ。今一緒にいるのは私なのに……)
そんな時、突然馬車が激しく揺れた。
「……きゃっ」
私はその衝撃で小さく声を漏らしてしまう。
今の揺れでロランはハッと我を取り戻したかのように、私の方へと視線を向けた。
そして漸くこちらへと視線を向けた。
「シャル、大丈夫か?」
「…………」
私は今更声をかけて来たことへの不満から『ふんっ』と視線を逸らし無視をした。
「シャル……?」
私のとった態度にロランは驚いた顔をしていた。
普段の私なら、こんなこと位でここまであからさまに嫌な態度をみせたりはしない。
だけど今日は違う。
一日中やもやしていたのは確実にロランの所為だし、その上何も言ってくれない態度に苛立ちは限界値を達していた。
あの時は傍にジェラルドもいたから話しづらいのかな、なんて思ったりもした。
だから馬車の中で、二人っきりになったタイミングで事情を話してくれるんじゃないかと密かに期待していた。
だけど未だにロランは何も話してくれない。
やっぱりあの時ルチアと会っていたのは、隠したいことだったのだろうか。
そんな風に考えてしまう。
「もしかして怒っているのか?」
ロランは困ったように呟いた。
私はロランの言葉に再び顔を顰めた。
今のロランの顔は、明らかに何故怒っているの分からないと言っているように見えたからだ。
「なんで、そう思うの?」
「なんでって……。そんな顔を見せられたら普通気付くだろ。俺、シャルに何かしたか?」
ロランの言葉で私の心は再び揺さぶられる。
心の奥がざわつき、不安という感情にぎゅっと締め付けられているようだ。
私は一瞬悲しそうな顔を浮かべてしまう。
「別に、なんでもない」
「何でも無いわけないだろう。もしかして、ジェラルドになにかされたのか?」
私が目を逸らして小さく呟くと、ロランは直ぐさま言い返してきた。
ジェラルドの名前が聞こえ、私は再びロランの方に視線を向けた。
「ジェラルドは関係ないよ。何もされてないし。課題を今度一緒にやろうって誘われただけ」
「ああ、あれか。違うのなら、シャルの機嫌を損ねているのは一体何なんだ?」
思わず『ロランだよ!』と言いたくなったが、その言葉をぐっと呑み込んだ。
ロランは全く心当たりがないという顔をしていたからだ。
もしかしたらルチアに会っていたのは本当に偶然で、ロランにとっては大したことではなかったのかもしれない。
だけど、それならどうしてあの時私を探していたなんて嘘を言ったのだろう。
ロランに嘘を付かれることが、こんなにも辛いだなんて思いもしなかった。
今この場でその事を問い詰めたらロランはどんな態度を示すのだろう。
「シャル?話してくれないか?黙ったままじゃ分からないぞ」
「……それは。ロランは心当たりないの?」
「俺?……やっぱり俺が何かしたのか?」
(本当に分からないの?)
私は自分の手をぎゅっと握りしめた。
そしてゆっくりと口を開く。
「今日、見ちゃったの」
「何を?」
「ロランが、……あの子とベンチに座って話してるところ」
「…………」
一瞬ロランの表情が強張って見えた様な気がした。
なにかまずいものを見られたといったような顔だ。
「あの時、ロラン言ったよね。私を探していたって。どうして本当のことを言わなかったの?」
「……そうか、あれを見られていたのか」
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