素直になれない令嬢は幼馴染の重すぎる愛から逃げられない?【R18】

Rila

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第二章

66.隠していた思い-sideルチア-

「ルチア、貴女はどうしてもカール様との婚約が嫌だと言うのね」
「……はい」

お母様は目を細め、私の表情を覗うかのようにじっと見つめていた。

「本気で嫌だというのであれば、カール様に変わる方を探す事ね。そうすればきっとあの人も認めてくれるわ」
「自分で婚約者を見つけろって事ですか?」

あの人というのはお父様のことだ。
以前は優しかったが、詐欺師に騙され財産の大半を無くしてから性格が変わってしまった。
気性が荒くなり、突然怒鳴り出すこともある。

「そうよ。ロゼが駆け落ちなんてふざけたことをしたせいで、我が家に援助をしてくれる者がいなくなってしまった。本当に親不孝者の娘だわ。まさか執事と一緒に出て行くなんてね。だけど、私は貴女のことは信じているから。私達の事を見捨てないって……」
「……っ」

ロゼと言うのは私の二歳上の姉の事だ。
お姉様を連れて行ったのはこの屋敷に長年仕えていた執事。
二人が恋仲であることは気付いていた。
だけど、まさかこんな事件を起こすとは思っても見なかった。
それ程までに二人の絆は強かったのだろう。

好きでもない相手と結婚するくらいなら、駆け落ちをして好きな人と生きていく道を選ぶ理由も分かる。
それもこんなどうしようもない家族の為に一生を台無しにするくらいなら、家を捨てて自由に生きていく方が遥かにマシだろう。
私達は、ただ贅を尽くした生活を送る為の駒にしか思われていないのだろう。
だからお姉様の選択はきっと間違ってはいない。
その所為で、とばっちりが私に来ているのだけど……。

(お姉様、今頃どこにいるんだろう……。幸せにやってるのかな)

私がそんなことを考えていると、お母様に突然両手を掴まれた。
しかも掴む力が強くて、ぎゅうっと締め付けられて痛みを感じる程だ。
狂気を孕んだ瞳に囚われ、足が竦み逃げることが出来ない。

「ドレッセル公爵家のロラン様……」
「……っ!」

「貴女がずっと思いを寄せている殿方よね。しかも公爵家の嫡男」
「な、なんで……」

「なんで知っているかって?それは貴女の日記に書かれていたからよ」
「私の日記を勝手に読んだのですか!?酷いわ……」

(うそでしょ……)

「酷い?私は母親なのだから娘の心配をするのは当たり前よ。変な男に引っかかっていたら大変だし。だけどロラン様なら問題ないわ。私はね、あんな成り上がり風情のゲスな男に大切な娘を渡したくないと思っていたのよ。だから応援するわ。なんとしてもロラン様との婚約を決めなさい」

「いきなり何を言い出すの?そんなの無理よ……。ロランには婚約者だっているし」
「ああ、元王子の婚約者だった公爵令嬢の事ね。大体の事情は察しが付くわ。王子に捨てられた汚名を消すために、強引に急いで決めたのでしょう」

(違う。ロランはずっとシャルロッテ様のことを好きだったから)

私はロランのことがずっと好きだったので、自分の口からその事実を告げたくはなかった。

「ルチア、決めるのは貴女よ。予定通りカール様との婚約を進めるか、ずっと貴女が思い続けているロラン様を選ぶか」
「…………」

お母様は私の耳元で「幸せな道を自分で選びなさい」と囁くと、私の手をぱっと離した。


***


それから私は自分の部屋に戻った。
そして慌てて机の奥に隠してある自分の日記を手に取った。
きっと私が出かけている間に、お母様はこの部屋に入り勝手に盗み見ていたのだろう。

(……酷いよ。お母様でも許せないっ!)

この中には誰にも言えない気持ちを、幼い頃からずっと書き綴ってきた。
中にはお父様に関しての不満を書いたこともあるが、ほとんどがロランとの事だ。

私にとっての大切な思い出がこの日記には詰まっている。
それを勝手に覗かれて腹が立ち、持っている日記を床に叩きつけようかと一瞬思ってしまったが直ぐに思い留まった。
これは私にとっては大切なものだ。
それを私の手で傷付けたりなんてしたくない。

「私、どうしたらいいんだろう……」

ロランのことは好き。
ずっと手の届かない存在だと思っていたし、ロランにはずっと思っている存在がいることも知っていた。
いつもシャルロッテ様のことを見つめる瞳は切なかった。

二人が婚約したと知った時、ロランの思いが成就したのだから喜ぶべきことなのだとは思う。
だけど私にはどうしてもそれが出来なかった。

シャルロッテ様はジェラルド王子の事が好きだったのに、ダメになってすぐにロランとの婚約が決まった。
家の問題が大いに関わっていることは分かっているが、それでも素直に喜ぶなんて私には出来なかった。

私だってずっとロランのことを思っていたのに、身分の差があるだけでその思いを告げる事すら出来ない。
きっと私はシャルロッテ様が羨ましかったのだと思う。
そして同時に憎らしかった。

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