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第二章
69.譲れないもの
私達が教室に戻ると奥にロランの姿を見つけた。
ロランは私達に気付くとこちらに近づいて来る。
「シャル、ごめん」
ロランは私の顔を見るなり、気まずそうな顔で突然謝ってきた。
心当たりがあり過ぎて、私は返答出来ずにいた。
(ロランは一体何を謝っているんだろう。今日のお昼にルチアさんと過ごしたことかな。ロランも私をほったらかしにしていることを悪いと思い始めたとか?)
「今日の放課後一緒に王都に行こうって話していたけど、急に予定が出来てしまったんだ。悪い、別の日に必ず埋め合わせはするから」
「は?……なんで?」
思いも寄らなかった内容に頭が付いていかず、私の思考は一瞬止まってしまった。
(何を言っているの?ロランから誘って来たくせに。まさか、放課後もまたルチアさんと……?)
「理由は、その……悪い。ここではちょっと……」
ロランは周囲に視線を巡らせ、困ったように呟いた。
その態度を見ていると次第に腹が立ってくる。
「もしかして、またルチアさん?」
「……ああ」
私がムッとした顔で不満そうにルチアの名前を出すと、ロランは気まずそうに視線を下に落とした。
「ロラン、さすがにそれは酷くはないか?自分で誘っておいて、婚約者でも無い女を優先するつもりなのか?」
「……それは」
ジェラルドに指摘され、更にロランは表情を重くさせる。
私はロランの手をぎゅっと握ると、ジェラルドの方に視線を向けた。
「ジェラルド、ごめん。私ちょっとロランと話してくる。さすがにここでは話しにくいし」
この場では私もロランも言いたいことを素直に伝えることが出来ない。
だから場所を変えることにした。
ジェラルドは「いってらっしゃい」と見送ってくれた。
私はロランが逃げないようにきつく手を握りながら、教室を出て人通りのない廊下へと向かった。
***
「シャル、怒ってる……よな」
私が足をピタッと止めてから暫くすると、ロランの弱々しい声が響く。
「当然でしょ!私の方が約束したの先だった」
ロランから誘ってきたのだから、それは間違いないはずだ。
約束をすっぽかそうとしているのだから怒るのは当然のことだと思うし、一々そんなことを聞いてくるロランに腹が立つ。
「そうだよな。俺が誘ったのに、本当にごめん」
「謝るくらいなら、今日は私を選んでよ。久しぶりにロランと一緒に王都に行けるの、すごく楽しみにしてたんだよ」
「シャル……」
「ロランがルチアさんのことを助けようとしているのは分かるけど、ちょっと深入りし過ぎだと思う。資金援助出来たなら、もう放っておけばいいじゃない」
どうして、ロランはそこまでルチアのことを気にするのだろう。
ロランにとっての一番は私ではなかったの?
大切にするって言ってくれたあの言葉は嘘だったの?
自分が嫌なことを言っているのは分かっている。
こんな風に言ったら、嫌われてしまうかもしれないことも十分理解している。
だけど抑えられなかった。
最近私はいつも我慢ばかり強いられていた。
目の前でロランが他の子と仲良くする姿を見て、嫉妬してしまうのも婚約者なのだから当然だろう。
「俺はルチアに借りがあるんだ。だからもう少しだけ時間をくれないか」
「……それって、まだ私に我慢しろってこと?」
私の言葉を聞いてロランは顔を歪めた。
「嫌よ!もう我慢するのは嫌だわ!」
「シャル……」
「今日はルチアさんとどこに行くの?」
「なんでそんなことを聞くんだ?」
「私も付いて行くから」
「は?何言ってるんだ?」
「だから、私も行くって言ったの。元々今日は私の方が先約だったはずよ。それなのにロランが勝手に約束を破った。悪いのはロランじゃない」
「……っ」
「だから私に付いて行く権利はあるわ。それに私はロランの婚約者なんだし。ルチアさんに何か言われたら、私が強引に付いて来たって言えば良いわ」
「随分強引だな……」
ロランは苦笑していた。
困らせていることは分かっているが、引くつもりも無かった。
私はムッとした顔でロランのことを睨み付ける。
「そうよ、私は強引なの。ロランだって私の性格は良く知っているでしょ?絶対に引くつもりは無いから!」
「はぁ……、シャルには敵わないな。分かったよ。今回悪いのは本当に俺だからな。シャル、ごめんな。埋め合わせは別の機会にちゃんとするから」
「言っておくけど、簡単には許してあげないから。それに……」
(絶対にルチアさんなんかに、ロランを渡すつもりなんてないから)
私はロランの胸にぎゅっと抱きついた。
すると直ぐにロランは私の事を抱きしめ返してくれた。
久しぶりにロランの温もりを感じて私はどこかほっとしていた。
それに言いたいことを伝えたら、心もなんだかすっきり出来た気がする。
(ルチアさんに私達が仲が良いところ見せつけて、諦めて貰うっていうのも手かな。あの子、絶対にロランのこと狙ってそうだし)
結局押し切る形で、私も放課後付いて行くことになった。
ロランは私達に気付くとこちらに近づいて来る。
「シャル、ごめん」
ロランは私の顔を見るなり、気まずそうな顔で突然謝ってきた。
心当たりがあり過ぎて、私は返答出来ずにいた。
(ロランは一体何を謝っているんだろう。今日のお昼にルチアさんと過ごしたことかな。ロランも私をほったらかしにしていることを悪いと思い始めたとか?)
「今日の放課後一緒に王都に行こうって話していたけど、急に予定が出来てしまったんだ。悪い、別の日に必ず埋め合わせはするから」
「は?……なんで?」
思いも寄らなかった内容に頭が付いていかず、私の思考は一瞬止まってしまった。
(何を言っているの?ロランから誘って来たくせに。まさか、放課後もまたルチアさんと……?)
「理由は、その……悪い。ここではちょっと……」
ロランは周囲に視線を巡らせ、困ったように呟いた。
その態度を見ていると次第に腹が立ってくる。
「もしかして、またルチアさん?」
「……ああ」
私がムッとした顔で不満そうにルチアの名前を出すと、ロランは気まずそうに視線を下に落とした。
「ロラン、さすがにそれは酷くはないか?自分で誘っておいて、婚約者でも無い女を優先するつもりなのか?」
「……それは」
ジェラルドに指摘され、更にロランは表情を重くさせる。
私はロランの手をぎゅっと握ると、ジェラルドの方に視線を向けた。
「ジェラルド、ごめん。私ちょっとロランと話してくる。さすがにここでは話しにくいし」
この場では私もロランも言いたいことを素直に伝えることが出来ない。
だから場所を変えることにした。
ジェラルドは「いってらっしゃい」と見送ってくれた。
私はロランが逃げないようにきつく手を握りながら、教室を出て人通りのない廊下へと向かった。
***
「シャル、怒ってる……よな」
私が足をピタッと止めてから暫くすると、ロランの弱々しい声が響く。
「当然でしょ!私の方が約束したの先だった」
ロランから誘ってきたのだから、それは間違いないはずだ。
約束をすっぽかそうとしているのだから怒るのは当然のことだと思うし、一々そんなことを聞いてくるロランに腹が立つ。
「そうだよな。俺が誘ったのに、本当にごめん」
「謝るくらいなら、今日は私を選んでよ。久しぶりにロランと一緒に王都に行けるの、すごく楽しみにしてたんだよ」
「シャル……」
「ロランがルチアさんのことを助けようとしているのは分かるけど、ちょっと深入りし過ぎだと思う。資金援助出来たなら、もう放っておけばいいじゃない」
どうして、ロランはそこまでルチアのことを気にするのだろう。
ロランにとっての一番は私ではなかったの?
大切にするって言ってくれたあの言葉は嘘だったの?
自分が嫌なことを言っているのは分かっている。
こんな風に言ったら、嫌われてしまうかもしれないことも十分理解している。
だけど抑えられなかった。
最近私はいつも我慢ばかり強いられていた。
目の前でロランが他の子と仲良くする姿を見て、嫉妬してしまうのも婚約者なのだから当然だろう。
「俺はルチアに借りがあるんだ。だからもう少しだけ時間をくれないか」
「……それって、まだ私に我慢しろってこと?」
私の言葉を聞いてロランは顔を歪めた。
「嫌よ!もう我慢するのは嫌だわ!」
「シャル……」
「今日はルチアさんとどこに行くの?」
「なんでそんなことを聞くんだ?」
「私も付いて行くから」
「は?何言ってるんだ?」
「だから、私も行くって言ったの。元々今日は私の方が先約だったはずよ。それなのにロランが勝手に約束を破った。悪いのはロランじゃない」
「……っ」
「だから私に付いて行く権利はあるわ。それに私はロランの婚約者なんだし。ルチアさんに何か言われたら、私が強引に付いて来たって言えば良いわ」
「随分強引だな……」
ロランは苦笑していた。
困らせていることは分かっているが、引くつもりも無かった。
私はムッとした顔でロランのことを睨み付ける。
「そうよ、私は強引なの。ロランだって私の性格は良く知っているでしょ?絶対に引くつもりは無いから!」
「はぁ……、シャルには敵わないな。分かったよ。今回悪いのは本当に俺だからな。シャル、ごめんな。埋め合わせは別の機会にちゃんとするから」
「言っておくけど、簡単には許してあげないから。それに……」
(絶対にルチアさんなんかに、ロランを渡すつもりなんてないから)
私はロランの胸にぎゅっと抱きついた。
すると直ぐにロランは私の事を抱きしめ返してくれた。
久しぶりにロランの温もりを感じて私はどこかほっとしていた。
それに言いたいことを伝えたら、心もなんだかすっきり出来た気がする。
(ルチアさんに私達が仲が良いところ見せつけて、諦めて貰うっていうのも手かな。あの子、絶対にロランのこと狙ってそうだし)
結局押し切る形で、私も放課後付いて行くことになった。
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