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第二章
72.不安と安心感
ロランはルチアを迎えに行くために一度私達と離れ、私とジェラルドは先に馬車へと乗り込むことになった。
なにか胸騒ぎを感じているのか、私の心拍数は正常では無かった。
バクバクと普段よりも早い速度で動き、落ち着きがなさそうに態度もそわそわとしていた。
「シャル、大丈夫?」
隣からジェラルドの声が響いてきて、私は視線をそちらに向けた。
今の私は戸惑いから弱々しい表情をしているのかもしれない。
ジェラルドはそんな私の姿を捉えて「大丈夫」と優しい声で問いかける。
見知った者の存在に、私は少しだけ安心した。
「ジェラルド、一緒に来てくれてありがとう。正直、私一人だったらどうしていいのかわからなくなっていたかも。強引に付いてきたのに……」
「シャルが弱音を吐くなんて珍しいね」
「そんなこと、ないよ」
「そう?少なくとも僕の前ではあまり弱い姿を見せたことは無かったよね」
「それはっ……」
たしかにジェラルドの前ではいつも強がっていたような気がする。
ジェラルドは意地悪な言い方をしてくるから、つい言い返してしまう癖がある。
だけど、いくら私が強がっていても、ジェラルドはいつも私のことをちゃんと見ていてくれた。
何を言っても怒らないで許してくれる、彼に対してはそんな甘えを持っていたのだと思う。
「そうさせているのがロランだと思うと気に入らない部分もあるけど、本気で悄げてるシャルの姿は見たくないからね」
「ジェラルド……」
「シャルをいじめていいのは僕だけだと今でも思っているからね。他の人間に困惑させられている姿はあまりみたくない、っていうのが本音かな」
「……もうっ!」
ジェラルドの言葉にじーんと胸が熱くなったのに、意地悪なことを言われてついムッとした顔を向けてしまう。
私が眉間に皺を寄せていると、ジェラルドの指が額に触れた。
「ふふっ、シャルのその顔、結構好きだよ。だけどそんなに怖い顔を見せたら、彼女驚いてしまうかもしれないよ」
「私、そんなに怖い顔してる?」
私はジェラルドの指を剥がして、眉間に皺が寄っていないのか触って確かめていた。
するとジェラルドは「冗談だよ」とにこにこしながら言ってきた。
「……っ!!」
「簡単に騙されてしまうシャルはまだまだだね」
「もうっ!ジェラルドの意地悪っ!」
「またそんな顔をして」
「あ……」
ジェラルドは完全に私のことを弄んでいる。
だけど先程の不安は幾分か消えていて、少しだけ心にゆとりが出来ていた。
不意にジェラルドの掌が私の手に重なる。
それに気付きジェラルドの方に視線を向けると、見守るような優しい顔で見つめられていた。
「大丈夫。シャルは普段通りでいたらいい。今は僕も付いているし、ロランだっている。シャルが不安を感じそうになったら、いつでも助けてあげるから。もうそんなに暗い顔なんてする必要はないよ」
「……うん」
ジェラルドのおかげで私は普段の自分に戻れることが出来た。
そして本来の目的を思い出した。
私が今ここにいるのは、全ての決着を付けるためだ。
その為に私はロランに付いてきた。
「どうらや、来たみたいだね」
窓の奥を見つめているジェラルドに気付き、私も覗いた。
そこには並んで歩いて来る、ロランとルチアの姿があった。
私はその光景を視界に収めて、掌をぎゅっと握りしめた。
なにか胸騒ぎを感じているのか、私の心拍数は正常では無かった。
バクバクと普段よりも早い速度で動き、落ち着きがなさそうに態度もそわそわとしていた。
「シャル、大丈夫?」
隣からジェラルドの声が響いてきて、私は視線をそちらに向けた。
今の私は戸惑いから弱々しい表情をしているのかもしれない。
ジェラルドはそんな私の姿を捉えて「大丈夫」と優しい声で問いかける。
見知った者の存在に、私は少しだけ安心した。
「ジェラルド、一緒に来てくれてありがとう。正直、私一人だったらどうしていいのかわからなくなっていたかも。強引に付いてきたのに……」
「シャルが弱音を吐くなんて珍しいね」
「そんなこと、ないよ」
「そう?少なくとも僕の前ではあまり弱い姿を見せたことは無かったよね」
「それはっ……」
たしかにジェラルドの前ではいつも強がっていたような気がする。
ジェラルドは意地悪な言い方をしてくるから、つい言い返してしまう癖がある。
だけど、いくら私が強がっていても、ジェラルドはいつも私のことをちゃんと見ていてくれた。
何を言っても怒らないで許してくれる、彼に対してはそんな甘えを持っていたのだと思う。
「そうさせているのがロランだと思うと気に入らない部分もあるけど、本気で悄げてるシャルの姿は見たくないからね」
「ジェラルド……」
「シャルをいじめていいのは僕だけだと今でも思っているからね。他の人間に困惑させられている姿はあまりみたくない、っていうのが本音かな」
「……もうっ!」
ジェラルドの言葉にじーんと胸が熱くなったのに、意地悪なことを言われてついムッとした顔を向けてしまう。
私が眉間に皺を寄せていると、ジェラルドの指が額に触れた。
「ふふっ、シャルのその顔、結構好きだよ。だけどそんなに怖い顔を見せたら、彼女驚いてしまうかもしれないよ」
「私、そんなに怖い顔してる?」
私はジェラルドの指を剥がして、眉間に皺が寄っていないのか触って確かめていた。
するとジェラルドは「冗談だよ」とにこにこしながら言ってきた。
「……っ!!」
「簡単に騙されてしまうシャルはまだまだだね」
「もうっ!ジェラルドの意地悪っ!」
「またそんな顔をして」
「あ……」
ジェラルドは完全に私のことを弄んでいる。
だけど先程の不安は幾分か消えていて、少しだけ心にゆとりが出来ていた。
不意にジェラルドの掌が私の手に重なる。
それに気付きジェラルドの方に視線を向けると、見守るような優しい顔で見つめられていた。
「大丈夫。シャルは普段通りでいたらいい。今は僕も付いているし、ロランだっている。シャルが不安を感じそうになったら、いつでも助けてあげるから。もうそんなに暗い顔なんてする必要はないよ」
「……うん」
ジェラルドのおかげで私は普段の自分に戻れることが出来た。
そして本来の目的を思い出した。
私が今ここにいるのは、全ての決着を付けるためだ。
その為に私はロランに付いてきた。
「どうらや、来たみたいだね」
窓の奥を見つめているジェラルドに気付き、私も覗いた。
そこには並んで歩いて来る、ロランとルチアの姿があった。
私はその光景を視界に収めて、掌をぎゅっと握りしめた。
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ぷー様
感想ありがとうございます(o*。_。)oペコッ
この話は少し特殊な(3Pや寝取られ要素がある)設定だったので、敢えて残念そうなツンデレ寄りの主人公にしました。
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ジェラルドかっこイイ。
他の読者のみなさまの感想を読みながら共感したり、そんな見方もあるなぁと感心したりで楽しいです。
fioretta7様
感想ありがとうございます(o*。_。)oペコッ
ロランはダメなキャラになりつつありますよね(-_-;)
私も読者の方の感想を読ませて頂いて、なるほどーっと思う事が多いです。
暫く作品が止まってしまっていますが、読んで頂きありがとうございます。
ロランはやっぱり当て馬止まりかな。
正直ルチア程度に翻弄されるなんてガッカリ😮💨
ふじふじ様
感想ありがとうございます(o*。_。)oペコッ
当て馬っぽい雰囲気になってきてますよね💦
どちらにもフラフラしているのって一番嫌ですよね(-_-;)