ずっと好きだった人が親友の婚約者になった。応援したら粘着されたので逃げることにした【R18】

Rila

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第一部

11.救いの手①

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「「………っ!!」」
前も見ず走っていたら、通路を曲がった先で誰かとぶつかりそのまま転んでしまった。
私は立ち上ろうとしても足が震えてしまっていて上手く力が入らなかった。


「……アリア嬢?」
「……っ…ライズ…殿下…」
聞きなれた声に顔を上げるとそこにはライズがいた。
暗くて表情は良くわかないけど、声で分かった。

「うっ……っ…」
張りつめていた物が急に切れた気がして目からは涙がぼろぼろ溢れた。
そんな私の異変にライズも気付いた様だった。

「なにかあったの…?大丈夫?」
「……っ…はいっ…」
ライズは心配そうに私の傍に寄り声を掛けてくれた。


その時だった。

「アリア…そこにいるのか?」
先の通路から声が響き、足音がこちらに向いて近づいて来る。
その瞬間、手の震えが止まらなくなった。

どうしよう…見つかった!
逃げないといけないのに、足に力が入らなくて立てない。

今のローレンは私の知ってるローレンではない。
まるで別人だった。

あの鋭い冷たい瞳も、口調も…
狂気を感じさせる異様な雰囲気も怖くてたまらない。


「アリア嬢…大丈夫?」
「……逃げなきゃっ…」
「え…?」
明らかに動揺している私にライズも気付き、それが誰に対して怯えているのかライズも理解した様だった。
ライズは先の方に視線を向けた。

「アリア、急にいなくなるなんて酷いじゃないか」
目の前に現れたローレンは何食わぬ顔をしていた。

「アリア嬢に何かしたのか…?」
「ライズ…殿下ですか…?まさか…。別に何もしてないですよ。ただ少しふざけていただけです。もう暗いし…アリア一緒に帰ろう」
ローレンは少し困った様にライズに説明すると、私の前に手を差し出した。
私はそれを見て首を横に振った。

「アリア、もう外は真っ暗だよ。アリアのご両親だって心配する、早く帰ろう。俺が送って行くって約束しただろう」
そう言うとローレンは私の手を強引に引っ張ろうとした。
その時、ライズがローレンの腕を掴み制止させた。

「アリア嬢は嫌がってるのではないのか…?」
「嫌がってるのではなく拗ねてるだけです。アリア、ライズ殿下まで困らせてどうするんだ?帰ったらちゃんと話を聞いてあげるから今は大人しく帰ろう。殿下そろそろ手を離してはもらえませんか?」
ローレンはあたかも私が我儘を言ってるだけの様な話しぶりをした。

「アリア嬢は僕が家まで送り届ける。アリア嬢…それでいいかな?」
ライズの言葉が救いの様に見えて私は大きく首を縦に振った。

「アリア嬢も納得しているみたいだし、今日は僕に任せてもらえないか?」
「………」
ライズは言葉には出してはいないものの『これは命令だ』と言うように強い口調で言った。
さすがにローレンも何も言えなくなり、私の手を解放した。

「安心してください。アリア嬢は僕が責任を持って家まで送り届けますから…」
「……お願いします」
ライズがローレンにそう言うと、ローレンは小さい声でそう言葉を返してその場を去って行った。


ローレンが居なくなったのを確認するとほっとした。

「もう大丈夫だよ…」
「……っ…ライズ殿下っ…本当に…ありがとうございます」
私は地べたに座りながら頭を下げた。
ライズは私の頭を宥める様に優しく撫でてくれた。

「さぁ、帰ろうか。外はもう真っ暗だよ」
「はい…」

ライズは私が立つのを手伝ってくれて、落ち着く様にずっと手を繋いでくれていた。
そしてライズは何も聞かずに私と一緒に出口の方へと向かって歩いた。
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