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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
59.不安事①
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唇が離れると、そのまま腕の中に抱きしめられた。
エルネストの体温がとても心地良く感じる。
こんな風に心が穏やかに感じるのは、どれくらい振りだろうか。
(気持ちいい……。ずっとこうしていたくなる。やっぱり私、エルネスト様のことが好きなのかな)
自分に問いかけるように心の中で呟いた。
エルネストの気持ちを知ることが出来て嬉しかったが、今まで以上に私の頭を悩ませる問題が増えたことは間違いないだろう。
今一番気がかりなことは、他でもないイルメラのことだ。
明日は彼女の屋敷に出向かなければならない。
本当は行きたくないけど、強引に話を進められて私は断ることが出来なかった。
普通に考えて、初めて話した人間を屋敷に招待するなんてどう考えてもおかしい。
しかも相手は公爵令嬢だ。
唯一の救いがあるとすれば、イリアも一緒だと言うことくらいだろう。
恐らく、私を呼んだ理由はミレーユの件だけでは無いと思っている。
今朝のエルネストとのやり取りを、その場にいたイルメラは目撃していたはずだ。
私達の関係を疑って、それを問い詰める為に呼んだ可能性も無いとは言えない。
もしそうだとすれば、かなり厄介なことになりそうだ。
(どうしよう。こんなことになっちゃったけど、イルメラ様にはなんて説明したらいいんだろう)
「――シア」
(本当の事を言ったら、イルメラ様怒るかな。きっと怒るよね……。私、イルメラ様がどんな人か良く知らないし、怖いな。行きたくないけど、約束しちゃったし今更断れないよね)
「フェリシア」
「……っ!?」
私は考え事に没頭していて、エルネストの呼びかけに気付かなかった。
何度目かに名前を呼ばれていることに気付くと、ハッとして顔を上げた。
「こんな時に考え事か?私の腕の中で、私以外のことを考えていたのだとしたら妬けるな」
「……っ、ごめんなさいっ」
エルネストは不満そうな顔を浮かべていたので、私は慌てるように咄嗟に謝った。
するとエルネストは目を細めた。
「謝るってことは認めるのか?」
「えっと……あの、それはっ……」
エルネストはじっと私の瞳を覗いてくるので、しろどもどろになりながら必死に誤魔化そうとしていた。
しかし鋭いエルネストの瞳の前では、その場しのぎの嘘は通用しないような気がした。
「フェリシアって本当に誤魔化すのが下手だな。だけどその焦った姿も可愛い」
「……っ」
エルネストは小さく笑うと私の額にそっとキスを落として、再び私の瞳をじっと見つめた。
「私には話せないことか?」
「た、大したことではありませんので」
「それならば話しても問題ないよな?」
「……っ、話したらエルネスト様を困らせてしまうかもしれませんっ!」
「だったら尚更聞きたいが?」
「……でもっ」
私が戸惑っていると「フェリシア」と名前を呼ばれた。
どうしていいのか分からなくて、私は眉を寄せて困った表情を見せることしか出来ない。
今回の事は私が断れなかったのだから、自分で解決するべき問題だと思っている。
なんでもかんでもエルネストに頼ってしまうのは良くないことだ。
それに内容がミレーユの話なので、エルネストに話してしまっていいのかも悩んでしまう。
下手をすれば不敬罪に問われるかもしれないからだ。
(エルネスト様は、王女殿下の事を嫌っているんだよね。それなら話しても大丈夫かな。……やっぱりだめ! いつも私は巻き込んでばかりいる気がするし、今回は自分で解決しなきゃ)
「またそうやって、君は一人で悩むつもりか?」
「え?」
「目の前には君の力になりたいと思ってる人間がいるのに、その存在を無視するんだな?」
「ち、違っ!」
「どう違うの?」
「それはっ……」
質問を繰り返すエルネストの顔からは、怒っている感情は一切無く、穏やかな表情をしていた。
厳しい言葉を述べているのに、その声はとても優しく、だけど私を徐々に追いつめていく。
「それは?」
「エルネスト様は、本当に意地悪な人ですね」
「フェリシアが素直に話してくれないからね。それに随分思い詰めた表情に見えた。私の腕に抱かれながらそんな表情をするなんて、本当に意地悪なのはどっちなんだろうな」
「……っ!!」
「なんてな。今のは冗談だけど、悩み事があるのなら、話して欲しいというのは本当だ。無理強いはしない。でもフェリシアの力になりたいという気持ちはいつだって変わらないよ」
「…………」
エルネストの言葉に心が揺れた。
彼は間違いなく私の味方でいてくれる人間だ。
私がいくら頑張ったとしても、出来ることは精々誤魔化すことくらいだろう。
伯爵家の私が、公爵令嬢に敵うなんて絶対にないのだから。
それに王家が動いている以上、遅かれ早かれその事実は公に出てしまうはずだ。
私がやろうとしていることは、ただ問題を後回しにして、その場しのぎをしようとしているに過ぎない。
それに騙してるみたいで、気が咎めてしまう。
良いことなんて何もない事は分かっているけど、他にどうしたらいいのか正直分からない。
婚約の話は保留にしてもらっているので、今はまだ伏せておきたい。
心の中がもやもやして、とても嫌な気分だった。
エルネストに話してしまえば、幾分かは楽になれるかもしれない。
結局私は楽な道を選んでしまう。
「わかりました。お話します。でも、私の話は聞き流してください」
「内容にも寄るけど、分かったよ」
私は最後まで迷っていたが、話さない限りエルネストは折れてくれそうも無かったので仕方なく話す事にした。
本当は、そういう言い訳が欲しかっただけなのかもしれない。
エルネストの体温がとても心地良く感じる。
こんな風に心が穏やかに感じるのは、どれくらい振りだろうか。
(気持ちいい……。ずっとこうしていたくなる。やっぱり私、エルネスト様のことが好きなのかな)
自分に問いかけるように心の中で呟いた。
エルネストの気持ちを知ることが出来て嬉しかったが、今まで以上に私の頭を悩ませる問題が増えたことは間違いないだろう。
今一番気がかりなことは、他でもないイルメラのことだ。
明日は彼女の屋敷に出向かなければならない。
本当は行きたくないけど、強引に話を進められて私は断ることが出来なかった。
普通に考えて、初めて話した人間を屋敷に招待するなんてどう考えてもおかしい。
しかも相手は公爵令嬢だ。
唯一の救いがあるとすれば、イリアも一緒だと言うことくらいだろう。
恐らく、私を呼んだ理由はミレーユの件だけでは無いと思っている。
今朝のエルネストとのやり取りを、その場にいたイルメラは目撃していたはずだ。
私達の関係を疑って、それを問い詰める為に呼んだ可能性も無いとは言えない。
もしそうだとすれば、かなり厄介なことになりそうだ。
(どうしよう。こんなことになっちゃったけど、イルメラ様にはなんて説明したらいいんだろう)
「――シア」
(本当の事を言ったら、イルメラ様怒るかな。きっと怒るよね……。私、イルメラ様がどんな人か良く知らないし、怖いな。行きたくないけど、約束しちゃったし今更断れないよね)
「フェリシア」
「……っ!?」
私は考え事に没頭していて、エルネストの呼びかけに気付かなかった。
何度目かに名前を呼ばれていることに気付くと、ハッとして顔を上げた。
「こんな時に考え事か?私の腕の中で、私以外のことを考えていたのだとしたら妬けるな」
「……っ、ごめんなさいっ」
エルネストは不満そうな顔を浮かべていたので、私は慌てるように咄嗟に謝った。
するとエルネストは目を細めた。
「謝るってことは認めるのか?」
「えっと……あの、それはっ……」
エルネストはじっと私の瞳を覗いてくるので、しろどもどろになりながら必死に誤魔化そうとしていた。
しかし鋭いエルネストの瞳の前では、その場しのぎの嘘は通用しないような気がした。
「フェリシアって本当に誤魔化すのが下手だな。だけどその焦った姿も可愛い」
「……っ」
エルネストは小さく笑うと私の額にそっとキスを落として、再び私の瞳をじっと見つめた。
「私には話せないことか?」
「た、大したことではありませんので」
「それならば話しても問題ないよな?」
「……っ、話したらエルネスト様を困らせてしまうかもしれませんっ!」
「だったら尚更聞きたいが?」
「……でもっ」
私が戸惑っていると「フェリシア」と名前を呼ばれた。
どうしていいのか分からなくて、私は眉を寄せて困った表情を見せることしか出来ない。
今回の事は私が断れなかったのだから、自分で解決するべき問題だと思っている。
なんでもかんでもエルネストに頼ってしまうのは良くないことだ。
それに内容がミレーユの話なので、エルネストに話してしまっていいのかも悩んでしまう。
下手をすれば不敬罪に問われるかもしれないからだ。
(エルネスト様は、王女殿下の事を嫌っているんだよね。それなら話しても大丈夫かな。……やっぱりだめ! いつも私は巻き込んでばかりいる気がするし、今回は自分で解決しなきゃ)
「またそうやって、君は一人で悩むつもりか?」
「え?」
「目の前には君の力になりたいと思ってる人間がいるのに、その存在を無視するんだな?」
「ち、違っ!」
「どう違うの?」
「それはっ……」
質問を繰り返すエルネストの顔からは、怒っている感情は一切無く、穏やかな表情をしていた。
厳しい言葉を述べているのに、その声はとても優しく、だけど私を徐々に追いつめていく。
「それは?」
「エルネスト様は、本当に意地悪な人ですね」
「フェリシアが素直に話してくれないからね。それに随分思い詰めた表情に見えた。私の腕に抱かれながらそんな表情をするなんて、本当に意地悪なのはどっちなんだろうな」
「……っ!!」
「なんてな。今のは冗談だけど、悩み事があるのなら、話して欲しいというのは本当だ。無理強いはしない。でもフェリシアの力になりたいという気持ちはいつだって変わらないよ」
「…………」
エルネストの言葉に心が揺れた。
彼は間違いなく私の味方でいてくれる人間だ。
私がいくら頑張ったとしても、出来ることは精々誤魔化すことくらいだろう。
伯爵家の私が、公爵令嬢に敵うなんて絶対にないのだから。
それに王家が動いている以上、遅かれ早かれその事実は公に出てしまうはずだ。
私がやろうとしていることは、ただ問題を後回しにして、その場しのぎをしようとしているに過ぎない。
それに騙してるみたいで、気が咎めてしまう。
良いことなんて何もない事は分かっているけど、他にどうしたらいいのか正直分からない。
婚約の話は保留にしてもらっているので、今はまだ伏せておきたい。
心の中がもやもやして、とても嫌な気分だった。
エルネストに話してしまえば、幾分かは楽になれるかもしれない。
結局私は楽な道を選んでしまう。
「わかりました。お話します。でも、私の話は聞き流してください」
「内容にも寄るけど、分かったよ」
私は最後まで迷っていたが、話さない限りエルネストは折れてくれそうも無かったので仕方なく話す事にした。
本当は、そういう言い訳が欲しかっただけなのかもしれない。
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