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幸せをつかんだこの手
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「ただいま~」
「幸子!あんた何時だと思って…」
「はいはい、ごめんごめん…」
「待ちなさい!まだ話は終わって…」
夜11時を過ぎた時間に帰宅した私を怒鳴る母。
いい加減ウザイ。
成人した娘に門限とかふざけてるとしか思えない。
「こら待ちなさい!」
「うるさいなぁ…」
「あんたって子は!親に向かって何て口を…」
私は母を無視して自室へ逃げ込む。
部屋だけは私の領域だ、入ったらやり返すのは母も知ってるのでここだけは足を踏み入れない。
「……!!!」
ドアの向こうで叫ぶ声が聞こえているが被せるように大音量で曲を流せば諦めて去ってった。
近所迷惑を考えての事だろうが世間体ばっかり考えてる証拠だ。
「ちっ」
舌打ちを一つして音楽を止めた。
「なんでこうなっちゃったんだろうな…」
シャワーの音に呟きは消される。
もうすぐこの家を出ていく事を考えて昔を思い出す。
母親に連れられて行った新しい家…
『この人が新しいお父さんよ』
子供心にその台詞は母を拒絶するのに十分であった。
原因は分からない、ただ本当のお父さんとはその日以来会ってない。
二度と会えない訳じゃないのを分かるようになるまで私は全てを拒絶した。
その結果が今の私と母の関係…
「はぁ…」
体を拭きながらため息一つ、これからの生活に悩みは尽きないがきっと良くなると天井を見上げた時であった。
「ぎゃああああ!!!!!」
突然響いた叫び声。
慌ててタオルを巻いただけの私は飛び出した。
そして…
「お母…さん…?」
私の目に飛び込んできたのは背中に包丁が刺さって倒れている母とそこに居る男…
「鷲崎君…?!」
震えながら私の声に視線を向けた彼は大学の知り合いだった。
一歩下がる私にゆっくりと彼は手を伸ばして…
「ちっ違う…違うんだ…」
「ヒッ!?」
私は家を飛び出した。
体にバスタオルを巻いただけの格好で裸足でだ。
「誰か!助けて!お母さんが!!お母さんが!!!」
深夜の住宅街に私の声が響きあちこちの家の電気が点く。
そして、私は近くのコンビニに逃げ込み警察を呼んで貰った…
「もう大丈夫だからね…」
「はい…」
あれから数日、カウンセラーの言葉に私は小さく返事をする。
新しく暮らしているアパートに向かって歩く私の足取りは軽かった。
仲が悪かった母と会わないこれからの日々…
最後の最後に私にとっては最高のプレゼントだ。
「早くお父さんに会いたいな」
今度再会出来ることになった父が楽しみな私、鷲崎君には悪いけど感謝しないとね…
料理が得意だった彼の指紋が付着した包丁、いつもは夜勤で居ない筈の母、あの日は本当に最高の1日になった。
私の口の口角が上がる。
嫌いだった母、ウザイ男の両方を排除して保険金に慰謝料の両方を手に入れたのだからきっと私は悪どい顔をしているのだろう。
「お父さん私の見て喜んでくれるかな?」
手を見つめながら呟く。
母を刺した自分の手をいとおしく見つめる…
「こんな幸せな気持ちになれるなんて…生んでくれてありがとう、お母さん…」
あの日から感じる背中の視線に向けて私は小さく告げた…
何もできず、ただそこに在るだけの母だったと思われるそれに…
完
「幸子!あんた何時だと思って…」
「はいはい、ごめんごめん…」
「待ちなさい!まだ話は終わって…」
夜11時を過ぎた時間に帰宅した私を怒鳴る母。
いい加減ウザイ。
成人した娘に門限とかふざけてるとしか思えない。
「こら待ちなさい!」
「うるさいなぁ…」
「あんたって子は!親に向かって何て口を…」
私は母を無視して自室へ逃げ込む。
部屋だけは私の領域だ、入ったらやり返すのは母も知ってるのでここだけは足を踏み入れない。
「……!!!」
ドアの向こうで叫ぶ声が聞こえているが被せるように大音量で曲を流せば諦めて去ってった。
近所迷惑を考えての事だろうが世間体ばっかり考えてる証拠だ。
「ちっ」
舌打ちを一つして音楽を止めた。
「なんでこうなっちゃったんだろうな…」
シャワーの音に呟きは消される。
もうすぐこの家を出ていく事を考えて昔を思い出す。
母親に連れられて行った新しい家…
『この人が新しいお父さんよ』
子供心にその台詞は母を拒絶するのに十分であった。
原因は分からない、ただ本当のお父さんとはその日以来会ってない。
二度と会えない訳じゃないのを分かるようになるまで私は全てを拒絶した。
その結果が今の私と母の関係…
「はぁ…」
体を拭きながらため息一つ、これからの生活に悩みは尽きないがきっと良くなると天井を見上げた時であった。
「ぎゃああああ!!!!!」
突然響いた叫び声。
慌ててタオルを巻いただけの私は飛び出した。
そして…
「お母…さん…?」
私の目に飛び込んできたのは背中に包丁が刺さって倒れている母とそこに居る男…
「鷲崎君…?!」
震えながら私の声に視線を向けた彼は大学の知り合いだった。
一歩下がる私にゆっくりと彼は手を伸ばして…
「ちっ違う…違うんだ…」
「ヒッ!?」
私は家を飛び出した。
体にバスタオルを巻いただけの格好で裸足でだ。
「誰か!助けて!お母さんが!!お母さんが!!!」
深夜の住宅街に私の声が響きあちこちの家の電気が点く。
そして、私は近くのコンビニに逃げ込み警察を呼んで貰った…
「もう大丈夫だからね…」
「はい…」
あれから数日、カウンセラーの言葉に私は小さく返事をする。
新しく暮らしているアパートに向かって歩く私の足取りは軽かった。
仲が悪かった母と会わないこれからの日々…
最後の最後に私にとっては最高のプレゼントだ。
「早くお父さんに会いたいな」
今度再会出来ることになった父が楽しみな私、鷲崎君には悪いけど感謝しないとね…
料理が得意だった彼の指紋が付着した包丁、いつもは夜勤で居ない筈の母、あの日は本当に最高の1日になった。
私の口の口角が上がる。
嫌いだった母、ウザイ男の両方を排除して保険金に慰謝料の両方を手に入れたのだからきっと私は悪どい顔をしているのだろう。
「お父さん私の見て喜んでくれるかな?」
手を見つめながら呟く。
母を刺した自分の手をいとおしく見つめる…
「こんな幸せな気持ちになれるなんて…生んでくれてありがとう、お母さん…」
あの日から感じる背中の視線に向けて私は小さく告げた…
何もできず、ただそこに在るだけの母だったと思われるそれに…
完
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