異世界で音ゲー革命! 音楽ゲームが異世界に進出?!

昆布海胆

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第58話 日本語が分からないエミ!

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ドリーマーオーディション
2000年に稼動したジャ○コが開発した音ゲーでマイクに向かって歌う事でプレイできる音ゲーである!
収録曲は様々なジャンルから100曲程が収録され規定の条件で高得点を記録すると、芸能プロダクションの協力の元ジャ○コが主催するオーディションに参加できる。
それによりプロデビューが出来ると話題になった画期的な音ゲーであった。
だが実際にこのオーディションが開催されたという話は聞かなかった。
その一番の理由として考えられているのが環境であったと言われている・・・
音ゲーと言う事で設置されるのは勿論ゲームセンターに設置されるわけである。
特に今までシリーズ化されていない新作として発売された音ゲーなので購入する店舗は他の音ゲーを設置している店が多い。
そんな中、考えてみれば分かる事なのだが他の音ゲーが置かれている環境の中でマイクに向かって歌を歌ってその音感等を評価するゲーム。
例えばDDRの踏む音、例えばドラムの叩く音・・・
カラオケボックスではなく公共の場でむき出しのマイクが拾うのは周囲の音だというのは当たり前だろう。
結果、自らが歌っている歌声すらも霞む状況が多数の店舗で見られる上に通行人の前で歌を歌うと言う状況。
一般の方には敷居が高すぎたのであった・・・



「だが・・・この世界でなら・・・エミならきっと・・・」

ロクドーはエミが走っていった外を眺めながら口にしていた。
ロクドーは知っていたのだ。
メロディーがロクドーと一緒に居る時にエミが口ずさみながら歌っていたその歌声を聞いていたから・・・



その頃、城壁に元々奴隷たちを入れた檻を運ぶ台車でデリーマーオーディションを運んだエミは近くに居た休憩中の衛兵に声を掛けていた。

「お願いします!これを城壁の上まで運ぶのを手伝って下さい!」
「おうよ!エミさんの頼みなんだ!俺達の力を見せてやろうぜ!」

本来であれば数百キロもある筐体を持ち上げて階段を上がるのは不可能に近い。
人手の問題ではない、単純に重さの割りに手をかける箇所が少なくて無理なのだ。
だがこの世界の、特にコンマイ国の住人は音ゲーによって魔力が異状にまで鍛えられている。
彼ら一人一人が筋力強化の魔法を使用して交代しながら運ぶ事で不可能を可能としたのである!

「エミさん!このあたりで宜しいですか!」
「はい、ありがとうございます」

音ゲーを生み出し広げたロクドー、その側に常に一緒に居る美女であるエミに声を掛けられるなんて幸せすぎると内心考えながらも衛兵は真面目な顔をして会話を行なう!
そして、その音ゲーを使ってこれから何かをするエミを守ろうと数名がその場に残りエミを周囲を警護する!
まだ魔物は地上からしか攻めて来ていないが間違い無く空からもやって来る!
だからこそ城壁の上で何かをしようとするエミを守らねばならないと考えていたのだ。

「周囲の警護は任せて存分にやって下さい!」
「はいっ!」

筐体の向こうには夥しい数の魔物がこちらへ向かってきていた。
だが一切恐れる事無くエミは筐体の前に立ち両手を組んで腹部に宛がう。
そして、手を組んだまま指先をコイン投入口へ触れる。
光が満ちた!
空へ向けて♪の形をした光が幾つも浮かび上がり筐体の画面に曲がズラリと並ぶ!
勿論異世界であるこの世界の人間に日本語が読めるわけも無く曲が始まっても歌が歌えるわけがない。
だがエミには秘策が在った。

「スゥ・・・」

ゆっくりと息を吸い込むエミ。
そして彼女の口からマイクに向かって声が放たれる!

「♪~♪♪♪~♪♪♪♪♪~♪♪~♪♪♪~」

そこに歌詞は無かった。
だが表示される音程と音域にエミの声が重なりそれは筐体を通じて響き渡る!
そう、エミは・・・

「やっぱりエミならやってくれると思ったよ・・・」

ベットの上で聞こえてきた懐かしいその曲にロクドーはメロディーの言葉を思い出す。

『凄いね彼女、1回しか聞いてない曲を鼻歌で再現してるよ。あれって絶対音感持ってるわね、羨ましいわ~』

絶対音感・・・
それはある音(純音および楽音)を単独に聴いたときに、その音の高さ(音高)を記憶に基づいて絶対的に認識する能力である
単純に言うならば全ての音が全てドレミの音域で理解できる能力の事である。
そして、それは自らの口から発せられる声すらも音域が認識でき調整が出来ると言う事である。

ドリーマーオーディションでは筐体の画面に曲の歌詞とその音域が表示されており、マイクを通じて発した声がその音域に合っているかどうかで得点が評価される。
テレビ番組で歌っている人の声の音域と元の音域を合わせている番組を見た事があるだろう、あれがゲーム筐体で再現されているのだ。
つまり、そこに歌詞は乗っていなくても音域と長さが合っていれば採点の基準は満たされるのである!

「おおおおおお!!魔力が回復していく!!」
「私の剣が輝いているよ!」
「おい、見ろあれ!」

1人の冒険者が指差した先の光景に誰もが驚く。
こちらへ向かっている魔物の体から黒い靄が徐々に抜けながら空へ飛散していくのである。
エミの歌の効果、それはメロディーの歌のような直接的な効果はなかったが補助的な効果を確実に発揮していた。
魔物の魔力をその体から抜き出していたのである!

「よし!交代の時間だ!度周囲の敵を殲滅してコンマイ国の兵士達と交代するぞ!」

ナーヤと並んで戦っていたズーの宣言でコンマイ国の城門が開き兵士達が中央を開いて並び立つ!
その間を冒険者達が徐々に通り抜け交代を行なう!
そして、殿を務めるナーヤとズーの2人が中央に立ち2人で魔法を掛け合わせる!

「合わせるんだよアンタ!」
「うるせっお前が合わせろよ!」

口では言い合っているが二人共全力の魔力上限が殆ど等しく全力を出せば必然的に魔力が同じになる事を知っている。
夫婦の絆とも言える信頼関係が一切疑う事無く掛け合わせた魔法が正確に発動する事を理解していた。

「「いくぞ!グランドストーム!」」

周囲の魔物に向かって二人から放射状に風魔法が放たれる!
本来上空へ向かって形作る筈の竜巻が何本も水平に出現し地上に居る魔物達を巻き込んで押し戻す!
魔物同士がぶつかり合い押し付けられ潰される!
2人はこの後16時間はゆっくりと休める上に今もエミの歌で魔力が徐々に回復しているので安心して全力で魔法を放った!
そして、魔法が落ち着いたその時に城の周囲に生き残っている魔物は居なかった。

「よし、2人は下がれ!後は我々に任せろ!」

兵士の一人が叫びナーヤとズーは踵を返して城門を潜る。
既に戦闘開始から16時間、倒し賜物は1500を越えていた。
日が暮れても城の城壁に設置された明かりの魔法具で周囲が照らされ闇に紛れて攻める事も出来ない。
まさに鉄壁の守りとなったコンマイ国、このまま魔物が諦めるまで勝ち続けられると誰もがその時までは確信していた。

「さぁ次は我々が8時間この国を守る・・・ぞ・・・」

最初に気付いたのは一番前に立っていた兵士長であった。
遥か向かうに見えたそいつは地上ではなく空を飛んでいた。
距離がかなりあるにも関わらずその姿が目視できた事に言葉が詰まった兵士。
しかし、徐々にそれがこちらへ向かって来ている事で直ぐに他の者の視界にも入る。
そして、豆粒程の大きさだったそいつの姿が確認できて誰もが言葉を失った。
いや、兵士長だけは震えながらもその存在の名を口にしていた。

「ど・・・どら・・・ごん・・・ドラゴン・・・ドラゴンだ!」

漆黒の体に全長10メートルにも及びそうな巨体が空を飛びながらこちらへ向かってきていたのだ。
その下には様々な新たなる魔物の大群。
まさに先程までとは明らかに違いすぎる状況であった。

「なんで俺に変わった瞬間にこんな事になるんだよ・・・」

そう愚痴を言いつつも兵士長は城壁の上から聞こえるエミの歌を耳に捕らえ気合を入れなおす。

「やるしかねぇよな!」

響き渡る『PU○FY』の『渚にまつわる○トセトラ』をバックミュージックに武器を手に構える兵士達。
戦いはまだ始まったばかりであった・・・
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