異世界で音ゲー革命! 音楽ゲームが異世界に進出?!

昆布海胆

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第85話 DDRパフォーマンス大会 その14

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腕を組んだまま上体を反らし見下すようなポーズでフィニッシュを決めたナイト。
それはビートDJマニアのDJバトルで出てくるあの人であった。

「ぉぉ・・・おおお・・・おおおおおおお!!!!!」

惜しみない拍手は鳴り止まず、放心状態の審査員達。
それはそうだろう、魔力を使わずに肉体のみを駆使して魅せたパフォーマンスであったのだ。
身体能力強化すら使用していない動きだったのは明白で、それが如何に凄い事であるか理解に容易かったのだ。

「す、素晴らしいパフォーマンスでした!それでは審査員の皆さん得点をどうぞ!」

ロクドーの視線に気付き我に返った受付嬢が発する言葉で連鎖的に審査員達も得点をつけ始める!
既に最初の違和感を覚える程の雰囲気は何処にもない審査員達、帝国の皇帝がそこに居ると言う事を本人すらも忘れている状態であった。
それほどまでにエンターテイメント性のある娯楽が少ないこの世界で、DDRのパフォーマンスがどれ程の価値があるのか・・・
この場に居る者達はその幸運を実感していることであろう。

「お待たせしました!得点の発表です!ただ今の得点は・・・9点、8点、7点、10点、9点! 合計43点!」

ミスターMに続く暫定3位を獲得したナイト、決して低くないその得点に小さくガッツポーズが出た。
そして、受付嬢に一礼しナイトは筐体から降りて観客席へ・・・
鳴りやまない拍手の中、慣れた様子で受付嬢は続ける!

「それでは残るエントリーも残り2名となりました!続けていってみましょう!モニカ選手どうぞ!」

その名前が発表され拍手がピタッと鳴りやんだ。
いや、拍手が止められたのだ。

「騒がしいと曲が良く聞こえないのですわ」

そう口にして出てきたのは貴族の令嬢をイメージさせる一人の女であった。
クルクルカールの金髪を指先で弄びながら優雅な足取りで、筐体の上まで何時の間にか敷かれた赤い布の上を歩くモニカと呼ばれた女。
チラッと視線がロクドーの方を見て微笑み・・・

「セバス!」
「はっ!」

何時の間にか傍に老執事が立っていた。
一瞬も目を離していなかったにも関わらず気付けばそこに居たのだ。
その老執事は胸ポケットからメモリーカードを取り出して筐体に刺しこみスタートボタンを押した!

「ぷ・・・ぷはぁっ・・・」

誰かの口から息が吐き出され、それを合図に体が動くようになった観客達が肩の力を抜いた。
自らの体に起こった現象がモニカと呼ばれた女に起こされたのだと誰もが理解していた。
だが一体何をどうやったらそんな事が出来るのか全く理解できない、少なくともこの場に居る音ゲーを日常的にプレイしている者達は自由を奪う系の魔法は通用しない。
魔力が高すぎて耐性が出来ている筈なのだ。
その為、未知の力で自由を奪われていたのだと理解したのだ。

「ふむ・・・スキル使いか・・・」

その様子を審査員席で見ていたコンマイ国王が口にしてチラリと帝国皇帝を見る。
その視線に答えるように帝国皇帝はニヤリと口元を歪めうなづく。
この場でモニカの何かに抵抗出来たのはロクドー含む数名だけだったのだ。
審査員席にはその効果が及んでいなかったので5人は平静を保ったままである。

「それで、今のは宣戦布告と受け取っても?」

魔獣王ライオルが口にする、拍手を止めるのが目的であるならば観客席にいる者の呼吸まで止める必要が無い、そう考えた上での発言であった。
その言葉に帝国国王は鼻で小さく笑い口にする。

「いやいや、中々に面白い余興が続いているのでな。ちょっとしたサプライズだ」
「ほぅ・・・」

お前達を殺すだけであれば簡単に出来ると言わんばかりの行動を起こされたライオルであるが、ここはコンマイ国・・・
ここで手を出すのは得策ではない、それにスキルと呼ばれた未知の力をを見せられて興味は有るが、今戦えば抵抗することなく敗北するのは目に見えていた。
体と共に呼吸を強制的に止められるのだ、待つのは死のみである。
いくら戦闘狂と言われる魔獣王ライオルであっても勝ち目の全くない戦いをする気は無かった。

「えっと・・・それでは始めてもらっていいでしょうか?」

不穏な空気を感じ取った受付嬢は恐る恐る審査員達に尋ねる。
それに少し険しい感じの表情のままコンマイ国王はうなづき返した。

「では、モニカ選手準備が整いましたら始めて下さい!」
「えぇ、それでは皆々様。私のパフォーマンスをご堪能下さいませ」

そう言ってスカートの裾をつまんで小さく礼をしてセバスが曲をスタートさせる。
選ばれた曲は、ストリクトビジネスであった。


ストリクトビジネス:通称『マイケッシャ』
ラップがクールなややテンポの遅めなナンバー、横歩きが基本となるステップをマスターするのに初代ではお世話になった人も多い曲。
今では基本となっている踏み方を一番最初に取り入れた事で初期の頃は出来る人と出来ない人の差が大きく開いた曲である。
そして、後にDDRで一番最初に大人の事情で・・・


雰囲気から予想もできない曲が選ばれて固まる一同、それはそうであろうドレスの様な服装で一体どんなプレイをするのか・・・
そう考えていた矢先である、曲が流れているにも関わらずモニカは筐体から足を下ろしたのだ。

「セバス」
「お待たせいたしました」

何時の間にかそこにはティーセットを用意したセバスが立っていた。
筐体横には何時の間にかテーブルセットが用意されていた。
引かれたイスに座り湯気の上がるお茶を優雅に飲み始めるモニカ、その間も曲は流れ続けているのだが・・・

「えっと・・・」

受付嬢が困惑しながら口にする、それもそうであろう・・・
矢印が一個も上がってきていないのだ。
そしてそのまま曲の最後までお茶を飲んで過ごしたモニカ・・・
勿論矢印は一個も上がってこず画面にはCREAREDの文字・・・

呆然とする観客達を放置してお茶を飲み終えたモニカは立ち上がり客席へ帰って行く・・・
全く意味の分からない現状に何故か帝国国王一人が拍手をしているシュールな光景・・・
一体何がしたかったのか分からないまま放置されたテーブルセットを見つめて固まる受付嬢・・・

「えっと、終わり?」

誰かのその言葉にパフォーマンスが終わったのだと理解した会場の人々は一応といった感じで拍手を送る・・・
結局メモリーカードで使用されたEDITデータは矢印を一個も設置していないデータだったのだ。
こういったパフォーマンスも有りと言えばありなのかと最初に披露されたスキルとに困惑が隠せないまま審査員席では得点で記入されていた。

「えっと、ど、独特なパフォーマンス、モニカ選手ありがとうございました!」

そう言うしかないだろう、受付嬢は困惑する会場の空気を動かそうと口を動かした。
そして、審査員席から得点を受け取り発表する・・・

「えっと・・・ただ今の得点・・・2点、1点、10点、3点、2点! 合計18点!」

なんとぶっちぎりの最下位、だが何故かその得点に対して嬉しそうな帝国皇帝、唯一10点を入れているのが意味不明であった。
しかし、場の空気が一変したのは言うまでもないだろう・・・

「えっと、このテーブルセットはどうしましょうか・・・」

筐体横に設置されたテーブルセット、それをどうにかしようと考えた時であった。

「遅いですわ!とりあえず時間稼ぎはしておきましたから後はお願いしますわよ」
「分かってるって」

その会話と共に出てきたのは今パフォーマンスを披露し終えたモニカと一人の男性、そして後ろからそれに続くセバス。
セバスの手には一つの魔道具が持たれており、そのままテーブルの上にそれを置いた。

「えっと・・・あなたは?」
「あっすみません、準備に時間が掛かるので最後にパフォーマンスをやらせてもらうという事で主催者さんに頼んでいたのですよ」
「あっ・・・そうなんですね・・・」
「そうですわ!私の婚約者なんですから優勝する為の下準備をさせて貰っただけですわ!」

何故か横から態度の大きいモニカが先程のパフォーマンスに付いて発言する。
受付嬢は少しウザそうにそれをスルーして手元のエントリー表に目をやり名を発表する・・・

「そ、それでは本人の希望によりラストを飾るパフォーマンスを披露してくださいます・・・」

そのエントリー名に受付嬢が口ごもった・・・
それはそうだろう、この世界にそんな名前でエントリーする者が過去に居なかったからである。

「て・・・帝国過激団、ポポロ選手です!」

何故かタイミングよく水を口にしていたロクドーは盛大にその名を聞いて水を噴き出すのであった・・・
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