最弱最強の詐欺魔導師 本職はユーデューバー

昆布海胆

文字の大きさ
58 / 106

第57話 奴隷商はもうナナシの物

しおりを挟む
「ほ・・・本当に・・・自由・・・」
「俺は・・助かったのか・・・」

奴隷商で売り物とされていた奴隷達、実に130人が勢揃いしていた。
店の前で一斉に首輪が外されて、そこへナナシの声が響く。

「皆さん、今コノ時点を持って皆さんは自由です!ですがもしも行く充てが無いという方はもし宜しければ住み込みでこれから始める事を一緒に手伝ってもらえませんか?」

その言葉に殆どの奴隷だった者達はナナシを神の如く崇め始めた。
解散したい人は自由にしていいし、ナナシと共に何かを手伝えば生活が保障されると言う事なのである。
唯一奴隷の首輪を嵌められた元店主だけが怯えた目で人々を見ていた。
それはそうだろう、このままであれば勝手に魔石を埋め込まれて奴隷にされた復讐を行なう者が居るかもしれないのだ。

「それじゃ解散!」

そう言ってナナシは建物の中へ戻っていく・・・
解放された人々は互いに互いを見合わせどうするか悩んで話し合っている様子であった。
少しして自分達を助けてくれたナナシに恩返しをしたい、そう考えた1人の女性が一歩を踏み出しそれに次々と続いて80人程が建物の中へ戻り残りの50人は何処かへ去っていった。

「こんなに・・・本当助かるよ」

店内に戻った人々を待っていたナナシは嬉しそうに皆を歓迎し広間にて早速集会を開く事となった。
その間にリル達が残る人々の寝床に使える物やや着替えをナナシから預かったお金で購入に走り、スケさんは町の大工を呼びに出掛けていた。
そして、ナナシの話を聞いた人々はその内容に唖然としていた。
その内容とは・・・

「今日から最低でも週2回くらいのペースで皆で何か楽しい事をやってもらおうと思います。細かい事は何も言いません、互いにアイデアを出し合って皆さんで楽しいイベントやゲームを企画して実行して下さい」

は?
誰もがそんな顔をしていた。
それに一体どんな意味があるのか訳が分からない人々は首を傾げたり困った顔をしている。
生きる為には仕事をしなければならない、それはどの国でも同じで生活の為にお金を稼ぐと言うのもあるが税金を収める必要があるからだ。
そんな人々の困惑した感じを放置してナナシは早速声を上げた。

「この中で料理が出来ると言う人は手を挙げて下さい」

料理と言われ何処まで出来れば料理が出来ると言う事なのか分からず困る者が多いのだが幾つかの手が上がった。
やはりと言うか女性の比率が多いのはどの国でも同じなのだと納得した感じのナナシはその数名を前へ出させる。

「それじゃあ今日は料理をしようと思うから残りのメンバーで採点するって事で宜しく!題して・・・第1回料理対決!」

その言葉を待っていたかのようにナナシの指示で買い物に出ていたルリエッタが戻ってきた。
その手には様々な食材が袋に入れられておりソレが意味するのは・・・

「制限時間は1時間、それじゃ頑張って美味しい料理を作って下さい。挑戦者は5名なので優勝者には賞金として金貨5枚を進呈!」

その言葉に誰もが目を光らせて材料選びに取り掛かった。
そうしている間にスケさんが連れて来た大工の人と話し合うナナシ。
ナナシの提案で今後奴隷商はリフォームされてナナシの屋敷に改装される事となった。
店主はその内容に文句を言いたそうにしているがナナシの命令により声を出せないので諦めたのか呻き声を上げるのみであった・・・


そう、ナナシの行なった今回の計画それは・・・
サブチャンネル専用の動画撮影施設作成なのであった。
この施設で働く者達は一体どこからお金が出ているのか分からないのだが、衣食住がナナシによって提供されているので嬉々として毎日楽しい事をやろうと思案を巡らせいつしか町の住人も参加するアミューズメント施設へと進化していくのであった・・・
久々に戻ってきたナナシがソレを見て驚くのはまだまだ先の話である。







「くそっ!このペテン師め!町で1時間以内に金貨10枚なんて絶対に無理じゃないか!?」

今日の映像が撮れたので満足したナナシは店主から建物の権利を移してから解放していた。
既に無一文となった男はナナシに対して怒鳴るがその目を真っ直ぐに見てナナシは答える。

「別に簡単な事じゃないか、例えば武具屋で適当に購入して直ぐに買い取ってもらう、それを繰り返して最後の残った端数で飲み物でも購入すれば完了だろ?」
「なっ?!」

そう、ルールでは『使用に関しては物を購入した場合はそれを消費しきる必要がある』つまり購入した物は所持していては駄目と言うだけで購入する事自体は禁止されてはいなかったのだ。
ナナシのその案にぐうの音も出ない男は歯軋りをしながら去っていくナナシの後姿を見詰めていた。
そして、そんな男の背後に立つ数名の影・・・

「なっなんだお前たちは・・・やっやめっ・・・ぐげっ・・・」

それは奴隷商に恨みのある者だったのか・・・全ては闇の中であった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...