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新生活1
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ソイルヴェイユは、一つの枝全てが学舎の敷地であった。
そして、その敷地と建物全てを覆う巨大な結界が空中には張られており、学舎への出入は昇降機からのみとなっていた。
又、昇降機の降り口には生徒か部外者かが即座に判別される魔方陣が床に張られていて、部外者が侵入すると足の動きを絡め取る魔術式が発動し動けなくなる仕組みになっている。
僕は、家に届いた入学案内書に同封されていた新入生用の魔石を身に付けていたので、問題無く通り抜ける。一緒にいるセユナンテさんは、魔石を持っていない様子。だけれど、王宮勤務の騎士だからなのか魔方陣は発動せず無事通り抜けた。
「ようこそ、ソイルヴェイユへ。お待ちしておりました」
昇降機の降り口から出ると、直ぐ目の前に背の高い女性が立っていた。彼女はとても美しい女性で、背筋を真っ直ぐに伸ばして佇む姿はまるで騎士の様に凛としている。
「グヴァイラヤー・タル・マーツルンド君ですね?」
「は、はい……」
今日この時間に着くとは連絡していないのに、一体どうやって判ったのだろうか?
「初めまして、私はミフサハラーナ・アルンダ・サガフェスガリンと申します。ソイルヴェイユの寮母を勤めています。名字は言い難いので、どうぞミフサハラーナと呼んで下さいな」
優しい笑顔を浮かべて、軽く僕に頭を下げる。
「初めまして、グヴァイラヤーです。今日からお世話になります。どうぞ、よろしくお願い致します」
僕もぺこりと頭を下げて挨拶をする。
すると、ミフサハラーナさんはとても嬉しそうに微笑み、僕の頬を撫でる。
「なんて、良い子!……当時の貴方とは大違いですね。セユナンテ?」
「耳が痛いですが、全く仰る通りなんですよ」
ミフサハラーナさんからの言葉に、セユナンテさんは苦笑いを浮かべる。
「ふふふ。そんな貴方も今では立派になりましたね」
「卒業以来ですね。ご無沙汰しておりました」
セユナンテさんはミフサハラーナさんに真っ直ぐ向き合い、正式な騎士の挨拶をして見せる。そんなセユナンテさんを見て彼女は満足気に微笑んで軽く頷くと、乗り場出口へと向かい出す。
「さあ、では寮へ参りましょう」
彼女の後に続き幹から出ると、目の前は石畳の広場になっていて真ん中には大きな石像が建っていた。更にその石像の後ろは真っ直ぐで幅の広い道が続き、左右には針葉樹が植えられている並木道となっていた。
『何これ!別世界!!……ここは、本当に樹上なの!?』
「あそこがソイルヴェイユだよ♪」
僕が、ここが枝の上には全く見えない景色に驚愕して辺りを凝視し動けないでいると、セユナンテさんは後ろからそっと僕を抱き上げ、石像から少し横にズレて遠くが良く見える位置に立った。
遥か向こうに少し霞んでいるけれど、巨大と判る建物が見える。
「大きいですねっ!」
「あれでもほんの一部。更に奥に広がっていてね、迷宮かと思う程馬鹿デカイんだ、あそこは」
そう言いながら、セユナンテさんは僕を縦に抱き上げたままミフサハラーナさんが待つ馬車へ向かって歩き出す。
「す、すみませんっ!自分で歩きますから降ろして下さい!」
「道中ずっと抱っこしていたんだ、気にするな♪」
そんな僕等を微笑ましそうに見守るミフサハラーナさんと共に馬車に乗り込むと、ゆっくりと馬車が動き出す。
僕は、セユナンテさんの膝の上に座ったまま外の景色を眺めた。(4人乗り用なので座るスペースは充分にあるけど、馬車の窓との位置が高過ぎて子供の僕の背では外が見えなかったのだ)
「……そう言えば、セユナンテさんはソイルヴェイユの卒業生だったのですね」
僕は振り返ってセユナンテさんを見上げる。
「あぁ、そうなんだ♪卒業したのは今から2年前なんだけどね。まぁ、だから今回君の付添人に選ばれた訳でもあるんだ。ソイルヴェイユへは招かれた者や職員の他には一部の卒業生しか入れないんだ」
これが卒業と入門を証す物で、身に付けていれば昇降機の魔方陣は発動しないんだ。と、セユナンテさんは左耳上の耳輪を飾る小さな紅い魔石を見せてくれた。
着脱は可能で、用が無ければ普段は魔石専用の小箱に入れている。今回は任務前に団長直々から着用を義務付けられ、テルトー村に立ち寄る直前に訳を知らされたのだよ。と教えてくれた。
「そうだったんですかぁ~」
「月日が経つのはほんに早いものですね。あの幼かった貴方が、今度は新入生を連れて来る方になるなんてねぇ♪」
ミフサハラーナさんはにこにこと笑いながらセユナンテさんを見る。
「そうですね。通っていた頃は1日が長く感じていましたが、もう2年も前になるのかと思うと変な感じがします」
セユナンテさんは窓から見える並木道を懐かしそうに見つめる。
「グヴァイ、ミフサハラーナさんはこのソイルヴェイユが創立した時からずっと寮母を勤めている方なんだよ」
ふと思い出したのか、セユナンテさんは面白そうに笑いながら僕に教えてくれた。
「えぇっ!?」
たしかソイルヴェイユって来年で創立350年目を迎えるんじゃなかったっけ……?
そう入学案内書に書かれていたと思い出した僕は、思わずミフサハラーナさんを見つめてしまった。
『とても若く見えるけど、本当に350年以上も生きているの……!?』
互いに向かい合う様に座っている事で、僕は初めてミフサハラーナさんの顔を良く見る事が出来た。そして、彼女の耳がとても長くて先が尖っている事に気が付く。
背の高さと言い、後頭部の辺りで纏めているけれど輝く様なその金色の髪の毛と言い彼女がある長命の種族に思えてきた僕だった。
「あの、もし間違えていたらごめんなさい。……もしかしてミフサハラーナさんはエルフ族の方ですか?」
「えぇ、そうよ」
他にも耳が長くて尖っていて長命な種族はいるのに良く判ったわね♪と微笑まれる。
「その、耳飾りが以前父の宿に泊まりに来たエルフ族の冒険者と同じだったので……」
「あら!じゃあ、その人ってもしかして指にこの指輪もはめていたかしら?」
そう言ってミフサハラーナさんは右手を出して、深い藍色の涙型魔石が付いた指輪を見せる。
「あ、はい。色は違ったと思いますが、填めていらっしゃいました。……僕、エルフ族の方にお会いしたのはその方が初めてだったので、その方から色々な冒険譚を聞かせて頂いたし、その装飾品が綺麗で記憶に残っていました」
「成る程ねぇ。その冒険者は私の同郷よ。私の郷は大人になってからでしか郷の森を出られないのだけど、その際には長老からこの耳飾りと指輪を貰うのよ」
この装飾品はどちらもエルフの魔術が込められていて、死んだ時に家族に知らせてくれるのよ。と教えてくれた。
グヴァイは良い観察眼と記憶力の持ち主ね♪とミフサハラーナさんは頭を撫でて僕を誉め、それから彼女に聞かれるまま僕は家族の事や宿や村の話をする。
そう言えば、何故わざわざ馬車を使ったのだろうか?とふと疑問に思ってセユナンテさんを見上げれば、彼は僕が質問をする前に「ここは特別な許可を得た者しか飛行は出来ないんだよ」と話す。
「……何で聞きたい事が判ったのですか?」
「グヴァイの馬車と外へ向けた目線と表情から判ったよ♪」
「えぇ~?」
「騎士は相手の表情と一挙手一投足から考えを読む訓練を受けるからね」
内心『成る程』と思ったけれど、正直騎士の能力に怖いと感じて身体に力が入ってしまった。
「ごめん、ごめん。怖がらせるつもりは無かったんだ。ベテランの冒険者でも出来る事だし俺のは職業病みたいなもんなんだ」
女性を口説く時やデートをする時は便利だからグヴァイも機会が有れば覚えると良いよ♪と言う。
ミフサハラーナさんは、そんなセユナンテさんを見て軽く顔をしかめて「不謹慎ですしまだ小さな子に教える事では無いですね」と小言を言い始めたのだった。
だけれど、セユナンテさんは「あちゃー。……女史からのお小言!懐かしぃ~!」と何処か楽し気な呟きを言いながらミフサハラーナさんと僕へ謝る。
卒業しても寮母と元寮生の関係は健在な様で、そんな2人の姿に僕がついつい「ふふふ♪」と笑い声を上げてしまうと、セユナンテさんは楽し気な僕に苦笑しつつ「笑うなよ~!」と脇をくすぐり、更に僕を笑わせるのだった。
賑やかなまま、馬車に揺られる事30分。寮に到着する。
結局ずっとセユナンテさんの膝の上だったし、馬車から降りる時も抱き上げられて降ろされる……。
『……何、この扱い』
姉さんが愛読している恋愛小説(何故か嬉々として粗筋を僕に教えてくれる)の様な状況に、僕は目眩がしてきそうだ。
だって、セユナンテさんは実際に騎士だしかなり格好良い青年だ。
だけど……っ!
「セユナンテさん。僕、男なんですけど?」
思わず涙目で睨んじゃったけれど、仕方がないよね?
「大丈夫。判っているよ♪」
これもセユナンテさんの言う“騎士の習性”なのだそうだけれど、同姓に発揮しなくて良いと思うっ!
セユナンテさんの腕の中で少しもがくと、漸く下に降ろして貰う。
僕はぐっと身体を伸ばす。すると、遠くに見えていた建物が直ぐ目の前迄迫る様に建っている事に初めて気付く。
『うわっ!』
その建物の高さは、村は勿論隣街でだって見た事が無くて僕は軽く圧倒される。
『……………凄い』
「グヴァイ、こっちだよ!」
声を掛けられてボーッとしていた事に気付き、2人を探すと2人共とっくに寮の門をくぐり抜けて入り口の前に立っているではないか。
「あ!ごめんなさいっ!すぐに行きます!」
僕は慌てて寮へ向かう。
「遠路、お疲れ様でした。あなたの荷物はもう部屋に運び入れてありますからね」
「有難うございます!」
「では、今日から暮らすこの寮内を案内するわ。色々な部屋を回った後で貴方の部屋へ向かいますからね」
寮の規則については、中を案内しながら説明する方が解りやすいからその都度言うわね♪と微笑み、ミフサハラーナさんは僕の手を引いて玄関をくぐり抜ける。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
なんと、寮内は土足禁止だった。
広い玄関ホールには学年別の下駄箱があり、そこに学舎指定の革靴と寮内用のルームシューズを入れて履き替える。
僕のルームシューズは部屋に運ばれた荷物の中なので、セユナンテさんと同じ来客用のスリッパを履いてミフサハラーナさんの案内を受けた。
「……で、こちらが談話室。授業が終わって寮に戻ったら、就寝時刻まで大抵みんなここに集まって宿題をしたり寛いだりしているわ」
談話室と言われたその部屋は、とてつもなく広かった…。
『街の学舎の体育館の何倍あるんだろう……』
横幅もかなりあるけど、奥行きが凄い。
床は全面毛足の長い紺色の絨毯が敷き詰められ、部屋の中央には様々なサイズのソファとローテーブルが置かれている。更に壁際には長椅子や大きなクッションが沢山置かれていて、何処に座ってもとても居心地が良さそうな内装となっている。
「ここは造りが面白いのよ」
そう言うミフサハラーナさんの後に付いて中に入ると、真ん中を吹き抜けにして5層のフロアーが談話室には作られていた。
よく見ると、各フロアーにもソファセットや長椅子が置かれているのが見える。そして各フロアーの真ん中付近に左右に大きな出入口と階下へ伸びる階段が設けられていて、どうやら最奥の大階段から各階へ上がれる様だ。
「この談話室を真ん中に、左右に学年別の部屋が造られています」
大階段と左右の階段から直接出入りが可能の造りになっていて、寮生はみんな談話室を近道代わりにして寮内を移動しているのよ。と教えてくれた。
「5階まで上がるの大変そうですね……」
各階の天井が高いので、5階は遥か遠くに感じる。
「あ!天井は窓になっているんですね!」
見上げて気付く、大きな天窓から青い空が見えて室内を明るく照らしている。
「えぇ、夜も星が見えてとても美しいですよ♪……そうそう、5階はサムフィスとインディフィスの部屋ですが、彼等は談話室内の飛行許可がおりているので昇降は楽なんですよ」
なので、実はミドゥフィスとリンフィスが一番大変なんです。とミフサハラーナさんは笑ってウィンクする。
「さて、では次は…」
談話室を出て左へ向かおうとした時だった。
「あぁ!こちらにいらしたのですね!探しましたよ、ミフサハラーナさん!」
1人の男性が走って近付いてきた。
「カンドゥイーさん。……その様に慌ててどうなされたのですか?」
「新入生のご案内中でしたか!……お邪魔をしてしまい申し訳ございません。実は、テンヤヌダーラ家のご子息が到着されまして、ミフサハラーナさんに寮内を案内して欲しいと言っているのです」
カンドゥイーさんと呼ばれた男性は、ミフサハラーナさんのそばへ来ると僕達へ深く一礼をする。
ミフサハラーナさんより少し背が高いけど、セユナンテさんの様な鍛え上げられた体躯では無く細身。そして少し蒼味がかった肌色と紺色の髪に少し垂れ目な銀色の瞳。一礼した際に背中の羽は見えなかったのでサーヴラー人では無い様だし、僕は初めて見る種族の様だ。一見人族みたいだけれど、違うかも知れない。
「まあ、明日の入寮ではなかったのですか?」
「どうもご子息の気分が変わられた様で……」
「そうですか。ですが、私は今この子の案内役をしておりますので、他の者が案内をしては如何ですか?」
寮内を案内出来る職員は他にも沢山おりますでしょう?とミフサハラーナさんは小首を傾げて男性を見る。
「それが、どうしてもミフサハラーナさんが良いと……」
「……では、この子を案内し終わる迄お待ち頂くしかありませんね」
突然到着されて私を指名されましても、私は1人しかおりませんから。と僕に見せていた優しい雰囲気から打って変わり、冷たい態度をカンドゥイーさんに取る。
『テンヤヌダーラ家って4大公爵家の……?』
村で会った団長と同じ、4大公爵家の名字の一つだと僕は気付く。
『その息子も入学するんだ』
ミフサハラーナさんは創立からずっと寮母を務めていて公爵家が案内を指名するって事は、特別な地位にいる人なのかも知れない。
庶民の僕より公爵家の息子の方を案内してあげた方が大事なのでは?と思ってしまう。
「あの……」
そう言おうと口を開いたのと同じタイミングで、セユナンテさんがミフサハラーナさんに話し掛ける。
「ミフサハラーナ女史、後は俺が寮内を案内致しますよ」
「ですが……」
私がこの子に案内したいと思ったのですよ?と言いながら、ミフサハラーナさんは眉間にシワを寄せてセユナンテさんを見返す。
「では、こんな提案は如何でしょう?」
セユナンテさんはにっこりと笑顔で呟くと、そっと口をミフサハラーナさんの耳に近付け小声で何かを囁く。
「……解ったわ。じゃあ、お願いするわ。……グヴァイ、途中までしか案内出来なくて本当にごめんなさいね。セユン、きちんと全部案内してあげて下さいね?ここの寮生達は皆良い子達ばかりなので、困る事は無いでしょうが、先輩と友人になれるまでこの子は一人なんですから不便が無い様にしてあげて下さいね」
「えぇ、勿論です」
ミフサハラーナさんは小さく溜め息を吐きセユナンテさんにお願いをすると、僕に深く一礼をしてから踵を返して歩き出す。カンドゥイーさんも僕達に改めて深く一礼をし、足早に去って行った。
「さて、じゃあ続きは俺が案内してあげるな♪」
セユナンテさんは嬉しそうに廊下を左へ歩き出した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「お待ちかね!……ここが君の部屋だよ♪」
遊戯室、食堂、図書室、文具やちょっとした食品や日用品が扱われている売店等を順に案内して貰い、最後に僕の部屋に着く。
そこは玄関ホールへ続く廊下だけを辿ってから来れば、最奥でとても遠い位置だけど、談話室への出入口には大変近くて中を通ればかなり短距離になり玄関や食堂等あちこち行きやすい場所だと判った。
「はい、どうぞ♪」
セユナンテさんから部屋の鍵を手渡され、僕はドキドキしながら解錠してドアを開けた。
『広っ!!』
室内は、一人で使うには充分過ぎる広さだった。
入って直ぐ右側に下駄箱、隣はコート等を掛けておける棚付きの細いクローゼット。大人2人が余裕で並べる幅のある廊下を進めば、右側に小さな台所スペース。左側にはトイレ、隣は洗面脱衣室その奧は浴室の様だ。
廊下を更に進むと曇りガラスのドアの先は寝台と文机と2人分のソファセットが置かれた部屋に出た。部屋の左側は大きなウォークインクローゼットが備え付けられている。
『あれ?このドアはなんだろう?』
先に置かれていた自分の荷物を避けながらウォークインクローゼットの奥を見ると、またドアが有った。物置?それとも裏庭にでも通じているの?と思って開けてみると、なんとそこにも部屋が!
部屋は、狭いながらもシャワールームにトイレ・寝台に文机、クローゼットまで揃っている。
『だけど、どうしてもう1つ部屋があるの?』
寮は、例え肉親であっても泊まる事は出来ない規則となっている。
「あぁ、そこは侍従の部屋だよ」
「侍従!?」
セユナンテさんは、僕の後ろに付いて室内をあちこち開けて見て回る姿を微笑ましそうに見守っている。
そして、狭い部屋に首を傾げていた僕を見て「ソイルヴェイユに入る子って貴族や豪商の子が多くて、侍従付きが殆んどなんだ。だから、この寮は全室侍従用の部屋付きなんだよ」と教えてくれた。
「そう言うセユナンテさんも侍従付きだったのですか?」
「……うん。まぁね」
セユナンテさんは少し照れ笑いを浮かべる。
「……もしかして、セユナンテさんって伯爵家の方ですか?」
僕からの質問に軽く苦笑しつつもセユナンテさんは頷く。
「あ~、やっぱり気付いていた?」
「はい。全部ではないですが、一応イルツヴェーグ王宮の重鎮の方々の名字は頭に入っています」
ソイルヴェイユへ通う以上貴族と関わる様になるだろうと思った僕は、貴族や王宮で働く主要役職に就く者達を書き留めて頭に入れておいたのだ。セユナンテさんの名字、メグリー家は貴族院に名を連ねていた事を思い出した。
「さすが。……ホント、君はとても8歳児とは思えないね」
セユナンテさんは僕の頭を撫で「そこら辺の貴族の子供より君は育て甲斐がありそうだね」と笑う。
そして、その敷地と建物全てを覆う巨大な結界が空中には張られており、学舎への出入は昇降機からのみとなっていた。
又、昇降機の降り口には生徒か部外者かが即座に判別される魔方陣が床に張られていて、部外者が侵入すると足の動きを絡め取る魔術式が発動し動けなくなる仕組みになっている。
僕は、家に届いた入学案内書に同封されていた新入生用の魔石を身に付けていたので、問題無く通り抜ける。一緒にいるセユナンテさんは、魔石を持っていない様子。だけれど、王宮勤務の騎士だからなのか魔方陣は発動せず無事通り抜けた。
「ようこそ、ソイルヴェイユへ。お待ちしておりました」
昇降機の降り口から出ると、直ぐ目の前に背の高い女性が立っていた。彼女はとても美しい女性で、背筋を真っ直ぐに伸ばして佇む姿はまるで騎士の様に凛としている。
「グヴァイラヤー・タル・マーツルンド君ですね?」
「は、はい……」
今日この時間に着くとは連絡していないのに、一体どうやって判ったのだろうか?
「初めまして、私はミフサハラーナ・アルンダ・サガフェスガリンと申します。ソイルヴェイユの寮母を勤めています。名字は言い難いので、どうぞミフサハラーナと呼んで下さいな」
優しい笑顔を浮かべて、軽く僕に頭を下げる。
「初めまして、グヴァイラヤーです。今日からお世話になります。どうぞ、よろしくお願い致します」
僕もぺこりと頭を下げて挨拶をする。
すると、ミフサハラーナさんはとても嬉しそうに微笑み、僕の頬を撫でる。
「なんて、良い子!……当時の貴方とは大違いですね。セユナンテ?」
「耳が痛いですが、全く仰る通りなんですよ」
ミフサハラーナさんからの言葉に、セユナンテさんは苦笑いを浮かべる。
「ふふふ。そんな貴方も今では立派になりましたね」
「卒業以来ですね。ご無沙汰しておりました」
セユナンテさんはミフサハラーナさんに真っ直ぐ向き合い、正式な騎士の挨拶をして見せる。そんなセユナンテさんを見て彼女は満足気に微笑んで軽く頷くと、乗り場出口へと向かい出す。
「さあ、では寮へ参りましょう」
彼女の後に続き幹から出ると、目の前は石畳の広場になっていて真ん中には大きな石像が建っていた。更にその石像の後ろは真っ直ぐで幅の広い道が続き、左右には針葉樹が植えられている並木道となっていた。
『何これ!別世界!!……ここは、本当に樹上なの!?』
「あそこがソイルヴェイユだよ♪」
僕が、ここが枝の上には全く見えない景色に驚愕して辺りを凝視し動けないでいると、セユナンテさんは後ろからそっと僕を抱き上げ、石像から少し横にズレて遠くが良く見える位置に立った。
遥か向こうに少し霞んでいるけれど、巨大と判る建物が見える。
「大きいですねっ!」
「あれでもほんの一部。更に奥に広がっていてね、迷宮かと思う程馬鹿デカイんだ、あそこは」
そう言いながら、セユナンテさんは僕を縦に抱き上げたままミフサハラーナさんが待つ馬車へ向かって歩き出す。
「す、すみませんっ!自分で歩きますから降ろして下さい!」
「道中ずっと抱っこしていたんだ、気にするな♪」
そんな僕等を微笑ましそうに見守るミフサハラーナさんと共に馬車に乗り込むと、ゆっくりと馬車が動き出す。
僕は、セユナンテさんの膝の上に座ったまま外の景色を眺めた。(4人乗り用なので座るスペースは充分にあるけど、馬車の窓との位置が高過ぎて子供の僕の背では外が見えなかったのだ)
「……そう言えば、セユナンテさんはソイルヴェイユの卒業生だったのですね」
僕は振り返ってセユナンテさんを見上げる。
「あぁ、そうなんだ♪卒業したのは今から2年前なんだけどね。まぁ、だから今回君の付添人に選ばれた訳でもあるんだ。ソイルヴェイユへは招かれた者や職員の他には一部の卒業生しか入れないんだ」
これが卒業と入門を証す物で、身に付けていれば昇降機の魔方陣は発動しないんだ。と、セユナンテさんは左耳上の耳輪を飾る小さな紅い魔石を見せてくれた。
着脱は可能で、用が無ければ普段は魔石専用の小箱に入れている。今回は任務前に団長直々から着用を義務付けられ、テルトー村に立ち寄る直前に訳を知らされたのだよ。と教えてくれた。
「そうだったんですかぁ~」
「月日が経つのはほんに早いものですね。あの幼かった貴方が、今度は新入生を連れて来る方になるなんてねぇ♪」
ミフサハラーナさんはにこにこと笑いながらセユナンテさんを見る。
「そうですね。通っていた頃は1日が長く感じていましたが、もう2年も前になるのかと思うと変な感じがします」
セユナンテさんは窓から見える並木道を懐かしそうに見つめる。
「グヴァイ、ミフサハラーナさんはこのソイルヴェイユが創立した時からずっと寮母を勤めている方なんだよ」
ふと思い出したのか、セユナンテさんは面白そうに笑いながら僕に教えてくれた。
「えぇっ!?」
たしかソイルヴェイユって来年で創立350年目を迎えるんじゃなかったっけ……?
そう入学案内書に書かれていたと思い出した僕は、思わずミフサハラーナさんを見つめてしまった。
『とても若く見えるけど、本当に350年以上も生きているの……!?』
互いに向かい合う様に座っている事で、僕は初めてミフサハラーナさんの顔を良く見る事が出来た。そして、彼女の耳がとても長くて先が尖っている事に気が付く。
背の高さと言い、後頭部の辺りで纏めているけれど輝く様なその金色の髪の毛と言い彼女がある長命の種族に思えてきた僕だった。
「あの、もし間違えていたらごめんなさい。……もしかしてミフサハラーナさんはエルフ族の方ですか?」
「えぇ、そうよ」
他にも耳が長くて尖っていて長命な種族はいるのに良く判ったわね♪と微笑まれる。
「その、耳飾りが以前父の宿に泊まりに来たエルフ族の冒険者と同じだったので……」
「あら!じゃあ、その人ってもしかして指にこの指輪もはめていたかしら?」
そう言ってミフサハラーナさんは右手を出して、深い藍色の涙型魔石が付いた指輪を見せる。
「あ、はい。色は違ったと思いますが、填めていらっしゃいました。……僕、エルフ族の方にお会いしたのはその方が初めてだったので、その方から色々な冒険譚を聞かせて頂いたし、その装飾品が綺麗で記憶に残っていました」
「成る程ねぇ。その冒険者は私の同郷よ。私の郷は大人になってからでしか郷の森を出られないのだけど、その際には長老からこの耳飾りと指輪を貰うのよ」
この装飾品はどちらもエルフの魔術が込められていて、死んだ時に家族に知らせてくれるのよ。と教えてくれた。
グヴァイは良い観察眼と記憶力の持ち主ね♪とミフサハラーナさんは頭を撫でて僕を誉め、それから彼女に聞かれるまま僕は家族の事や宿や村の話をする。
そう言えば、何故わざわざ馬車を使ったのだろうか?とふと疑問に思ってセユナンテさんを見上げれば、彼は僕が質問をする前に「ここは特別な許可を得た者しか飛行は出来ないんだよ」と話す。
「……何で聞きたい事が判ったのですか?」
「グヴァイの馬車と外へ向けた目線と表情から判ったよ♪」
「えぇ~?」
「騎士は相手の表情と一挙手一投足から考えを読む訓練を受けるからね」
内心『成る程』と思ったけれど、正直騎士の能力に怖いと感じて身体に力が入ってしまった。
「ごめん、ごめん。怖がらせるつもりは無かったんだ。ベテランの冒険者でも出来る事だし俺のは職業病みたいなもんなんだ」
女性を口説く時やデートをする時は便利だからグヴァイも機会が有れば覚えると良いよ♪と言う。
ミフサハラーナさんは、そんなセユナンテさんを見て軽く顔をしかめて「不謹慎ですしまだ小さな子に教える事では無いですね」と小言を言い始めたのだった。
だけれど、セユナンテさんは「あちゃー。……女史からのお小言!懐かしぃ~!」と何処か楽し気な呟きを言いながらミフサハラーナさんと僕へ謝る。
卒業しても寮母と元寮生の関係は健在な様で、そんな2人の姿に僕がついつい「ふふふ♪」と笑い声を上げてしまうと、セユナンテさんは楽し気な僕に苦笑しつつ「笑うなよ~!」と脇をくすぐり、更に僕を笑わせるのだった。
賑やかなまま、馬車に揺られる事30分。寮に到着する。
結局ずっとセユナンテさんの膝の上だったし、馬車から降りる時も抱き上げられて降ろされる……。
『……何、この扱い』
姉さんが愛読している恋愛小説(何故か嬉々として粗筋を僕に教えてくれる)の様な状況に、僕は目眩がしてきそうだ。
だって、セユナンテさんは実際に騎士だしかなり格好良い青年だ。
だけど……っ!
「セユナンテさん。僕、男なんですけど?」
思わず涙目で睨んじゃったけれど、仕方がないよね?
「大丈夫。判っているよ♪」
これもセユナンテさんの言う“騎士の習性”なのだそうだけれど、同姓に発揮しなくて良いと思うっ!
セユナンテさんの腕の中で少しもがくと、漸く下に降ろして貰う。
僕はぐっと身体を伸ばす。すると、遠くに見えていた建物が直ぐ目の前迄迫る様に建っている事に初めて気付く。
『うわっ!』
その建物の高さは、村は勿論隣街でだって見た事が無くて僕は軽く圧倒される。
『……………凄い』
「グヴァイ、こっちだよ!」
声を掛けられてボーッとしていた事に気付き、2人を探すと2人共とっくに寮の門をくぐり抜けて入り口の前に立っているではないか。
「あ!ごめんなさいっ!すぐに行きます!」
僕は慌てて寮へ向かう。
「遠路、お疲れ様でした。あなたの荷物はもう部屋に運び入れてありますからね」
「有難うございます!」
「では、今日から暮らすこの寮内を案内するわ。色々な部屋を回った後で貴方の部屋へ向かいますからね」
寮の規則については、中を案内しながら説明する方が解りやすいからその都度言うわね♪と微笑み、ミフサハラーナさんは僕の手を引いて玄関をくぐり抜ける。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
なんと、寮内は土足禁止だった。
広い玄関ホールには学年別の下駄箱があり、そこに学舎指定の革靴と寮内用のルームシューズを入れて履き替える。
僕のルームシューズは部屋に運ばれた荷物の中なので、セユナンテさんと同じ来客用のスリッパを履いてミフサハラーナさんの案内を受けた。
「……で、こちらが談話室。授業が終わって寮に戻ったら、就寝時刻まで大抵みんなここに集まって宿題をしたり寛いだりしているわ」
談話室と言われたその部屋は、とてつもなく広かった…。
『街の学舎の体育館の何倍あるんだろう……』
横幅もかなりあるけど、奥行きが凄い。
床は全面毛足の長い紺色の絨毯が敷き詰められ、部屋の中央には様々なサイズのソファとローテーブルが置かれている。更に壁際には長椅子や大きなクッションが沢山置かれていて、何処に座ってもとても居心地が良さそうな内装となっている。
「ここは造りが面白いのよ」
そう言うミフサハラーナさんの後に付いて中に入ると、真ん中を吹き抜けにして5層のフロアーが談話室には作られていた。
よく見ると、各フロアーにもソファセットや長椅子が置かれているのが見える。そして各フロアーの真ん中付近に左右に大きな出入口と階下へ伸びる階段が設けられていて、どうやら最奥の大階段から各階へ上がれる様だ。
「この談話室を真ん中に、左右に学年別の部屋が造られています」
大階段と左右の階段から直接出入りが可能の造りになっていて、寮生はみんな談話室を近道代わりにして寮内を移動しているのよ。と教えてくれた。
「5階まで上がるの大変そうですね……」
各階の天井が高いので、5階は遥か遠くに感じる。
「あ!天井は窓になっているんですね!」
見上げて気付く、大きな天窓から青い空が見えて室内を明るく照らしている。
「えぇ、夜も星が見えてとても美しいですよ♪……そうそう、5階はサムフィスとインディフィスの部屋ですが、彼等は談話室内の飛行許可がおりているので昇降は楽なんですよ」
なので、実はミドゥフィスとリンフィスが一番大変なんです。とミフサハラーナさんは笑ってウィンクする。
「さて、では次は…」
談話室を出て左へ向かおうとした時だった。
「あぁ!こちらにいらしたのですね!探しましたよ、ミフサハラーナさん!」
1人の男性が走って近付いてきた。
「カンドゥイーさん。……その様に慌ててどうなされたのですか?」
「新入生のご案内中でしたか!……お邪魔をしてしまい申し訳ございません。実は、テンヤヌダーラ家のご子息が到着されまして、ミフサハラーナさんに寮内を案内して欲しいと言っているのです」
カンドゥイーさんと呼ばれた男性は、ミフサハラーナさんのそばへ来ると僕達へ深く一礼をする。
ミフサハラーナさんより少し背が高いけど、セユナンテさんの様な鍛え上げられた体躯では無く細身。そして少し蒼味がかった肌色と紺色の髪に少し垂れ目な銀色の瞳。一礼した際に背中の羽は見えなかったのでサーヴラー人では無い様だし、僕は初めて見る種族の様だ。一見人族みたいだけれど、違うかも知れない。
「まあ、明日の入寮ではなかったのですか?」
「どうもご子息の気分が変わられた様で……」
「そうですか。ですが、私は今この子の案内役をしておりますので、他の者が案内をしては如何ですか?」
寮内を案内出来る職員は他にも沢山おりますでしょう?とミフサハラーナさんは小首を傾げて男性を見る。
「それが、どうしてもミフサハラーナさんが良いと……」
「……では、この子を案内し終わる迄お待ち頂くしかありませんね」
突然到着されて私を指名されましても、私は1人しかおりませんから。と僕に見せていた優しい雰囲気から打って変わり、冷たい態度をカンドゥイーさんに取る。
『テンヤヌダーラ家って4大公爵家の……?』
村で会った団長と同じ、4大公爵家の名字の一つだと僕は気付く。
『その息子も入学するんだ』
ミフサハラーナさんは創立からずっと寮母を務めていて公爵家が案内を指名するって事は、特別な地位にいる人なのかも知れない。
庶民の僕より公爵家の息子の方を案内してあげた方が大事なのでは?と思ってしまう。
「あの……」
そう言おうと口を開いたのと同じタイミングで、セユナンテさんがミフサハラーナさんに話し掛ける。
「ミフサハラーナ女史、後は俺が寮内を案内致しますよ」
「ですが……」
私がこの子に案内したいと思ったのですよ?と言いながら、ミフサハラーナさんは眉間にシワを寄せてセユナンテさんを見返す。
「では、こんな提案は如何でしょう?」
セユナンテさんはにっこりと笑顔で呟くと、そっと口をミフサハラーナさんの耳に近付け小声で何かを囁く。
「……解ったわ。じゃあ、お願いするわ。……グヴァイ、途中までしか案内出来なくて本当にごめんなさいね。セユン、きちんと全部案内してあげて下さいね?ここの寮生達は皆良い子達ばかりなので、困る事は無いでしょうが、先輩と友人になれるまでこの子は一人なんですから不便が無い様にしてあげて下さいね」
「えぇ、勿論です」
ミフサハラーナさんは小さく溜め息を吐きセユナンテさんにお願いをすると、僕に深く一礼をしてから踵を返して歩き出す。カンドゥイーさんも僕達に改めて深く一礼をし、足早に去って行った。
「さて、じゃあ続きは俺が案内してあげるな♪」
セユナンテさんは嬉しそうに廊下を左へ歩き出した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「お待ちかね!……ここが君の部屋だよ♪」
遊戯室、食堂、図書室、文具やちょっとした食品や日用品が扱われている売店等を順に案内して貰い、最後に僕の部屋に着く。
そこは玄関ホールへ続く廊下だけを辿ってから来れば、最奥でとても遠い位置だけど、談話室への出入口には大変近くて中を通ればかなり短距離になり玄関や食堂等あちこち行きやすい場所だと判った。
「はい、どうぞ♪」
セユナンテさんから部屋の鍵を手渡され、僕はドキドキしながら解錠してドアを開けた。
『広っ!!』
室内は、一人で使うには充分過ぎる広さだった。
入って直ぐ右側に下駄箱、隣はコート等を掛けておける棚付きの細いクローゼット。大人2人が余裕で並べる幅のある廊下を進めば、右側に小さな台所スペース。左側にはトイレ、隣は洗面脱衣室その奧は浴室の様だ。
廊下を更に進むと曇りガラスのドアの先は寝台と文机と2人分のソファセットが置かれた部屋に出た。部屋の左側は大きなウォークインクローゼットが備え付けられている。
『あれ?このドアはなんだろう?』
先に置かれていた自分の荷物を避けながらウォークインクローゼットの奥を見ると、またドアが有った。物置?それとも裏庭にでも通じているの?と思って開けてみると、なんとそこにも部屋が!
部屋は、狭いながらもシャワールームにトイレ・寝台に文机、クローゼットまで揃っている。
『だけど、どうしてもう1つ部屋があるの?』
寮は、例え肉親であっても泊まる事は出来ない規則となっている。
「あぁ、そこは侍従の部屋だよ」
「侍従!?」
セユナンテさんは、僕の後ろに付いて室内をあちこち開けて見て回る姿を微笑ましそうに見守っている。
そして、狭い部屋に首を傾げていた僕を見て「ソイルヴェイユに入る子って貴族や豪商の子が多くて、侍従付きが殆んどなんだ。だから、この寮は全室侍従用の部屋付きなんだよ」と教えてくれた。
「そう言うセユナンテさんも侍従付きだったのですか?」
「……うん。まぁね」
セユナンテさんは少し照れ笑いを浮かべる。
「……もしかして、セユナンテさんって伯爵家の方ですか?」
僕からの質問に軽く苦笑しつつもセユナンテさんは頷く。
「あ~、やっぱり気付いていた?」
「はい。全部ではないですが、一応イルツヴェーグ王宮の重鎮の方々の名字は頭に入っています」
ソイルヴェイユへ通う以上貴族と関わる様になるだろうと思った僕は、貴族や王宮で働く主要役職に就く者達を書き留めて頭に入れておいたのだ。セユナンテさんの名字、メグリー家は貴族院に名を連ねていた事を思い出した。
「さすが。……ホント、君はとても8歳児とは思えないね」
セユナンテさんは僕の頭を撫で「そこら辺の貴族の子供より君は育て甲斐がありそうだね」と笑う。
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