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アンソニー編
閑話
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45年前カールトン公爵家に待望の子が誕生した。
だがお祝いムードに湧く中で、当時の専属医師が躊躇いながら報告した。
「まだ、です。まだお子が残っております」
場は一転暗いムードに包まれた。
双子は忌むべき者という風習は根拠がないと言う理由から廃れていたにも関わらず、このカールトン公爵家ではその黴の生えた言い伝えが信じられていた。
先に産まれた子は弟、後に生まれるのが兄。
そう伝えられていた一同はもう一人の子が産まれるのを固唾を飲んで見守る。
元気な産声を上げて先に誕生した子のことを公爵家の面々は既に興味を失ってしまった。彼を構っていたのは若き公爵の侍従だけで、慣れぬ手つきで産湯を使って体を丁寧に洗って上げていたのだった。
そして数分後、弱々しい産声を上げて産まれた子は一同に大歓迎されるのだった。
若き公爵は此度の出産の双子という事実を隠す為、大して悩みもせず、ただ一人先に産まれた子に構っていた侍従に、充分な金と隣国の身分を与えて家から放出した。
先に産まれた双子の弟はそのまま侍従の戸籍に入った、名はオルトと名付けられる。
公爵の母は隣国の出身で子爵位を持ったまま嫁いで来ていた為、その爵位を公爵は侍従に与えたのだ。
オルト・ターミルドはカールトン公爵家とは無関係に育ってそのまま隣国で生涯を終える筈だった。
だがそれが覆されたのは侍従の親心からだった。
侍従は隣国に渡りターミルド子爵として過ごす事になる。彼は元々男爵家の三男だった為、子爵位を授かるという幸運に突如恵まれて、嬉しい反面どう振る舞っていいのか困惑した。
しかも言葉は共通の大陸語で通じるが、子爵になった詳細の事実を言えるのは隣国王家と元公爵夫人の生家にのみ、貴族達には秘匿とされた為、突如現れた得体の知れない人物と認定されてしまった。
立ち位置の不安定な子爵は、欲深い面々から格好の餌食にされ財産を徐々に奪われていった。
それでもターミルド子爵は養子のオルトを目に入れても痛くない程に可愛がっていた。
徐々に減らされる財産、元々隣国に嫁ぐ娘の為の僅かなお小遣い程度のつもりで分けた領地の収入は、減らされる財産を補填できるものではなかった。
元より領地運営を学んだ事もない元男爵家の三男は為す術無く、年数だけが過ぎて行った。
そんな時、ターミルド子爵は病に倒れる。
自分が亡くなったあとの最愛の息子とその家族の行く末を心配して、彼は墓場まで持っていくはずの秘密をオルトに打ち明けた。
如何しても立ちいかなくなったらカールトン公爵家を頼れと遺言した。
真実を知ったあと子爵が亡くなってもオルトは数年は何も動かなかった。
まだターミルド子爵家の財産は底を付いていなかったからだ。
だがいよいよ底が見え始めたと感じたオルトは子爵位を勝手に王家に返上して、返納金を受け取ると妻子と共に祖国に帰って来た。
追い出された経緯を知る彼は、義父の遺言通りに直接公爵家に行くことはしなかった。先ずはカールトン公爵家を調べ始めた。
オルトのこの時の心境は、たった数分先に生まれたというだけの違いで身分でさえも差をつけられた、その理不尽に憤っていた。
全てを手中にする、それがオルトの目的だった。
だがお祝いムードに湧く中で、当時の専属医師が躊躇いながら報告した。
「まだ、です。まだお子が残っております」
場は一転暗いムードに包まれた。
双子は忌むべき者という風習は根拠がないと言う理由から廃れていたにも関わらず、このカールトン公爵家ではその黴の生えた言い伝えが信じられていた。
先に産まれた子は弟、後に生まれるのが兄。
そう伝えられていた一同はもう一人の子が産まれるのを固唾を飲んで見守る。
元気な産声を上げて先に誕生した子のことを公爵家の面々は既に興味を失ってしまった。彼を構っていたのは若き公爵の侍従だけで、慣れぬ手つきで産湯を使って体を丁寧に洗って上げていたのだった。
そして数分後、弱々しい産声を上げて産まれた子は一同に大歓迎されるのだった。
若き公爵は此度の出産の双子という事実を隠す為、大して悩みもせず、ただ一人先に産まれた子に構っていた侍従に、充分な金と隣国の身分を与えて家から放出した。
先に産まれた双子の弟はそのまま侍従の戸籍に入った、名はオルトと名付けられる。
公爵の母は隣国の出身で子爵位を持ったまま嫁いで来ていた為、その爵位を公爵は侍従に与えたのだ。
オルト・ターミルドはカールトン公爵家とは無関係に育ってそのまま隣国で生涯を終える筈だった。
だがそれが覆されたのは侍従の親心からだった。
侍従は隣国に渡りターミルド子爵として過ごす事になる。彼は元々男爵家の三男だった為、子爵位を授かるという幸運に突如恵まれて、嬉しい反面どう振る舞っていいのか困惑した。
しかも言葉は共通の大陸語で通じるが、子爵になった詳細の事実を言えるのは隣国王家と元公爵夫人の生家にのみ、貴族達には秘匿とされた為、突如現れた得体の知れない人物と認定されてしまった。
立ち位置の不安定な子爵は、欲深い面々から格好の餌食にされ財産を徐々に奪われていった。
それでもターミルド子爵は養子のオルトを目に入れても痛くない程に可愛がっていた。
徐々に減らされる財産、元々隣国に嫁ぐ娘の為の僅かなお小遣い程度のつもりで分けた領地の収入は、減らされる財産を補填できるものではなかった。
元より領地運営を学んだ事もない元男爵家の三男は為す術無く、年数だけが過ぎて行った。
そんな時、ターミルド子爵は病に倒れる。
自分が亡くなったあとの最愛の息子とその家族の行く末を心配して、彼は墓場まで持っていくはずの秘密をオルトに打ち明けた。
如何しても立ちいかなくなったらカールトン公爵家を頼れと遺言した。
真実を知ったあと子爵が亡くなってもオルトは数年は何も動かなかった。
まだターミルド子爵家の財産は底を付いていなかったからだ。
だがいよいよ底が見え始めたと感じたオルトは子爵位を勝手に王家に返上して、返納金を受け取ると妻子と共に祖国に帰って来た。
追い出された経緯を知る彼は、義父の遺言通りに直接公爵家に行くことはしなかった。先ずはカールトン公爵家を調べ始めた。
オルトのこの時の心境は、たった数分先に生まれたというだけの違いで身分でさえも差をつけられた、その理不尽に憤っていた。
全てを手中にする、それがオルトの目的だった。
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