知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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アンソニー編

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「もう一つ、新たに誰かと再婚して息子をその女性の養子にしてもらうという選択もある、何方にせよ嫡男にはなれないがな」

「陛下、発言をよろしいでしょうか」

後ろに控えていたユースティオが口を挟んだ、通常なら処罰モノだが、陛下は別段気にする風もなかった。

「もう一つあります、幼子が分別付く前にルーディスト侯爵家から出すという選択もあります」

「なっ!」

アンソニーはあまりの事に言葉を失う、そして非情な事を言ったユースティオを睨みつけた。

「ルーディスト侯爵そう睨むな。幼子は君の息子かもしれないがチェルシーの息子でもある。君を10年間騙した女の子供を君はこれからもずっと愛して行けるのか?」

ユースティオの言葉はアンソニーの心を抉る。

「おい!ユースティオそれはあまりにも残酷ではないか?」

「私は事実を言ったまでです」

「何方にせよお前が他家のことに口を挟む必要はない」

「そうでしょうか?」

「ユースティオ!」

アンソニーには陛下と騎士団長の会話の遣り取りがよくわからなかったが、ユースティオがアンソニーに対してあまりいい印象を持っていない事が伺えた。それが何故なのかは後に知る事になるが、今のアンソニーにはわからなかった。


◇◇◇


アンソニーは選択に1ヶ月の猶予を与えられた。
王宮を辞してその足で騎士団へ向かう、アンソニーの足は震えていた為、一歩一歩ゆっくりであるが進む。

アンソニーの胸には言いしれない哀愁が渦巻いていた。10年側にいた愛しい人は全てが嘘に塗れていた、名も出自もその年齢さえも。アンソニーの知るナーチェは人を謀る人格では無かった、だが最初から嘘ならばその人格も嘘だったのだろうか。

トボトボ⋯そんな形容が似合う足元に影が差す、俯いていた顔を上げるとカールトン公爵が居てアンソニーにハンカチを差し出しながら言った。

「あとで話せるかな?」

アンソニーはいつの間にか流れていた涙に濡れた頬をそのハンカチを受け取り拭って頷いた。


アンソニーの歩く姿を王宮の窓から目で追う人物がいた。
それは本物のナーチェ・カールトンと騎士団長ユースティオだった。

「全てが嘘って⋯知らなかったのだとしたら酷いわね」

「⋯⋯知らなかったと思うよ、始めに話した時青天の霹靂だったようだよ、かなり狼狽えていたからね」

「そう、じゃあ彼も被害者ね」

ナーチェは自身の手首を見つめながら呟いた。
彼女の手首には10年の間、嵌められた手錠の跡が生々しく残されていた。

「何にせよ、君が生きていて良かった」

「⋯⋯⋯」

「私が留学さえしなければもっと早く気づけたのに」

「⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯」

アンソニーの背中を見つめながらナーチェは何故か何かが胸に込み上げる。
その一筋が頬を伝った。





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