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アンソニー編
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「先ず君が長年細君と思っていた女が偽物だと言うのは騎士団長に聞いただろう」
「はい⋯⋯先程聞かされました」
「うむ、その女の名は元はチェルシー・ターミルドと言った、今は平民でターミルドの姓はない」
「平民、ですか?」
「父親が隣国のターミルド子爵位を持っていたが、12年前に爵位を返納している。まぁそれも今は説明する必要は感じない、聞きたければあとで聞くように。チェルシーの罪はカールトン公爵家乗っ取りと身分詐称、それからまぁこれは君が被害届を出せばだが窃盗も追加される」
「⋯⋯⋯⋯⋯窃盗」
「今回チェルシーと一緒に捕縛したのは彼女の両親とカールトン家の執事だ。全員で逃げようとしている所を騎士団が捕らえた、その際チェルシーの持つ鞄からルーディスト侯爵家が所有していた家紋入りのブローチと先々代国王から先々代侯爵に授与された勲章が4つ発見された」
「なっ!」
「まぁその他にも宝石類もあったが、それの出処は分からないがおそらく侯爵家の物だろう。嵩張らないものだけを鞄に詰めたようだな」
「逃げるというのは」
「あぁ彼等はここにいるカールトン公爵とその娘ナーチェを拉致して10年間軟禁していた、その間彼らは公爵家の人間だと成り済ましていたんだ。執事の裏切りとカールトン公爵家の事情で簡単に入れ替われたようだ。だが今回二人が無事に逃げ出してくれたので事件が発覚したのだ。それ以降二人は王宮に保護していた」
「⋯⋯⋯⋯」
アンソニーは左側にいる二人の顔を見つめた。
カールトン公爵と言った男性は見れば見るほどアンソニーの知る公爵にそっくりだった。
そしてその横に座る本物のナーチェと言われる女性の顔を見た、公爵と同じ黒髪に紫の瞳で父娘と疑う余地はない。
アンソニーのナーチェは薄い茶色の髪で青い瞳だった。
視線に気付いたナーチェはアンソニーをチラリと見てそして直ぐに目を伏せたが、一瞬見えた紫の瞳は揺らぎが無かった。
「今回の事件はカールトン公爵が領地に引きこもりだった事と彼らがそっくりの双子だった事が災いしたんだな。まぁこれから罪人の供述などは追々調べるとして、私から君に話さなければならないのは少し君には気の毒だが、早急に選択して対処してもらいたい」
「はっ!」
「君が結婚したナーチェ・カールトンは偽物だった事が発覚した為、君達の結婚は無効になる」
「えっ?そんな、それでは⋯」
「無効になったあと罪人のチェルシーと婚姻するのは君の自由だ、だが我が国では伯爵以上の爵位を持つ者の平民との婚姻は認めていない。もし君がチェルシーと婚姻するのならば気に毒だが降爵せざるおえない」
「なっ」
「そして君の息子はこのままでは庶子と言う事になる。チェルシーと婚姻して降爵すれば普通に籍に入れるのは自由だがな」
「⋯⋯」
「伯爵家以上が平民と婚姻を結ぶ際は本来なら何処かの貴族家へ養子縁組してから結婚するという手もあるが、罪人のチェルシーを養子にしてくれる貴族など普通はないだろうな」
「私の息子は⋯⋯紛れもなく私の息子なのに侯爵家の嫡男には成り得ないと言うことですね」
「そうだな、君と君の息子には気の毒だが、この国の決まりではそうなる、アンソニー・ルーディスト、君はチェルシーとの婚姻を望むか?」
「私が望めば彼女は⋯」
「あぁそれは勘違いしないように、罪は消えないし罰は与える。君の奥方になったところで平民が貴族を害したんだ、しかもこの国の公爵家の乗っ取りもある。10年前なら彼女は17歳だ分別もあるからな」
陛下の言葉にアンソニーは益々顔色が悪くなる、また妻の嘘が一つ増えた。
「10年前に17歳ですか?」
「あぁ。あぁそうか年齢詐称も合ったな、今回隣国へも使者を出して調べているから間違いない。この国では2歳鯖を読んで学園に通っていたようだな」
ふと目の前に座る父娘の黒髪がアンソニーの目に入る、順風満帆だったアンソニーの10年がその髪で黒く塗り潰されていく様な、そんな絶望な気持ちになった。
「はい⋯⋯先程聞かされました」
「うむ、その女の名は元はチェルシー・ターミルドと言った、今は平民でターミルドの姓はない」
「平民、ですか?」
「父親が隣国のターミルド子爵位を持っていたが、12年前に爵位を返納している。まぁそれも今は説明する必要は感じない、聞きたければあとで聞くように。チェルシーの罪はカールトン公爵家乗っ取りと身分詐称、それからまぁこれは君が被害届を出せばだが窃盗も追加される」
「⋯⋯⋯⋯⋯窃盗」
「今回チェルシーと一緒に捕縛したのは彼女の両親とカールトン家の執事だ。全員で逃げようとしている所を騎士団が捕らえた、その際チェルシーの持つ鞄からルーディスト侯爵家が所有していた家紋入りのブローチと先々代国王から先々代侯爵に授与された勲章が4つ発見された」
「なっ!」
「まぁその他にも宝石類もあったが、それの出処は分からないがおそらく侯爵家の物だろう。嵩張らないものだけを鞄に詰めたようだな」
「逃げるというのは」
「あぁ彼等はここにいるカールトン公爵とその娘ナーチェを拉致して10年間軟禁していた、その間彼らは公爵家の人間だと成り済ましていたんだ。執事の裏切りとカールトン公爵家の事情で簡単に入れ替われたようだ。だが今回二人が無事に逃げ出してくれたので事件が発覚したのだ。それ以降二人は王宮に保護していた」
「⋯⋯⋯⋯」
アンソニーは左側にいる二人の顔を見つめた。
カールトン公爵と言った男性は見れば見るほどアンソニーの知る公爵にそっくりだった。
そしてその横に座る本物のナーチェと言われる女性の顔を見た、公爵と同じ黒髪に紫の瞳で父娘と疑う余地はない。
アンソニーのナーチェは薄い茶色の髪で青い瞳だった。
視線に気付いたナーチェはアンソニーをチラリと見てそして直ぐに目を伏せたが、一瞬見えた紫の瞳は揺らぎが無かった。
「今回の事件はカールトン公爵が領地に引きこもりだった事と彼らがそっくりの双子だった事が災いしたんだな。まぁこれから罪人の供述などは追々調べるとして、私から君に話さなければならないのは少し君には気の毒だが、早急に選択して対処してもらいたい」
「はっ!」
「君が結婚したナーチェ・カールトンは偽物だった事が発覚した為、君達の結婚は無効になる」
「えっ?そんな、それでは⋯」
「無効になったあと罪人のチェルシーと婚姻するのは君の自由だ、だが我が国では伯爵以上の爵位を持つ者の平民との婚姻は認めていない。もし君がチェルシーと婚姻するのならば気に毒だが降爵せざるおえない」
「なっ」
「そして君の息子はこのままでは庶子と言う事になる。チェルシーと婚姻して降爵すれば普通に籍に入れるのは自由だがな」
「⋯⋯」
「伯爵家以上が平民と婚姻を結ぶ際は本来なら何処かの貴族家へ養子縁組してから結婚するという手もあるが、罪人のチェルシーを養子にしてくれる貴族など普通はないだろうな」
「私の息子は⋯⋯紛れもなく私の息子なのに侯爵家の嫡男には成り得ないと言うことですね」
「そうだな、君と君の息子には気の毒だが、この国の決まりではそうなる、アンソニー・ルーディスト、君はチェルシーとの婚姻を望むか?」
「私が望めば彼女は⋯」
「あぁそれは勘違いしないように、罪は消えないし罰は与える。君の奥方になったところで平民が貴族を害したんだ、しかもこの国の公爵家の乗っ取りもある。10年前なら彼女は17歳だ分別もあるからな」
陛下の言葉にアンソニーは益々顔色が悪くなる、また妻の嘘が一つ増えた。
「10年前に17歳ですか?」
「あぁ。あぁそうか年齢詐称も合ったな、今回隣国へも使者を出して調べているから間違いない。この国では2歳鯖を読んで学園に通っていたようだな」
ふと目の前に座る父娘の黒髪がアンソニーの目に入る、順風満帆だったアンソニーの10年がその髪で黒く塗り潰されていく様な、そんな絶望な気持ちになった。
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