知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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アンソニー編

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馬車が到着してアンソニー達は降りる。手を伸ばした後からランディはサイラスの横で泣き寝入りしてしまった。
あんなにも仲睦まじくしていた親子だったのに、自身の言動に依って息子に嫌われてしまったアンソニーは気落ちしていた。
今もランディを片手に抱いているのはサイラスだった。

「これは!侯爵様!お久しぶりでございます」

先触れを出すことなく来訪した為、出迎えなどはなかったがそれは想定内なのでアンソニーは気にしていなかった。寧ろ孤児院の院長の方が気にしているようで焦って走って来ました!と言わんばかりにその身で表現していた。汗の量も凄いことになっていてついハンカチを胸元から出しそうになった。
寸でで止めたのはランディの前だったからかもしれない。

「すまんな、ちょっと思い立って寄らせてもらった」

「そっそうですか、中へどうぞ」

彼は以前と会ったときよりもアンソニーに対して壁がある様に感じた。どことなく顔色を窺っているのだ。以前顔を出したのは何時だったか?アンソニーは考えながら院長に案内されながら孤児院の廊下を歩いていた。

だが、その廊下はかなり老朽している。

2ヶ月おきに寄附をしているはずなので先月も書類を確認した。だがこの廊下を見る限り、その寄附を活用しているようには見えない。
そんなにも孤児院ここは困窮しているのだろうか?
そう思って院長を見ると、院長の衣装も裾の方が継ぎ接ぎしている。
教職者にはあり得ない服装に思えた。

ふっと後ろを振り返りサントスを見ると彼が頷くのが分かった。やはりサントスも同様に思ったのだと理解して、院長室に着くなりアンソニーは院長に確認した。

「院長、我が侯爵家から一定の寄附があるはずだが、その帳簿を見せてはもらえないか?」

「ちょ帳簿ですか?それは構わないのですが、その、侯爵様からの寄附は⋯⋯」

言い難そうにしている院長にアンソニーはまさかと思い、此方から単刀直入に聞いた。

「我が家からの寄附はないのか?」

「いえ何かの手違いかもしれません!」

「いや正直に言ってもらえないだろうか」

アンソニーは努めて穏便にという風に訊ねると、院長はルーディスト侯爵家からの寄附は3年前が最後だと聞かされた。

「⋯⋯3年前」

「はい、ただ運営費は滞りなく頂いておりますので其方の帳簿をお持ちします」

後ろに控えていた職員に院長が目配せするとアンソニーが来た瞬間に予め用意していたのだろう、職員は直ぐ様帳簿を院長に渡した。

この孤児院はルーディスト侯爵領内にある2つの孤児院の内の一つだ。侯爵家が3代前から福祉に力を入れる為運営している。
ただアンソニーの両親が亡くなった頃は、侯爵家もそこまで裕福とは言えなかった為、運営費も額を落としていた。
3年前に訪った時には少し上げたのだが、その後は事業の利益に対して寄附にした方が、税の対策になると助言され、それ以降はそうしていた。

そういえばあの助言は『あの女』からだったなとアンソニーは溜息を溢した。




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