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ナーチェ編
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助け出されたナーチェとカールトン公爵が最初に保護された場所は、ソルバンジー公爵家のカントリーハウスだった。
そのことを知るやいなや公爵は焦燥しているのが、見て取れるように分かった。
折角助け出されたのに不機嫌な日々を送る公爵を周りは怪訝に思うものの、軟禁されていた日々を立ち直れていないからだろうと憶測して心のケアに尽力しようとした。
一方ナーチェは心も体も疲弊しきっていた為、助け出されてからもベッドの住人になっていた。
今まで気を張って生きてきたこともあり、軟禁生活の間は病気をした事もなかったのに、助け出された途端高熱に魘されるようになった、
上がっては下がり、下がっても2日もすればまた上がり、看病の手を緩める事が出来ない程だった。
そんな二人が助け出されて2週間経った頃、ナーチェの容態が落ち着いたタイミングで王宮へと移動する事になった。
すると途端に公爵は元気になり始めたのだが、周りは助け出されて日が経ったからだろうと、またもや勝手に推測して安堵するのだった。
ナーチェは上がったり下がったりする熱に、助け出されてからそれ迄全く父の様子を見ていなかったから、事情を知って心の中で自身の気持ちは言葉にしないと周りに伝わらないという事を、この時初めて学んだのだった。
15歳から25歳まで一番多感な時期に軟禁されてしまったナーチェは情操教育が満足に成されていなかった。その前までも社交から遠ざかり領地でずっと暮らしていたナーチェだったから、ある意味生まれた時から軟禁されていたも同然だったのかもしれない。
助け出された時の感情はホッとするよりも“無”だった。
高熱が出てからはナーチェは人の機微を損得で考える事に抵抗がなくなってしまっていた。
それは人と接しなさすぎた弊害でもあった。
彼女の中にある感情の中で心が揺れるのは軟禁する前に唯一芽生えていたユースティオに対する『想い』だけであった。
それ以外では自分の気持ちも人の気持ちも、それが良いのか悪いのかではなくて、その人にとって得するのか自分にとって損ではないか、そんな風にしか考えられておらず、人を慮ることも自分を慮ることもなかった。
彼女の感情は助け出された時には壊れてしまっていた。
そんな彼女に寄り添い献身的に尽くすユースティオ。彼だけがナーチェの感情を左右する事が出来た。
その日々に変化を齎したのは嘗ての侍女マジェルノの存在だった。
公爵家をオルトに唆された執事によって追い出されて命まで奪われそうになったマジェルノと庭師のドウンは唯一生き残り、二人を助ける機会を窺っていた。
平民の彼等が公爵家を相手取り二人を救うのには10年の年月が掛かってしまった。
それを知った時“無”だったナーチェの感情と損得しか考えなくなった捻くれてしまった考えが、漸く瓦解して助け出されてから3ヶ月後初めてナーチェは涙を流した。
そのことを知るやいなや公爵は焦燥しているのが、見て取れるように分かった。
折角助け出されたのに不機嫌な日々を送る公爵を周りは怪訝に思うものの、軟禁されていた日々を立ち直れていないからだろうと憶測して心のケアに尽力しようとした。
一方ナーチェは心も体も疲弊しきっていた為、助け出されてからもベッドの住人になっていた。
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上がっては下がり、下がっても2日もすればまた上がり、看病の手を緩める事が出来ない程だった。
そんな二人が助け出されて2週間経った頃、ナーチェの容態が落ち着いたタイミングで王宮へと移動する事になった。
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ナーチェは上がったり下がったりする熱に、助け出されてからそれ迄全く父の様子を見ていなかったから、事情を知って心の中で自身の気持ちは言葉にしないと周りに伝わらないという事を、この時初めて学んだのだった。
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それは人と接しなさすぎた弊害でもあった。
彼女の中にある感情の中で心が揺れるのは軟禁する前に唯一芽生えていたユースティオに対する『想い』だけであった。
それ以外では自分の気持ちも人の気持ちも、それが良いのか悪いのかではなくて、その人にとって得するのか自分にとって損ではないか、そんな風にしか考えられておらず、人を慮ることも自分を慮ることもなかった。
彼女の感情は助け出された時には壊れてしまっていた。
そんな彼女に寄り添い献身的に尽くすユースティオ。彼だけがナーチェの感情を左右する事が出来た。
その日々に変化を齎したのは嘗ての侍女マジェルノの存在だった。
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平民の彼等が公爵家を相手取り二人を救うのには10年の年月が掛かってしまった。
それを知った時“無”だったナーチェの感情と損得しか考えなくなった捻くれてしまった考えが、漸く瓦解して助け出されてから3ヶ月後初めてナーチェは涙を流した。
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