公爵夫人マーシェのお悩み

maruko

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25 マーシェ不快になる

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「どうして君が彼女を知ってるんだ?」

 アルマンの問いかけがマーシェの頭の中で木霊のように繰り返す。
 訝しげに見る彼の顔を見ないように背けたら、陛下と王妃二人と目があってしまった。そちらも嫌だと背けると今度はいつの間に来ていたのか宰相と目が合う。
 どこに目を向けても不味い状況のマーシェは、観念してアルマンに向き合った。

 この面々の中でマーシェが普通に話せるのは、どう見てもアルマンしかいなかった。

「図書館でお会いしました」

「図書館?」

 アルマンはマーシェからの言葉を復唱して少し思案した。報告にあったマーシェの行く先リストを頭の中で確認したのだろうと思えた。

「それで、その⋯」

 何かを聞きたそうにしているアルマンにマーシェはピシャリと言い放つ。

「旦那様、今はリリアン様の話はする必要性を感じません。マーロウ公爵家の事です」

 部屋にいる面々を見渡しながらマーシェが言ったのでアルマンは意図を理解してくれたようだ。それ以上の追求はしなかった。

 二人の会話を聞いて、途切れたところですかさず国王がマーシェの側にやってくる。
 正直マーシェは今回の件も含めて王家に不信感を持っている。できれば話などしたくはないけれど、相手が国王ならその言い分も通らない。
 諦めたマーシェはカーテシーで挨拶をした。

「此度は我が国の王太子がストナム王家に多大な迷惑をかけた。マーロウ夫人には手数をかけるがなにぶん良きように計らってくれ」

 マッケンロウ国王は陛下なりの言葉でマーシェを気遣ったつもりだったのだろう。だがマーシェは途端に不機嫌になった。
 そしてアルマンを見遣る、が彼にはマーシェの心持ちは伝わらなかったようだった。

 国王の言葉はマーシェには懇願ではなく要請に聞こえた。
 その言葉の違いをマーシェはポリント辺境伯家への侮りと捉えた。

 一度直り、もう一度カーテシーをしてマーシェは許しも得ず顔を上げ、その顔に微笑みを浮かべて畏れ多くも国王陛下に許しも得ずに答えた。

「陛下、謹んでお断り申し上げます」

「「「なっ!」」」

 マーシェの言葉に陛下ばかりではなく王妃も宰相も思わず声を上げる。
 アルマンだけは陛下の言葉にマーシェが不快に思った事を遅くとも知った。

 5人の間に室内にも拘らずヒューッと木枯らしが吹いたようで、壁際に控えたルルチアは震えた。




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