公爵夫人マーシェのお悩み

maruko

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26 マーシェ怒りを飲み込む

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 嵐のようなフォスティーヌが掻き回した部屋の中。その部屋には5人の主要人物の他にそれぞれに仕える者たちもこの部屋に駆けつけていた。
 ほんの数分前までは人気ひとけの多さとフォスティーヌの立ち回りで、この部屋は暑く熱気に包まれていた。
 それが、マーシェの一言で一気に北風がぴゅ~と吹き始め陛下に至っては凍りついた様に固まっていた。

「マーシェ、陛下は口下手なんだ」

 夫アルマンの言葉を聞き、マーシェはどんな言い訳かと呆れたが、どうやら本当の事らしいと気づいたのは、横で王妃と宰相がうなずいていたからだった。

「口下手?」

「あぁ、言葉選びが下手すぎていつも誤解を招いている。だから極力言葉を発さずに過ごして頂いているのだが、今は君に感謝を述べたかったのだろう」

 一つも感謝された様に感じなかったマーシェは疑念の残る表情でアルマンを見遣った。

「君の疑念はもっともだが、ちゃんと君の誓約どおりに事を運ぶと陛下達は約束してくださっている」

「本当ですか?」

 マーシェはまだ納得いかない顔でアルマンの後ろの三人を見つめた。
 国を担う三人が三人とも機械のようにひたすらうなずく様は滑稽でもあるけれど、真剣だという事も分かった。
 (しょうがない)約束は約束でもある。
 先程の失言が口下手な国王のうっかりであるならば、本心ではなかったとしてマーシェは渋々了承することにした。

 だけどこの国では【綸言汗の如し】という大事な言葉は意味をなさないのか?

 そう考えたマーシェは、この言葉を国王の枕元に貼り、毎日斉唱させるという文言を誓約書に付け足そうと思い付いた。そうしなければいずれこの国は滅びるだろう、なんせ王太子がアレですものね!

 ひとまず怒りを飲み込んでマーシェは4人の顔を順繰りに見ながら再びカーテシーをした。今日はこのスタイル何度目かしら?

「分かりましたわ。了承致します」

 マーシェの言葉にホッと胸を撫で下ろす国王夫妻と宰相。
 アルマンもホッとはしたけれど、それとは別にリリアンの事を早急に話したかった。まさか前妻と今妻が会っているとは思いも寄らなかったのだ。
 (まさかに危害など加えていないだろうな)
 もしそうなら王太子などどうでも良いとアルマンはマーシェに涼しい顔を見せながら、その思考は前妻と子供たちの無事を祈る事だけで埋め尽くされていた。

 騒々しい部屋であったが、招かれざる客人達を追い出せば、静かな部屋にたちまち戻る。
 マーシェは用意してもらった紙とペンで2通の手紙を認めた。

 そうしてルルチアに手紙を早馬で辺境伯に届ける旨を伝えると、待ち構えたようなアルマンとようやく対峙することになった。

 (この際全部を聞き出して詳らかにしてしまおう!)
 (リリアンと子供達を守らなければ!)

 マーシェとアルマン
 二人はそれぞれの思惑でソファにゆるりと腰掛けた。



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