公爵夫人マーシェのお悩み

maruko

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30 揺さぶりのマーシェ

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「旦那様、私がこんな事を言うのも何ですけど⋯貴方様には今のお仕事向いてないように思いますわ」

 マーシェの言葉はアルマンにグサリと刺さる。
 正直言えばアルマンも薄っすらそう思わないでもなかった。
 だが、それを担ってこのマーロウ公爵家は存続し続けていられるし、王家からの信任も厚いのだ。そうアルマンは思い日々努力していった。

 それら全てを否定されたようにも感じ、そして図星を指されたことも相まって、アルマンはマーシェを睨んだ。
 だがその眼力は弱かった。
 さっき仕掛けた洗脳は、マーシェが思ったよりも効いているようだ。

「べつに旦那様が出なくてもよろしいのではないでしょうか?総括するだけでも王家には尽力した事になるのでは?」

 マーシェが今必死でアルマンを影の仕事から脱却させようと、目論みているのは二つの理由があった。

 リリアンの意向は聞いていないから分からないが、アルマンはリリアンとの復縁を望んでいるはずだ。
 リリアンが仮に承諾したとしても、仕事が変わらなければリリアンとその子供たちはマーシェのようにとまではいかなくても、寂しい思いをする事になる。

 マーシェはリリアンに殊の外恩を感じていた。

 ひとりぼっちで誰も味方のいないあの時、マーシェの心は寂しくてそして苦しかった。

 何とか現状を打破しようとコソコソ図書館通いもしていたけれど、正直あの頃のマーシェは頭が良く回っていなかったように思う。
 孤独というのは人の思考力まで奪うのだと知ったのは、リリアンから手を差し伸べて貰って話しをするようになって初めて分かったのだ。

 だからマーシェは辺境伯家実家に帰るまでに、この家をリリアンが幸せだった頃のように調えたかった。

 もし仮にアルマンの求婚をリリアンが断ったとしても、アルマンが仕事を辞めていれば出戻りフォスティーヌの受け皿になれる。そうすればこれ以上あの王女の被害が広がることもない。

 そしてもう一つの理由がアルマンのあの変装術。
 あれを野放しにしておくのはポリント辺境伯は兎も角、姉の嫁ぎ先であるストナム王国には脅威になる。ただでさえ島国であるから、他国から狙われやすいのだ。
 今回マーシェが見破ったのは、マーシェの特化した鼻があったからこそだ。普通の人は気付けない。

 変装されて王家に潜り込まれても、誰も気付かないうちにアルマンは暗躍できる。

 大好きな姉の平穏な日常の為にも今のうちに潰すに限る。

 それに無駄な二年をダラダラと過ごしたのではなく、この目的の為に二年を費やしたのだと思えば、マーシェの心も救われる⋯⋯はず!

 マーシェはアルマンの心をユラユラと揺さぶっていた。




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