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46 捕獲されたザイリス
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それからも三人から、これでもかというほど、ストナム王国の王太子とポリント辺境伯のラーシェの恋物語を聞かされたザイリスだったが、彼の頭の中は違う事を考えていた。
自分を“犬”という女の子
ケラケラと笑う朗らかな声と魅力的な顔
あの子のことをもっと知りたい。
そんな事を考えていた。
世間ではそれを一目惚れと言うのだが、ザイリスはまだそれに気付けていなかった。
『ストナム王国の王太子が何故王都ではなくポリント辺境伯領の学園に留学しようとしているのか、その理由をさぐれ』
という、本来の目的は既に学友達の話から達成してしまった。
おそらく近いうちに父の耳にも入ってしまう。
そうなれば短期留学予定のザイリスは、早ければ一ヶ月、長くても二ヶ月ほどで、留学を終わらせられてしまう。
それでは彼女と知り合いになる時間は僅かだ。
なんとか話す機会はないものか、ザイリスは頭の中で己の知恵を総動員して考えていた。
だが、そんな思いも虚しく、ザイリスは父の側付きから、王都に戻る期限を通達された。
◇◇◇
期限はあと1ヶ月
思ったよりも短い期間にザイリスは天を仰いだ。
父に頼み婚約を申し入れようかとも考えた。
こちらは侯爵家だから身分的には問題はない。
だが、ザイリスの将来はアルマンの侍従だ。継げる爵位を持たないザイリスの申込みを、隣国王家が縁付くかもしれない辺境伯家が、受けてくれる可能性はあるのだろうか?
そんな事を考えながらも、ポリントの領都を休みの日にブラブラとしている時に、前方にマーシェを見かけた。
今日の外出は悶々と悩んでいた気分転換だったが、僥倖だったと飛び上がるほど嬉しかった。
何にも考えず走り寄って行ったザイリスを嘲笑うように、マーシェがその場を離れて行く。
隣にいるのは誰か知らない男だった。
少し年上に見えるその男は、偶に立ち止まり顎に手を当て考え込んでいた。
その度にマーシェも止まる。
ザイリスにそのつもりはなかったけれど、二人の後を付けているようになってしまった。
前を行く二人を見つめていると、不思議な行動をするマーシェを見た。
男が止まるとマーシェも止まる、男が考えている間、マーシェは目を瞑り顔を少し上げている。その様子が何かの匂いを嗅いでいるようにザイリスには見えた。
『私は通りすがりの犬よ』
そんな言葉を思い出すには充分なシチュエーションだった。
二人の後をしばらく追っていたら、突然背後から手を後ろ手に捻られた。
「ウッ!」
「お前は誰だ、何故あの方たちを付けている?」
耳元で囁く声は、地獄から聞こえてくるように低く、ザイリスの脳内に響いた。
「⋯っ!」
訓練を始めたばかりだったが、拉致されそうな時の対処法はしっかり身についていたザイリスだったから、声も上げずにとりあえずは捻られた手を巧みに解いた。
その行動には、相手のほうが驚いた。
だがザイリスの反撃もここまで、いつの間にか囲む男は三人になっていて、ザイリスは敢え無く捕獲された。
前を歩いていた男とマーシェは、そんなザイリスを眺めている。
どうやら二人にも付けている事に気付かれていたようだった。
やはり、自分は影には向いていない。
ザイリスは連行されながらそう思っていた。
不思議と命の危険を感じなかったザイリスだった。
自分を“犬”という女の子
ケラケラと笑う朗らかな声と魅力的な顔
あの子のことをもっと知りたい。
そんな事を考えていた。
世間ではそれを一目惚れと言うのだが、ザイリスはまだそれに気付けていなかった。
『ストナム王国の王太子が何故王都ではなくポリント辺境伯領の学園に留学しようとしているのか、その理由をさぐれ』
という、本来の目的は既に学友達の話から達成してしまった。
おそらく近いうちに父の耳にも入ってしまう。
そうなれば短期留学予定のザイリスは、早ければ一ヶ月、長くても二ヶ月ほどで、留学を終わらせられてしまう。
それでは彼女と知り合いになる時間は僅かだ。
なんとか話す機会はないものか、ザイリスは頭の中で己の知恵を総動員して考えていた。
だが、そんな思いも虚しく、ザイリスは父の側付きから、王都に戻る期限を通達された。
◇◇◇
期限はあと1ヶ月
思ったよりも短い期間にザイリスは天を仰いだ。
父に頼み婚約を申し入れようかとも考えた。
こちらは侯爵家だから身分的には問題はない。
だが、ザイリスの将来はアルマンの侍従だ。継げる爵位を持たないザイリスの申込みを、隣国王家が縁付くかもしれない辺境伯家が、受けてくれる可能性はあるのだろうか?
そんな事を考えながらも、ポリントの領都を休みの日にブラブラとしている時に、前方にマーシェを見かけた。
今日の外出は悶々と悩んでいた気分転換だったが、僥倖だったと飛び上がるほど嬉しかった。
何にも考えず走り寄って行ったザイリスを嘲笑うように、マーシェがその場を離れて行く。
隣にいるのは誰か知らない男だった。
少し年上に見えるその男は、偶に立ち止まり顎に手を当て考え込んでいた。
その度にマーシェも止まる。
ザイリスにそのつもりはなかったけれど、二人の後を付けているようになってしまった。
前を行く二人を見つめていると、不思議な行動をするマーシェを見た。
男が止まるとマーシェも止まる、男が考えている間、マーシェは目を瞑り顔を少し上げている。その様子が何かの匂いを嗅いでいるようにザイリスには見えた。
『私は通りすがりの犬よ』
そんな言葉を思い出すには充分なシチュエーションだった。
二人の後をしばらく追っていたら、突然背後から手を後ろ手に捻られた。
「ウッ!」
「お前は誰だ、何故あの方たちを付けている?」
耳元で囁く声は、地獄から聞こえてくるように低く、ザイリスの脳内に響いた。
「⋯っ!」
訓練を始めたばかりだったが、拉致されそうな時の対処法はしっかり身についていたザイリスだったから、声も上げずにとりあえずは捻られた手を巧みに解いた。
その行動には、相手のほうが驚いた。
だがザイリスの反撃もここまで、いつの間にか囲む男は三人になっていて、ザイリスは敢え無く捕獲された。
前を歩いていた男とマーシェは、そんなザイリスを眺めている。
どうやら二人にも付けている事に気付かれていたようだった。
やはり、自分は影には向いていない。
ザイリスは連行されながらそう思っていた。
不思議と命の危険を感じなかったザイリスだった。
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