公爵夫人マーシェのお悩み

maruko

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47 眩しいマーシェ

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「ちょっと待って!」

 それまで捕縛されるザイリスを眺めていたマーシェが、突然声を上げた。その声にザイリスを騎士たちが立ち止まる。
 とととと、近付いて来たマーシェが、担がれているザイリスの顔をマジマジと観察する。

「貴方この前の迷子のお兄さんね!また迷子になったの?」

 マーシェの言葉にザイリスは目を見開いて驚いた。逆さ斜めから見てもマーシェはなんて可愛いんだと、自分が危機的状況のこの場には、似つかわしくない思考を脳内で展開していた。

「マーシェ、知り合いなのか?」

 マーシェの言葉に反応した男が、近付いてくる。

「えぇ、先日街を彷徨っていたこの方をしたの」

 “お兄様!”ザイリスの心が跳ねた。
 何だ兄だったのか、危機的状況なのに安堵するザイリスは、騎士が彼を軽々と肩に担いでいる為、逆さになっていて、段々と頭に血が下がってきていることに気付かない。
 そしてマーシェの、困った迷子の保護発言にも気付かない。

「おろしてあげて、きっと迷子になって心細いところに、私の顔を見かけたのよ。人って心細くなると藁にも縋るんでしょう?(私は犬だけど)」

 最後の小声は、マーシェの兄ルコラとザイリスにしか聞こえないほど小さかった。

 (また犬って言っている、さっきの匂いを嗅ぐ仕草と関係してるのか?)

 そう考えていたザイリスを、マーシェの言葉で騎士は地面に下ろす。
 突然宙に浮いていた足が地面を捉えて、驚いたザイリスは足に力が入らなかった。
 時間は短かったが、急に担がれ血がたっぷりと頭に集まったところで下ろされた。血液が急激な上下活動をした事に、ザイリスの体が付いて行けなかった。
 足を地面が捉えたと思った瞬間、ザイリスはその場にヘナヘナと頽れてしまった。

 そして目の前が真っ暗になり意識が何処かへ飛んでいった。


 ◇◇◇


 目を覚ましたのは寮の部屋でも学園の医務室でもなかった。
 高い位置にある天井はよく見えないが、かなり繊細な細工が施されていると思った。
 そして背中が痛いのは硬いところに寝かされているのか?
 ここはどこだ?そう思って起き上がったが、近くには誰もおらず、少し離れた場所に大きな扉が見えたところで、そこがエントランスであることに気付いた。

 (エントランス?)

 ─タタタタタ─

 寝かされた場所に困惑気味なザイリスの耳に、誰かが走ってくる足音が聞こえた。

「あっ!起きてるー」

 声の方向には、マーシェがいた。
 だがその後ろには数名の人が歩いてくるのも見える。

「お兄さん!お目覚めね、おはよう。貴方逆上せたんですって!迷子で逆上せるなんて間抜けねぇー」

 ケラケラとまたもや笑うマーシェに、懲りないザイリスは胸をドキュンと射抜かれる。

 (やっぱり可愛い)
 
 ザイリスはマーシェの笑顔を眩しく見つめていた。






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