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契約違反
あと半年で約束の3年という所で邸に招かれざる客が訪れた。
サンダーことロットだった。
執事兼護衛のトールに報告を受けた私は嫌々ながら応接室に向かった。
来るのが早いのでは?と訝しみながら部屋に行くとロットは平然と出されたお茶を飲んでいた。
「ミランダ様お久しぶりです」
そう言って慇懃に挨拶するから嫌だったけどこちらも慇懃に挨拶を返した。
「何か御用かしら?約束の日には早いように思うのだけど⋯」
私が切り出すとロットは急に笑顔になった、初めて見る彼の愛想のいい顔に嫌な予感がしたが、
「ミランダ様にも朗報です」
そのロットの言葉で、やった!ひょっとして半年早く離婚ができるのかしら?満面の笑顔が出たのだろう前のめりの私にロットは少しハニカムように悪夢を投げつけた。
「そんなに嬉しかったのですね、口座が空になっていたみたいですので、嬉しいでしょう。婚姻の延長をお伝えしに参りました」
「は?」
私は耳を疑った。
何言ってるの?このスットコドッコイは。
口座が空になったとはこちらに来る時に彼に渡された口座のことだろう。
セルトと契約して3ヶ月後にギルドの口座に全額移動したのだ。
空になって当たり前だ。
それより延長ってどういうこと?
しかもそれを何故私が嬉しいと思うとこの男は思ったのかしら?
私が思考の沼に陥って何も言わないのを言葉が出ないほど喜んでいると勘違いしたロットは勝手に話し始めた。
「エミリーナ様が懐妊したのでこちらの事情が変わってしまったのです」
そう言って話したのは巫山戯た内容だった。
本来サミュエルは私と離婚する理由を石女にしようと思っていたらしい。
それは想像していたからまぁいいけども。
だからエミリーナが妊娠しないように気をつけてもいたのだが、今から3ヶ月前に懐妊が解って半年後に産まれるという。
離婚前に産まれたら私とサミュエルの間に産まれた事にしないと庶子になってしまう。だから嫌でも二人の子にしなければならないが、それでは離婚の理由には使えないし、それならと今私と離婚してエミリーナと再婚しても子供の産み月が問題になる、だから2年延長しろということをいけしゃあしゃあと言ってのけた。
「巫山戯てるの?」
私が手放しで喜ぶと思っていたらしいロットは驚愕しているが、そんなものを喜ぶと思われたのが心外だ。
何が悲しくて既に花の盛りを過ぎた乙女があと追加で2年も我慢せねばならないのか。
もうすぐ私は21歳になるのだ。
「お断りするわ」
私の言葉にロットが噛み付く。
「何を!貴方もお金がなくて困っているでしょう。ちゃんと追加で生活費はお渡しいたしますよ」
とことん私を馬鹿にした言葉だ。
そもそも私はこの契約結婚をお金の為に了承したわけではない。
スチュート伯爵家は富豪とまでは行かないけれど裕福な貴族なのだから。
3回目の婚約解消が世間的にも見世物になることが解っていたからだ、離婚も充分に醜聞だけど三度の婚約解消と離婚の天秤にかけて、離婚の方が幾分か世間的にマシだと思ったからあんな巫山戯た提案を呑んだのだ。
「結構よお金ならあるもの、なんなら最初に渡されたお金も全額、いえ利息でもつけてお返ししましょうか?その代わりたっぷり慰謝料を頂きますけどね」
強気の私にたじろぐロットは唇をワナワナと震わせていた。
そして見当違いのことを言う。
「この石女が!」
「はぁ?そりゃあ石女でしょうね、そんな行為などしたこともないのですから」
自分の言葉が失言だったと気付いたロットはまたしても唇を噛み締めていた。
そんなに噛んだら血が出るわよ。
「兎に角お断りするわ、サミュエルが何を考えてるか知らないけれど契約違反は其方ですから、今でも慰謝料上乗せには充分なのよ、ねっサンダーさん」
自分の偽名がバレていたのが不思議だったのか、またまた驚愕してるけど何故バレてないと思ったのかしら、そのほうが不思議だわ。
「また伺います」
そう言っておそらくサミュエルにお伺いを立てるつもりだろうロットは帰っていった。
勿論玄関まで送ることはしなかったし、なんなら料理長が大量の塩を玄関にぶち撒けていた。
嫌な客が来たら行う東方の風習らしい。
実はこの2年半で私は使用人達とセルトに私の境遇を呪いの件以外の事は話していた。
流石に石女鬱女の汚名は早々に返上したかったし同情の目でずっと見られるのも嫌だったからだ。
でも別の意味で同情は買ってしまったけれど⋯。
だから家の使用人達の総意は、リンデン公爵家に繋がる者は皆敵なのだ。
一昨日来やがれ!
マリリンさんに習った平民の言葉を心の中で呟いた。
サンダーことロットだった。
執事兼護衛のトールに報告を受けた私は嫌々ながら応接室に向かった。
来るのが早いのでは?と訝しみながら部屋に行くとロットは平然と出されたお茶を飲んでいた。
「ミランダ様お久しぶりです」
そう言って慇懃に挨拶するから嫌だったけどこちらも慇懃に挨拶を返した。
「何か御用かしら?約束の日には早いように思うのだけど⋯」
私が切り出すとロットは急に笑顔になった、初めて見る彼の愛想のいい顔に嫌な予感がしたが、
「ミランダ様にも朗報です」
そのロットの言葉で、やった!ひょっとして半年早く離婚ができるのかしら?満面の笑顔が出たのだろう前のめりの私にロットは少しハニカムように悪夢を投げつけた。
「そんなに嬉しかったのですね、口座が空になっていたみたいですので、嬉しいでしょう。婚姻の延長をお伝えしに参りました」
「は?」
私は耳を疑った。
何言ってるの?このスットコドッコイは。
口座が空になったとはこちらに来る時に彼に渡された口座のことだろう。
セルトと契約して3ヶ月後にギルドの口座に全額移動したのだ。
空になって当たり前だ。
それより延長ってどういうこと?
しかもそれを何故私が嬉しいと思うとこの男は思ったのかしら?
私が思考の沼に陥って何も言わないのを言葉が出ないほど喜んでいると勘違いしたロットは勝手に話し始めた。
「エミリーナ様が懐妊したのでこちらの事情が変わってしまったのです」
そう言って話したのは巫山戯た内容だった。
本来サミュエルは私と離婚する理由を石女にしようと思っていたらしい。
それは想像していたからまぁいいけども。
だからエミリーナが妊娠しないように気をつけてもいたのだが、今から3ヶ月前に懐妊が解って半年後に産まれるという。
離婚前に産まれたら私とサミュエルの間に産まれた事にしないと庶子になってしまう。だから嫌でも二人の子にしなければならないが、それでは離婚の理由には使えないし、それならと今私と離婚してエミリーナと再婚しても子供の産み月が問題になる、だから2年延長しろということをいけしゃあしゃあと言ってのけた。
「巫山戯てるの?」
私が手放しで喜ぶと思っていたらしいロットは驚愕しているが、そんなものを喜ぶと思われたのが心外だ。
何が悲しくて既に花の盛りを過ぎた乙女があと追加で2年も我慢せねばならないのか。
もうすぐ私は21歳になるのだ。
「お断りするわ」
私の言葉にロットが噛み付く。
「何を!貴方もお金がなくて困っているでしょう。ちゃんと追加で生活費はお渡しいたしますよ」
とことん私を馬鹿にした言葉だ。
そもそも私はこの契約結婚をお金の為に了承したわけではない。
スチュート伯爵家は富豪とまでは行かないけれど裕福な貴族なのだから。
3回目の婚約解消が世間的にも見世物になることが解っていたからだ、離婚も充分に醜聞だけど三度の婚約解消と離婚の天秤にかけて、離婚の方が幾分か世間的にマシだと思ったからあんな巫山戯た提案を呑んだのだ。
「結構よお金ならあるもの、なんなら最初に渡されたお金も全額、いえ利息でもつけてお返ししましょうか?その代わりたっぷり慰謝料を頂きますけどね」
強気の私にたじろぐロットは唇をワナワナと震わせていた。
そして見当違いのことを言う。
「この石女が!」
「はぁ?そりゃあ石女でしょうね、そんな行為などしたこともないのですから」
自分の言葉が失言だったと気付いたロットはまたしても唇を噛み締めていた。
そんなに噛んだら血が出るわよ。
「兎に角お断りするわ、サミュエルが何を考えてるか知らないけれど契約違反は其方ですから、今でも慰謝料上乗せには充分なのよ、ねっサンダーさん」
自分の偽名がバレていたのが不思議だったのか、またまた驚愕してるけど何故バレてないと思ったのかしら、そのほうが不思議だわ。
「また伺います」
そう言っておそらくサミュエルにお伺いを立てるつもりだろうロットは帰っていった。
勿論玄関まで送ることはしなかったし、なんなら料理長が大量の塩を玄関にぶち撒けていた。
嫌な客が来たら行う東方の風習らしい。
実はこの2年半で私は使用人達とセルトに私の境遇を呪いの件以外の事は話していた。
流石に石女鬱女の汚名は早々に返上したかったし同情の目でずっと見られるのも嫌だったからだ。
でも別の意味で同情は買ってしまったけれど⋯。
だから家の使用人達の総意は、リンデン公爵家に繋がる者は皆敵なのだ。
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マリリンさんに習った平民の言葉を心の中で呟いた。
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