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数日、伯爵邸を見張っていたら同じ時間に同じ馬車が外出していることが分かった。帰宅時間はまちまちである。
ずっと伯爵邸に張り付いているので何処に行ってるのかは分からないし、中に乗っているのがルクルト伯爵かどうかも分からない。馬車の窓にはカーテンが引かれているし、伯爵家の表向きの家族構成は伯爵一人だけど、それが真実とは限らないから。
それで今日はさり気なくその馬車の後を付けてみようと思って、ライラは御者役を買って出てくれたサムにお願いした。
サムはドットとミリー夫妻の次男だ。彼はライラの家とは無縁の仕事をしている。
だけど今回はジルから話を聞いて「面白そう」と協力してくれる事になり、なんと仕事まで休暇を取ってくれた。但しリミットは一週間。今日は4日目だからもうあまり付き合ってもらえる時間がない。
だからライラは少し焦っていた。
この方法だとサムがいないとかなり大変なことが予想されるからだ。
サムの動かす馬車はゆっくりと、伯爵家から出てきた馬車を付かず離れずの微妙な間を取って後を追った。
辿り着いたのは驚く事にあの池のある子爵邸だった。
ライラの家とは近い場所だ。
到着した時、思わずライラはゴクンと唾を飲みこんだ。
「お嬢様、ここって」
「そうね、あの池のある家よね」
ライラは頭をフル回転させてみたが、子爵という身分は覚えていたけれど名前が思い出せない。目を瞑って腕を組み瞑想もしてみたが無駄な努力に終わった。
それでも何か行動を起こさなければ始まらないと、ライラは馬車を降りて子爵邸を見つめていた。馬車毎中に入った為、中の人物が誰なのか確認は出来なかった。暫く待っても出てこなかったから、ライラは思い切った手段に出てみた。
この子爵邸はライラ達の子供の頃は恰好の遊び場だった。そんなに広い邸ではなかったから裏に回ると塀も低いからか庭がよく見えていた。
それを思い出したライラはサムを馬車に残しジルと裏に回ることにした。
「お嬢様、気をつけないともし庭に出られていたらこちらは丸見えですよ」
「分かってるけど表からは何も探れないじゃない」
そんな会話をしながら裏に回ったのだが、ジルの危惧は大当たりだった。
丁度庭で二人の人物がお茶をしていた。
しかもあの頃にはなかったガゼボがあって、それはライラ達が回ってきた所から、まっすぐに視線の合う場所に設置されていた。
そう、ライラとジルは裏に回った途端に、寛いで会話に花を咲かせていた二人の人物とバッチリ目が合ったのだ。
「ハッセル商会のライラちゃんだよね!」
調べた容姿通りのルクルト伯爵に、ライラは陽気に手を振られながら声を掛けられて、いつの間にかライラとジルの背後には騎士が並んで立っていた。
「捕獲?」
ライラの呟きはジルの耳に虚しく届いた。
◇◇◇
「うわぁこんな所で会えるなんて嬉しいなぁ」
「こんな所で悪かったわね」
ルクルト伯爵は嬉しそうにライラとジルにお茶を薦めながらそう言った。
隣の人物は伯爵よりも少し年上に見える女性で貴婦人然とした綺麗な女性だった。
物をハッキリと口にする性格のようで伯爵にも直ぐに嫌味を言っている。
「は、はぁあのありがとうございます」
高級そうなティーカップに注がれた紅茶を前にしてライラは、落としたらどうしようと、ドギマギしながらカップを手に取るのを躊躇していた。隣に無理やり座らされたジルは意識がここにあるのかどうかも分からないほど呆けている。
「今日は到頭付けてくる事にしたのかい?」
「⋯⋯⋯ひっ!」
ここ数日の見張りと後をつけていたことが伯爵にバレバレだった事が分かって、ライラは小さな悲鳴を上げた、隣のジルの顔色は青から白に変わっている。
「ライラちゃんはやっぱり結婚に乗り気じゃないのかな?」
「当たり前でしょう、後妻を手放しで喜ぶ人なんているわけないじゃない。しかもこんなに若く可愛らしい女の子が!10歳は離れているでしょう?」
「そうなんだけどねアレの女嫌いもライラちゃんなら何とかなると思ってさ」
二人の会話にライラは「ん?」と疑問が浮かんだ。
伯爵とライラの年の差は10歳どころでは無い、伯爵はライラの父よりも年上で、丁度ふたまわりの差がある。
それにこんなに愛想の良い人が女嫌い?
何かこちらの認識と違う次元で話が進んでいるように思えて、ライラの頭の中には疑問符が飛び交っていた。
✎ ------------------------
あけましておめでとうございます🙇♀
近況ボードでご挨拶させて頂きましたが作品の方でも簡単ではありますが新年のご挨拶申し上げます😊
今年の初更新でございます📕
本年もどうぞmarukoをよろしくお願いします
ずっと伯爵邸に張り付いているので何処に行ってるのかは分からないし、中に乗っているのがルクルト伯爵かどうかも分からない。馬車の窓にはカーテンが引かれているし、伯爵家の表向きの家族構成は伯爵一人だけど、それが真実とは限らないから。
それで今日はさり気なくその馬車の後を付けてみようと思って、ライラは御者役を買って出てくれたサムにお願いした。
サムはドットとミリー夫妻の次男だ。彼はライラの家とは無縁の仕事をしている。
だけど今回はジルから話を聞いて「面白そう」と協力してくれる事になり、なんと仕事まで休暇を取ってくれた。但しリミットは一週間。今日は4日目だからもうあまり付き合ってもらえる時間がない。
だからライラは少し焦っていた。
この方法だとサムがいないとかなり大変なことが予想されるからだ。
サムの動かす馬車はゆっくりと、伯爵家から出てきた馬車を付かず離れずの微妙な間を取って後を追った。
辿り着いたのは驚く事にあの池のある子爵邸だった。
ライラの家とは近い場所だ。
到着した時、思わずライラはゴクンと唾を飲みこんだ。
「お嬢様、ここって」
「そうね、あの池のある家よね」
ライラは頭をフル回転させてみたが、子爵という身分は覚えていたけれど名前が思い出せない。目を瞑って腕を組み瞑想もしてみたが無駄な努力に終わった。
それでも何か行動を起こさなければ始まらないと、ライラは馬車を降りて子爵邸を見つめていた。馬車毎中に入った為、中の人物が誰なのか確認は出来なかった。暫く待っても出てこなかったから、ライラは思い切った手段に出てみた。
この子爵邸はライラ達の子供の頃は恰好の遊び場だった。そんなに広い邸ではなかったから裏に回ると塀も低いからか庭がよく見えていた。
それを思い出したライラはサムを馬車に残しジルと裏に回ることにした。
「お嬢様、気をつけないともし庭に出られていたらこちらは丸見えですよ」
「分かってるけど表からは何も探れないじゃない」
そんな会話をしながら裏に回ったのだが、ジルの危惧は大当たりだった。
丁度庭で二人の人物がお茶をしていた。
しかもあの頃にはなかったガゼボがあって、それはライラ達が回ってきた所から、まっすぐに視線の合う場所に設置されていた。
そう、ライラとジルは裏に回った途端に、寛いで会話に花を咲かせていた二人の人物とバッチリ目が合ったのだ。
「ハッセル商会のライラちゃんだよね!」
調べた容姿通りのルクルト伯爵に、ライラは陽気に手を振られながら声を掛けられて、いつの間にかライラとジルの背後には騎士が並んで立っていた。
「捕獲?」
ライラの呟きはジルの耳に虚しく届いた。
◇◇◇
「うわぁこんな所で会えるなんて嬉しいなぁ」
「こんな所で悪かったわね」
ルクルト伯爵は嬉しそうにライラとジルにお茶を薦めながらそう言った。
隣の人物は伯爵よりも少し年上に見える女性で貴婦人然とした綺麗な女性だった。
物をハッキリと口にする性格のようで伯爵にも直ぐに嫌味を言っている。
「は、はぁあのありがとうございます」
高級そうなティーカップに注がれた紅茶を前にしてライラは、落としたらどうしようと、ドギマギしながらカップを手に取るのを躊躇していた。隣に無理やり座らされたジルは意識がここにあるのかどうかも分からないほど呆けている。
「今日は到頭付けてくる事にしたのかい?」
「⋯⋯⋯ひっ!」
ここ数日の見張りと後をつけていたことが伯爵にバレバレだった事が分かって、ライラは小さな悲鳴を上げた、隣のジルの顔色は青から白に変わっている。
「ライラちゃんはやっぱり結婚に乗り気じゃないのかな?」
「当たり前でしょう、後妻を手放しで喜ぶ人なんているわけないじゃない。しかもこんなに若く可愛らしい女の子が!10歳は離れているでしょう?」
「そうなんだけどねアレの女嫌いもライラちゃんなら何とかなると思ってさ」
二人の会話にライラは「ん?」と疑問が浮かんだ。
伯爵とライラの年の差は10歳どころでは無い、伯爵はライラの父よりも年上で、丁度ふたまわりの差がある。
それにこんなに愛想の良い人が女嫌い?
何かこちらの認識と違う次元で話が進んでいるように思えて、ライラの頭の中には疑問符が飛び交っていた。
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あけましておめでとうございます🙇♀
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今年の初更新でございます📕
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