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その日は兼てよりフォルク様と一緒に王妃陛下に呼び出された日でした。
私は朝から準備が大変!
夜会でもないのに王宮に行くというだけで、こんなにも準備しなければならないの?
結婚前にはこんな事する必要はなかった。
女って⋯女って⋯疲れる⋯。
「やぁ!ホーリーとても綺麗だよ」
いつの間にか愛称呼びを勝手に始めたフォルク様が、エントランスで見上げながら手を振っている。
私は階段を降りながら苦笑、もう笑うしかない。
彼は最近本当に明るい、あの笑顔が本来のフォルク様なら、この傾向はいいように思うけれど⋯。
(フォルク様、貴方私を愛するつもりがないって仰いましたよね?あれは何だったのでしょう?)
この言葉を言われた時、正直に言うと私心の底ではホッとしたのです。だってこの婚姻自体王妃命でしたから、私も愛するつもりがなかったと、お互い様で丁度いいって心の中で逃げていました。
でもこんなにも甘々砂糖漬けにされてしまうと、いつかフォルク様が誰かに体をまたもや乗っ取られた時に、私気にせずいられるのかしら?
結婚後は一度も違和感のないまま過ごしているけれど、幼い頃からの体質が変わっていないとは言い切れません。
今の私は甘々に溺れそうになるのを、必死で藁を掴んでる状態なのです。決して自分が溺れないようにと。
「フォルク様も素敵です」
普通の外出着に私も世辞を返したのですけど、正直世辞ではありません。だって見目はとってもよろしいフォルク様ですから、まともな時は文句のつけようがないのですから。
そしてそれが非常に悔しいのですわ!
フォルク様のエスコートで馬車に乗り込むと、慌てたように外からコンコンと小窓が叩かれました。
どうやらケトナー卿のようです、今日彼は休暇をとってデートだと浮かれていたのですが、どうされたのかしら?
フォルク様は一旦乗った馬車から、今一度降りました。私はすこしきついウエストを今の内にと、体を捩って調えます、少し太ったかしら?
二人で何事か話をしたあとにフォルク様は再び馬車に乗ってきました。
「どうされましたか?」
「いや⋯⋯⋯何でもない」
フォルク様は嘘が上手いのか下手なのか、ちょっとよくわかりません。
でも何も言わないのを詮索する趣味はないので、それ以上は聞きませんでしたの。
取り敢えず私は今日の王妃陛下のお茶会を乗り切ることに集中しなければならないのです。
『姉様のお茶会』
もう悪い予感しか致しません。
幼い頃はただ楽しんで王宮に行かせてもらっていました。いつからだったかしら?
矢鱈と姉様から『お願い』事をされるようになったのは?
今回もまさかの無理難題なお願い事ではないですよね。
そんな不安があったからなのか、不甲斐ない私は王宮で馬車を降りた途端、目眩に見舞われ意識を手放してしまっていました。
◇◇◇
「ホーリーこの世界は物語の世界だって言ったら、お前は信じる?」
「ねえしゃま、なあにしょれ」
「だよねぇ、だぁれも信じないかなぁ」
「しんじにゃい?」
「うん、だから忘れようかと思うんだけどね。記憶というのは厄介でね」
「ふうん」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「ホー⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯リー」
「ホーリー」
「ホーリー!」
目覚めると心配そうな顔のフォルク様が目に入りました。私はその顔を手を伸ばして撫でながら「クスッ」と笑ったつもりでしたが、どうやら声には出ていなかったみたい。
「そんなに引き攣って⋯大丈夫か?痛むのか?」
「⋯⋯⋯⋯」
「まだ起きなくていいぞ、今侍医が来てくれるそうだ。陛下も落ち着いてから面会に来られるそうだから、ゆっくり休んで」
フォルク様は私を甲斐甲斐しくお世話しようとされています。その姿が何だか可愛らしく見えました。
でも私の笑顔を引き攣っていると言ったのは、ちょっと解せませんけれど。寝ている間に何か夢を見たのですが、あれは夢だったのかしら?
それとも幼い頃にした姉様との会話?
それから侍医の診察を受けました。
どうやら浮かれて張り切った侍医は、私の妊娠の兆候かと思ったようでしたが、がっかりさせちゃってごめんなさい。
まだ初夜に至っておりませんから⋯残念。
その日は王宮に泊まることになったのですが、昼に散々寝たからでしょうか、夜中に寝付けなくなってしまいました。
部屋の明かりを点けて、ベッドサイドに置かれたお水をゴクリゴクリと勢いよく飲んだ所で、ノックの音がしました。
こんな夜中に誰かしら?
少し警戒して返事をしなかったら、もう一度ノックの音がしました。
「誰?」
「ホーリー私だ。明かりが点いていたからやってきた」
こんな夜中に出歩くなどありえないお方
それは姉様の単独の訪問でした。
私は朝から準備が大変!
夜会でもないのに王宮に行くというだけで、こんなにも準備しなければならないの?
結婚前にはこんな事する必要はなかった。
女って⋯女って⋯疲れる⋯。
「やぁ!ホーリーとても綺麗だよ」
いつの間にか愛称呼びを勝手に始めたフォルク様が、エントランスで見上げながら手を振っている。
私は階段を降りながら苦笑、もう笑うしかない。
彼は最近本当に明るい、あの笑顔が本来のフォルク様なら、この傾向はいいように思うけれど⋯。
(フォルク様、貴方私を愛するつもりがないって仰いましたよね?あれは何だったのでしょう?)
この言葉を言われた時、正直に言うと私心の底ではホッとしたのです。だってこの婚姻自体王妃命でしたから、私も愛するつもりがなかったと、お互い様で丁度いいって心の中で逃げていました。
でもこんなにも甘々砂糖漬けにされてしまうと、いつかフォルク様が誰かに体をまたもや乗っ取られた時に、私気にせずいられるのかしら?
結婚後は一度も違和感のないまま過ごしているけれど、幼い頃からの体質が変わっていないとは言い切れません。
今の私は甘々に溺れそうになるのを、必死で藁を掴んでる状態なのです。決して自分が溺れないようにと。
「フォルク様も素敵です」
普通の外出着に私も世辞を返したのですけど、正直世辞ではありません。だって見目はとってもよろしいフォルク様ですから、まともな時は文句のつけようがないのですから。
そしてそれが非常に悔しいのですわ!
フォルク様のエスコートで馬車に乗り込むと、慌てたように外からコンコンと小窓が叩かれました。
どうやらケトナー卿のようです、今日彼は休暇をとってデートだと浮かれていたのですが、どうされたのかしら?
フォルク様は一旦乗った馬車から、今一度降りました。私はすこしきついウエストを今の内にと、体を捩って調えます、少し太ったかしら?
二人で何事か話をしたあとにフォルク様は再び馬車に乗ってきました。
「どうされましたか?」
「いや⋯⋯⋯何でもない」
フォルク様は嘘が上手いのか下手なのか、ちょっとよくわかりません。
でも何も言わないのを詮索する趣味はないので、それ以上は聞きませんでしたの。
取り敢えず私は今日の王妃陛下のお茶会を乗り切ることに集中しなければならないのです。
『姉様のお茶会』
もう悪い予感しか致しません。
幼い頃はただ楽しんで王宮に行かせてもらっていました。いつからだったかしら?
矢鱈と姉様から『お願い』事をされるようになったのは?
今回もまさかの無理難題なお願い事ではないですよね。
そんな不安があったからなのか、不甲斐ない私は王宮で馬車を降りた途端、目眩に見舞われ意識を手放してしまっていました。
◇◇◇
「ホーリーこの世界は物語の世界だって言ったら、お前は信じる?」
「ねえしゃま、なあにしょれ」
「だよねぇ、だぁれも信じないかなぁ」
「しんじにゃい?」
「うん、だから忘れようかと思うんだけどね。記憶というのは厄介でね」
「ふうん」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「ホー⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯リー」
「ホーリー」
「ホーリー!」
目覚めると心配そうな顔のフォルク様が目に入りました。私はその顔を手を伸ばして撫でながら「クスッ」と笑ったつもりでしたが、どうやら声には出ていなかったみたい。
「そんなに引き攣って⋯大丈夫か?痛むのか?」
「⋯⋯⋯⋯」
「まだ起きなくていいぞ、今侍医が来てくれるそうだ。陛下も落ち着いてから面会に来られるそうだから、ゆっくり休んで」
フォルク様は私を甲斐甲斐しくお世話しようとされています。その姿が何だか可愛らしく見えました。
でも私の笑顔を引き攣っていると言ったのは、ちょっと解せませんけれど。寝ている間に何か夢を見たのですが、あれは夢だったのかしら?
それとも幼い頃にした姉様との会話?
それから侍医の診察を受けました。
どうやら浮かれて張り切った侍医は、私の妊娠の兆候かと思ったようでしたが、がっかりさせちゃってごめんなさい。
まだ初夜に至っておりませんから⋯残念。
その日は王宮に泊まることになったのですが、昼に散々寝たからでしょうか、夜中に寝付けなくなってしまいました。
部屋の明かりを点けて、ベッドサイドに置かれたお水をゴクリゴクリと勢いよく飲んだ所で、ノックの音がしました。
こんな夜中に誰かしら?
少し警戒して返事をしなかったら、もう一度ノックの音がしました。
「誰?」
「ホーリー私だ。明かりが点いていたからやってきた」
こんな夜中に出歩くなどありえないお方
それは姉様の単独の訪問でした。
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