ミリアーナの恋人

maruko

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 その日の夕食はアリーラと二人だった。
 ミリアーナは今までは殆ど一人で食事をしていた、父親だと思っていたセルヴィは、騎士団で働いていて夜勤もあったから家で食事をする事のほうが稀だった。
 それでもミリアーナの誕生日だけは休みをとって一緒に食べてくれたのだ。
 他の人と食事をするのに慣れていないミリアーナ。
 しかも貴族にはマナーが必要だと教会で一緒に学んだルーシーが言っていた。

 食前の祈りは一緒みたいだったのでホッとして祈る。
 テーブルに並べられたカトラリーの数に如何していいか分からず食べるのを躊躇していたら、アリーラから声がかけられた。

「ミリアーナ、マナーは気にしなくていいわ、食べたい物を好きな食べ方で食べなさい。それよりも嫌いな物はないかしら?」

「いいの?あっいいんですか?嫌いな物はない、です!」

 ミリアーナが言葉遣いも一生懸命直そうとしているのをアリーラは微笑みながら見つめている。
 ミリアーナは嬉しそうにフォーク一本でお肉や野菜を刺して食べ始めた。

「ミリアーナ、貴方を市井に預けたのは私なのよ、しかも自分たちの勝手な都合で。だから気にしなくていいわ。ただ⋯」

「?」

 料理長がミリアーナに気を使って、予め切っておいてくれたお肉を食べながら、アリーラの声に耳も顔も傾けて聞いていた。

「貴方、ライヤの籍に入ったって言ったでしょう。ライヤが亡くなって今ファンデル子爵家は私の預かりになってるの、貴方の籍はそのままなのよ」

「えっ?私は貴族のままなんですか?」

 ミリアーナが驚くとアリーラはニッコリ笑って微笑んだ。
 口に入れたばかりのお肉を咀嚼しながらミリアーナは考えた。
 (貴族、私貴族、貴族って何するのかな?)
 考えても分からないミリアーナは、アリーラの顔をじっと見た。

「どうしたの?」

「貴族って何するんですか?」

「⋯⋯⋯ふふふっふは、」

 アリーラは堪らないという感じで何処に隠してたのか扇子を開き口元を隠した。肩が上下に揺れているから笑っているのがミリアーナにも分かった。

 (何が可笑しかったかな?変な質問しちゃった?)

 ミリアーナには益々分からなかった。一頻り笑って気が済んだのか扇子を閉じてアリーラが「ごめんなさいね」と謝った。

「孫と食事をするのがこんなにも楽しいなんて思わなかった、ありがとうミリアーナ」

 わけの分からない理由で笑われて、訳もわからないまま謝られたミリアーナは、やっぱり貴族ってサッパリだな、と思ったがアリーラの笑顔はとっても嬉しかった。
 食事のあと今日は疲れただろうから早めに寝るようにと、案内された自分の部屋でミリアーナは腰を抜かしてしまった。


 ◇◇◇


 こんなベッド立派すぎて怖くて寝られない!
 そう思っていたのにミリアーナは朝までぐっすりと眠ってしまった。
 サラに起こされた時は何だか恥ずかしくて真っ赤になる。
 そんなサラの横には見知らぬ女の子がいた。

「お嬢様おはようございます、お目覚めは如何ですか?」

「おはようございます、サラさん」

「お嬢様、僭越ながら一言申し上げます。私はこの家の侍女です。お嬢様は歴とした、長年この国に貢献してきた由緒正しきルクオート侯爵家の尊い血筋の御方です。何卒敬語だけはお止めください。そうせねば使用人皆が困惑してしまいます。慣れないこととは思いますが、少しでもお気をつけ下さればよろしいのです。何卒よろしくお願いします」

 そう言ってサラは頭を下げた、隣の女の子もサラに倣っていた。ミリアーナこそ困惑したが、昨日きちんと自分の事を聞かされた。
 それはとても驚く話ではあったけれど受け入れなければミリアーナはもう行く所はないのだ。
 で、有るならばこの状態も受け入れよう、そう思った。

「サラさ、サラ分かった。これからはなるべく止めようとおもい、思う。気づいたら注意して、ね?」

 何とか丁寧な言葉を言わないようにと喋ると変な言葉遣いになってミリアーナは心の中でダメダコリャと思ったが、サラはニコニコして「その調子です」と勇気づけてくれた。

「お嬢様、こちらは侍女のユノです。今日からお嬢様付となりますのでお見知りおきください」

「えっとユノよろしくね」

「はいお嬢様よろしくお願いします」

 ユノはミリアーナに頭を下げて丁寧な言葉で接したが、何となく変な気がした。理由はわからない。だが俄お嬢様は今日初日なので気のせいだと思う事にした。
 サラが今日は朝食のあとに、アリーラから昨日の話の続きがあると教えてもらった。

 食堂に行くとまだアリーラは来ていなかった。
 壁際に使用人達が並んでいるのが何だかミリアーナは慣れなくて居心地が悪かった。
 それにしてもこの家の使用人は年配の人が多いなと気づく、若いのはさっき会ったユノ位だろうと思った。
 そうこうしていたらアリーラが来て朝食が始まった。昨日と同様好きに食べていいと言われて、それでもあまりがっつかない様に気を付けて食べた。
 その時にミリアーナの正面に立つユノの顔が焼き付いた。
 (やっぱり気のせいじゃなかったみたい)
 ユノの顔には明らかな侮蔑の眼差しが見て取れた。

 (あ~なんか前途多難?かも)

 ミリアーナは思いながら紅茶をズズズと啜った。




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