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「陛下の⋯ではこちらの事情を貴方は陛下から聞いたのね?」
アリーラはルーカスから渡された手紙を読む前に察した、そして言葉をかけながら手紙に目を通す。
そして大きな溜息を吐く。
「一つ聞かせて」
「はいマダム」
「ミリアーナには態と近づいたの?私達を探る為に」
「いえそれは誤解です、出会いは至ってシンプル偶然に他なりません、ですが工房でお会いしたあとは半々と申し上げておきます」
「半々?」
「えぇ半分は仰るとおり探る為に、ですが私はミリアーナ嬢に惹かれてもおります」
「貴方ご自分の歳をミリアーナに教えてるの?」
「いえ聞かれておりませんので。そういえば私の歳など何方もお聞きになりませんね、皆さん気にも止めないのでしょう」
「今後はミリアーナに不要に近づかないで」
「それはお約束しかねます、が当分は言うことを聞きましょう。私にはしなければならない事がありますし、それはマダムも同じでは?」
「ふぅ、本当にお願いだからミリアーナを傷つけないであげて。あなたにしてみれば10歳も離れているのだから子供にしか見えないでしょうに」
「⋯⋯⋯」
アリーラの責める言葉にルーカスは返事をしなかった。ミドルネームで過ごすこの男、生まれた時の名は『レイビン・コーラル』コーラル伯爵家の令息だった。アリーラの娘ソフィアが記憶を取り戻してから証言した、口に何かを当てられた時一緒に居た親友アイリスの弟だ。
「それで、私に何を聞きたかったの?」
「貴方方は⋯ルクオート侯爵家は確かに国の重鎮で、ソフィア様は第二王子の婚約者だった。行方不明になった時、秘密裏にでも大捜索をされるのは当たり前です。ですが!ならばどうして姉も一緒に探してくださらなかったのですか!」
「⋯⋯⋯」
「父は、コーラル伯爵は何度もルクオート家に連絡していました。こちらも姉が突然いなくなり探すのにも限界があった。そんな時騎士団に居た父の友人からソフィア様も行方不明だと聞いたのです。だから父は姉も一緒だと、一緒に行方不明になったのだと訴えたのに。ルクオート侯爵は門前払いでした。両親は憔悴しながらも姉の捜索は諦めなかった、私財も全て投入して、そしてコーラル伯爵家は王家に爵位と領地をお返ししたのです。領民を姉の事で飢えさせるわけにはいかないですからね」
「私はその時は知らなかったわ、貴方のお姉様が居なくなっていたことも、コーラル伯爵がルクオートを訪ねてきていたことも。ソフィアが戻ってきて居なくなったときの状況を話してくれて、それで初めて貴方のお姉様も一緒だった事を知ったわ。でもね、その時は私達は貴方のお姉様が一緒だったという事しか分からなかったの。だってソフィアを攫った者達の仲間かもしれないでしょう?だから貴方にも会わなかったの。先程の陛下の手紙に貴方方の家、コーラル伯爵家はソフィアの誘拐には加担してはいないと思うと書かれていたわ、それで貴方の話を聞いてやって欲しいと手紙では嘆願されているわ」
「⋯⋯そうですか」
「えぇ、で貴方は私と同じ様に調べているの?」
「そうです、陛下に協力も要請しました、ソフィア様の事だから動いて下さると思っていたのに。もういいのだと仰って動いてくださいません。ですが俺は、私は姉の無念を晴らしたい」
「アイリスは、いえ貴方のお姉様は亡くなってるの?」
「はい、両親も亡くなり私は叔父に助けられ生きてきました。正直10年程前までは姉の事は分からなかったのです。叔父も商人として色々な国を飛び回っていましたから、ですが10年前に知ったのですが叔父への連絡が行き違っていたようで、17年前に辺境伯の地で身元不明の遺体として荼毘に付されていました」
「⋯⋯17年前」
「ソフィア様が戻られたのもその頃ですよね、おそらく一緒に居たのだと思います。ですがその頃はもうコーラル伯爵家は無くなっていましたし、姉の身元を示す物が家紋を認めた手紙だけだった。それに二人は同じ辺境伯の領地でも離れて発見されていたらしく、一緒にいたとは思わなかったと辺境伯が叔父に教えてくれました」
「そうだったの、ではその時に?」
「発見された時、姉はズブ濡れで殆ど死にかけだったようです。ただ今際の際の言葉を姉を発見した人が覚えてくれていました」
「⋯⋯⋯」
「姉は“ハーレム”と言ったそうです」
「!」
ルーカスの言葉でアリーラは自分の考えが、方向性が間違って無かった事を知った。そして同時にミリアーナの父親として思い当たる人物にも想像に至った。
「マダム、貴方は復讐をお考えですか?」
ルーカスに訊ねられアリーラは首を左右に振った。
「貴方には申し訳ないけど私は復讐しようと思って探ってるわけではないの。ミリアーナの父親を探したいだけよ」
「探して如何するのですか?」
「⋯⋯まだ決めかねているの」
未だにソフィアの行方不明の件で動き回っているアリーラだったが、目的は違うけれど同じ物を見ているルーカスに、自分が如何すればいいのかを教えてほしいと縋る気持ちで見つめた。
アリーラはルーカスから渡された手紙を読む前に察した、そして言葉をかけながら手紙に目を通す。
そして大きな溜息を吐く。
「一つ聞かせて」
「はいマダム」
「ミリアーナには態と近づいたの?私達を探る為に」
「いえそれは誤解です、出会いは至ってシンプル偶然に他なりません、ですが工房でお会いしたあとは半々と申し上げておきます」
「半々?」
「えぇ半分は仰るとおり探る為に、ですが私はミリアーナ嬢に惹かれてもおります」
「貴方ご自分の歳をミリアーナに教えてるの?」
「いえ聞かれておりませんので。そういえば私の歳など何方もお聞きになりませんね、皆さん気にも止めないのでしょう」
「今後はミリアーナに不要に近づかないで」
「それはお約束しかねます、が当分は言うことを聞きましょう。私にはしなければならない事がありますし、それはマダムも同じでは?」
「ふぅ、本当にお願いだからミリアーナを傷つけないであげて。あなたにしてみれば10歳も離れているのだから子供にしか見えないでしょうに」
「⋯⋯⋯」
アリーラの責める言葉にルーカスは返事をしなかった。ミドルネームで過ごすこの男、生まれた時の名は『レイビン・コーラル』コーラル伯爵家の令息だった。アリーラの娘ソフィアが記憶を取り戻してから証言した、口に何かを当てられた時一緒に居た親友アイリスの弟だ。
「それで、私に何を聞きたかったの?」
「貴方方は⋯ルクオート侯爵家は確かに国の重鎮で、ソフィア様は第二王子の婚約者だった。行方不明になった時、秘密裏にでも大捜索をされるのは当たり前です。ですが!ならばどうして姉も一緒に探してくださらなかったのですか!」
「⋯⋯⋯」
「父は、コーラル伯爵は何度もルクオート家に連絡していました。こちらも姉が突然いなくなり探すのにも限界があった。そんな時騎士団に居た父の友人からソフィア様も行方不明だと聞いたのです。だから父は姉も一緒だと、一緒に行方不明になったのだと訴えたのに。ルクオート侯爵は門前払いでした。両親は憔悴しながらも姉の捜索は諦めなかった、私財も全て投入して、そしてコーラル伯爵家は王家に爵位と領地をお返ししたのです。領民を姉の事で飢えさせるわけにはいかないですからね」
「私はその時は知らなかったわ、貴方のお姉様が居なくなっていたことも、コーラル伯爵がルクオートを訪ねてきていたことも。ソフィアが戻ってきて居なくなったときの状況を話してくれて、それで初めて貴方のお姉様も一緒だった事を知ったわ。でもね、その時は私達は貴方のお姉様が一緒だったという事しか分からなかったの。だってソフィアを攫った者達の仲間かもしれないでしょう?だから貴方にも会わなかったの。先程の陛下の手紙に貴方方の家、コーラル伯爵家はソフィアの誘拐には加担してはいないと思うと書かれていたわ、それで貴方の話を聞いてやって欲しいと手紙では嘆願されているわ」
「⋯⋯そうですか」
「えぇ、で貴方は私と同じ様に調べているの?」
「そうです、陛下に協力も要請しました、ソフィア様の事だから動いて下さると思っていたのに。もういいのだと仰って動いてくださいません。ですが俺は、私は姉の無念を晴らしたい」
「アイリスは、いえ貴方のお姉様は亡くなってるの?」
「はい、両親も亡くなり私は叔父に助けられ生きてきました。正直10年程前までは姉の事は分からなかったのです。叔父も商人として色々な国を飛び回っていましたから、ですが10年前に知ったのですが叔父への連絡が行き違っていたようで、17年前に辺境伯の地で身元不明の遺体として荼毘に付されていました」
「⋯⋯17年前」
「ソフィア様が戻られたのもその頃ですよね、おそらく一緒に居たのだと思います。ですがその頃はもうコーラル伯爵家は無くなっていましたし、姉の身元を示す物が家紋を認めた手紙だけだった。それに二人は同じ辺境伯の領地でも離れて発見されていたらしく、一緒にいたとは思わなかったと辺境伯が叔父に教えてくれました」
「そうだったの、ではその時に?」
「発見された時、姉はズブ濡れで殆ど死にかけだったようです。ただ今際の際の言葉を姉を発見した人が覚えてくれていました」
「⋯⋯⋯」
「姉は“ハーレム”と言ったそうです」
「!」
ルーカスの言葉でアリーラは自分の考えが、方向性が間違って無かった事を知った。そして同時にミリアーナの父親として思い当たる人物にも想像に至った。
「マダム、貴方は復讐をお考えですか?」
ルーカスに訊ねられアリーラは首を左右に振った。
「貴方には申し訳ないけど私は復讐しようと思って探ってるわけではないの。ミリアーナの父親を探したいだけよ」
「探して如何するのですか?」
「⋯⋯まだ決めかねているの」
未だにソフィアの行方不明の件で動き回っているアリーラだったが、目的は違うけれど同じ物を見ているルーカスに、自分が如何すればいいのかを教えてほしいと縋る気持ちで見つめた。
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