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暫くルーカスの胸の音に耳を傾けていたら、ミリアーナは夢を見てる間に魂が抜け出たような感覚に陥っていた。
フワフワと浮上する自分の体が何処にも定まらず、それをルーカスが抱き止めてくれている、そんな錯覚まで飛び出す始末。そうミリアーナは夢見心地だった。
そんな夢見心地はルーカスの言葉で戻されてしまった。
「聞いたかな?私は明後日帝国へ向けて出発する」
「⋯⋯」
「色々と騙したようになってしまったけれど私には言えないことが多すぎた」
「⋯⋯⋯」
「だけど君を愛おしく思う気持ちも合って、それを言いたくて来たんだが⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯お聞かせください」
「帝国に行けば定期的な連絡は取れなくなる、何年滞在するかも不明だ。現に君の母上は16年行ったっきりだ」
「そんなに危険な事を?」
「帝国はもう20年以上も不安定なんだ。なまじ国が大きすぎて周辺諸国も手を拱いている状態だから」
「もう私の事は聞いているのでしょう」
「あぁ」
ルーカスはそこで抱きしめていたミリアーナから少し離れて彼女の顔を見つめた。
部屋の灯りは小さなヘッドライトのみ、ルーカスの紺の髪色がその灯でミリアーナには少し紫がかって見えた。今はルーカスの顔色も表情も良く分からなかった。
「私、父はもういいのですけどね。2人いますし」
「もし君の父親が、マダ、前侯爵夫人や私が想像している人物なら、状況によっては君の身分はとんでもない事になる」
「?」
ミリアーナはルーカスの言葉がよく分からずに彼の顔を首を傾げながら眺めた。
「ふっ、そんな顔をされると離れがたくなる」
「⋯⋯離れるのは寂しいです」
ミリアーナは素直な気持ちが自然と口から溢れた。
するとルーカスは再びミリアーナを抱きしめた。
そして胸の内を吐露した。
「私は君よりも10歳も歳上なんだ、隠してた訳じゃないって言いたいけど、聞かれないことをいい事に教えなかった。私は見た目がだいぶ下に見られるから社交界にいる時も、その方が都合が良かったしね」
「⋯⋯10歳」
「吃驚した?」
「⋯⋯はい、とても27歳には見えませんでした。ユノもそんな事言ってなかったし」
「あぁあの子か、あの家もきっともう終わりだな」
「えっ?」
「詳しい事はきっと君のお祖母様が教えてくれるよ、今は⋯⋯そんな話はしたくないな」
「ごめんなさい」
ミリアーナはどうして自分が謝るのか分からないままに謝罪の言葉が出てしまっていた。
「君が謝る必要は全く無いよ、ただもう次に君と会うのが何時になるか分からないから、私が焦ってるだけだ」
「⋯⋯」
「ファンデル子爵令嬢、ミリアーナと呼んでも?」
「⋯⋯⋯はい」
「ミリアーナ、私が帰るのは何時になるか分からない、2、3年ならきっといい方だ。何十年になるかも分からない。だから君に惹かれてるのに、君を愛おしいと思う気持ちはあるのに、私は約束の言葉が言えないんだ。出来るだけ手紙は送れるようにする偽名かもしれないが、何とかしようと思う。あぁごめん私にはそんなことしか出来ない。だけどミリアーナ、君がもう私の事をいらないと思えるまで⋯」
「⋯⋯思えるまで?」
「私を恋人にしていて貰えないか?」
「⋯⋯⋯」
「待てなくても、いや待たなくてもいいんだ、ただ心の中だけでも⋯⋯」
「ルーカス様が私の恋人になってくださるのですか?」
「違うよ、私が、レイビン・ルーカス・ストライトがミリアーナの恋人にしてもらうんだ」
「レイビン?」
「あぁ私の名前は年の離れた姉が付けてくれたんだ。ミリアーナ、君にはレイビン、レイと呼んでほしい」
「レイ?」
「そうレイだ!私はレイなんだ。だからミリアーナお願いだ、長くなくてもいいから」
「レイ、私の恋人は今から貴方です。待って「待たなくていい」」
ミリアーナの紡ぐ言葉をルーカスもといレイビンは言葉とともに自分の人差し指で止める。
そしてその言葉を尚止めるように触れるだけの口づけを落とした、2回目の口づけは冷たくなくてレイビンの体温をミリアーナは感じた。
だからかもしれない止められた言葉をミリアーナは言い切った。
「待ちます、私」
その言葉にレイビンの表情は見えなかったが、深緑の瞳が悲しく揺れた気がした。でもそれはミリアーナの瞳から溢れ出てくるもので同じ様に見えただけなのかもしれない。
たった一時の短い逢瀬
初めての恋の相手に恋人にしてほしいと懇願された、それはミリアーナにとってとてもとても幸せな時間だった。
「恋人にしてほしい」その言葉をミリアーナの元に置いてレイビンが帝国へと旅立った日から、自分の周辺が忙しなく動き出すなどその時のミリアーナは予想もしていなかった。
フワフワと浮上する自分の体が何処にも定まらず、それをルーカスが抱き止めてくれている、そんな錯覚まで飛び出す始末。そうミリアーナは夢見心地だった。
そんな夢見心地はルーカスの言葉で戻されてしまった。
「聞いたかな?私は明後日帝国へ向けて出発する」
「⋯⋯」
「色々と騙したようになってしまったけれど私には言えないことが多すぎた」
「⋯⋯⋯」
「だけど君を愛おしく思う気持ちも合って、それを言いたくて来たんだが⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯お聞かせください」
「帝国に行けば定期的な連絡は取れなくなる、何年滞在するかも不明だ。現に君の母上は16年行ったっきりだ」
「そんなに危険な事を?」
「帝国はもう20年以上も不安定なんだ。なまじ国が大きすぎて周辺諸国も手を拱いている状態だから」
「もう私の事は聞いているのでしょう」
「あぁ」
ルーカスはそこで抱きしめていたミリアーナから少し離れて彼女の顔を見つめた。
部屋の灯りは小さなヘッドライトのみ、ルーカスの紺の髪色がその灯でミリアーナには少し紫がかって見えた。今はルーカスの顔色も表情も良く分からなかった。
「私、父はもういいのですけどね。2人いますし」
「もし君の父親が、マダ、前侯爵夫人や私が想像している人物なら、状況によっては君の身分はとんでもない事になる」
「?」
ミリアーナはルーカスの言葉がよく分からずに彼の顔を首を傾げながら眺めた。
「ふっ、そんな顔をされると離れがたくなる」
「⋯⋯離れるのは寂しいです」
ミリアーナは素直な気持ちが自然と口から溢れた。
するとルーカスは再びミリアーナを抱きしめた。
そして胸の内を吐露した。
「私は君よりも10歳も歳上なんだ、隠してた訳じゃないって言いたいけど、聞かれないことをいい事に教えなかった。私は見た目がだいぶ下に見られるから社交界にいる時も、その方が都合が良かったしね」
「⋯⋯10歳」
「吃驚した?」
「⋯⋯はい、とても27歳には見えませんでした。ユノもそんな事言ってなかったし」
「あぁあの子か、あの家もきっともう終わりだな」
「えっ?」
「詳しい事はきっと君のお祖母様が教えてくれるよ、今は⋯⋯そんな話はしたくないな」
「ごめんなさい」
ミリアーナはどうして自分が謝るのか分からないままに謝罪の言葉が出てしまっていた。
「君が謝る必要は全く無いよ、ただもう次に君と会うのが何時になるか分からないから、私が焦ってるだけだ」
「⋯⋯」
「ファンデル子爵令嬢、ミリアーナと呼んでも?」
「⋯⋯⋯はい」
「ミリアーナ、私が帰るのは何時になるか分からない、2、3年ならきっといい方だ。何十年になるかも分からない。だから君に惹かれてるのに、君を愛おしいと思う気持ちはあるのに、私は約束の言葉が言えないんだ。出来るだけ手紙は送れるようにする偽名かもしれないが、何とかしようと思う。あぁごめん私にはそんなことしか出来ない。だけどミリアーナ、君がもう私の事をいらないと思えるまで⋯」
「⋯⋯思えるまで?」
「私を恋人にしていて貰えないか?」
「⋯⋯⋯」
「待てなくても、いや待たなくてもいいんだ、ただ心の中だけでも⋯⋯」
「ルーカス様が私の恋人になってくださるのですか?」
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「レイビン?」
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ミリアーナの紡ぐ言葉をルーカスもといレイビンは言葉とともに自分の人差し指で止める。
そしてその言葉を尚止めるように触れるだけの口づけを落とした、2回目の口づけは冷たくなくてレイビンの体温をミリアーナは感じた。
だからかもしれない止められた言葉をミリアーナは言い切った。
「待ちます、私」
その言葉にレイビンの表情は見えなかったが、深緑の瞳が悲しく揺れた気がした。でもそれはミリアーナの瞳から溢れ出てくるもので同じ様に見えただけなのかもしれない。
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