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「ふっ相変わらず植物に話しかける癖は健在だな」
不意に後ろから声をかけられた。
ミリアーナはピタリと体の動きが止まる、どれ位時間が経過したかわからない頃、再び声が掛かる。
「私の声⋯⋯忘れてしまった?」
戸惑う言葉にミリアーナは首を振る。
忘れてない、忘れるわけがない、忘れたくなんかない。
「忘れるわけ、ないじゃない!」
振り返りながらそう言ってミリアーナはその胸に飛び込んだ。
3年前必死で鍵を開け飛び出したバルコニーの時のように。
そしてその時と同じ様にレイ、レイビンは難なく彼女を抱き留めた。
「⋯⋯⋯⋯⋯レイ」
息が詰まるほど驚いたミリアーナは抱きとめられながら、その人の名を呼ぶのが精一杯だった。
「ミリアーナ会いたかった」
3年の間、一度だけ旅装の商人から受け取った封筒。中には小さなマラカイトで出来たピアスが入っていた。言葉は何も認められていなかった。
でもミリアーナにはそれが誰からなのかすぐに分かり、その日ミリアーナはピアスの穴を開けた。
その深緑の石が今もミリアーナの耳朶を飾っている。
「とても似合う」
レイビンはミリアーナの耳朶に手で触れ、そのまま耳元でそう囁いた。
耳元で囁かれた言葉にミリアーナは擽ったくて、真っ赤な顔でレイビンを見上げる。
王宮の庭園で不埒な行為はご法度だ、レイビンはミリアーナの手を引いてそのまま馬車停まりまで歩いていく。
ルクオート家の馬車に近づいた時、ミリアーナはセルヴィを思い出した。
「あっ!お父さん」
つい平民の時に呼んでいたように言ってしまい、繋いでいない方の手で口元を慌てて隠す。
その様子を見てレイビンは可愛くて堪らないという風にクスリと笑った。
「大丈夫、ちゃんと話してるから」
二人は馬車に乗り込み夜の闇に消えていった。
‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹
翌朝、新聞の一面を大きく飾ったのは帝国皇帝の交代だった。
第六皇子が皇帝の座を勝ち取ったと載せられている。
レイビンは、ベットにすやすやと眠るミリアーナの顔を視界に入れながら、新聞記事を見て珈琲を口に含んだ。
「さて、マダムに怒られに行かないと」
レイビンは湯を張りにバスルームに向かった。
‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹
ルクオート侯爵家の執務室では、羞恥に下を向く孫娘と飄々とした態度を変えない元伯爵子息を向かい側のソファに座らせ、懇懇と説教をしているアリーラの姿があった。
「全く帰国したその日に事に及ぶとは油断も隙もないわね」
「お褒めの言葉と取らせて頂きますマダム」
「その呼び名はもう必要ないわよね」
アリーラは帝国でマダムアリーという名で暗躍していた。サラの娘で戸籍上のミリアーナの母ルティアの後押しをする為に、必要な処置だった。
医師として帝国に向かったルティアは、なかなか皇室に手が届かず苦戦を強いられていた為、医師からのアプローチではなく商人として皇室へと入り込む事にした。アリーラの作った商会のおかげで皇室に入り込む事に成功はしたが、それでも肝心な中枢には入り込めなかった。だがレイビンが帝国へ派遣された事で事態が急変した。
そして諸悪の根源、帝国第三皇子を倒しミリアーナの父である第六皇子に皇帝の冠を齎したのだった。
「ミリアーナ、レイビンから昔の話を聞きましょう」
下を向く孫娘の顔を上げさせアリーラは微笑んだ。
「ミリアーナ、今からの話は皇帝から聞いた話だからおそらく間違っていない、だけど被害者の私の姉アイリスと君の母ソフィア様からは証言が取れない為、こちら側からの話は犯人達の主観の話しかないんだ。それを踏まえて聞いてほしい」
今から約20年前、廃妃になった前王妃は当時の第二王子に横恋慕していた。
そんな事実はなかったが、ソフィアに決まるまで自身も婚約者候補だったと何故か信じていた。
実際は最初から王家ではソフィア一択であった。
そんな時、ルクオート侯爵家の嫡男の病気が悪化したとの噂が実しやかに流された。
そこで野心を持ち計画を立てたのがルクオート侯爵家の分家筋だ。
ルースライアは病弱ではあったが、そこまで酷いとは皆思ってなかった、普通に侯爵家を継ぐだろうと思っていたし、ソフィアは第二王子が臣籍降下ないし王家に連なる身分になるから、ルクオートからは確実に離れると思っていた。
だったらルースライアが継いだあと、分家筋から忠臣として入り込み実権を握るつもりだった。
だが思ったよりもルースライアの病状が思わしくない、このままではルクオート侯爵家は第二王子がソフィアの婿として入ってしまう。
それではルクオートの分家筋は入り込む事は不可能になる。そこで彼等は一計を案じた。
それが第二王子の妻の座を欲していたミセトナル公爵家を唆す事だった。そこからは公爵家主導になる。
彼らの計画はソフィアの誘拐の時点で狂った。
アイリスが思ったよりもソフィアから離れなかったのだ、しょうがないから二人まとめて誘拐した。
そしてその頃帝国の皇子たちが作ったハーレムに二人を売った。
その後無事にミセトナル公爵家の公女がソフィアの後釜に納まったし、ルースライアは何とか持ち直してはいたがソフィアの件で病状も悪化していった、ひょっとしたら養子という手も使えるかもしれないと益々野心に燃えたルノー伯爵家だった。
ただ王太子のやらかしだけは偶然だったという。
ここまでがこの国で起きた事だ、ソフィアが見つかったあとの話はミリアーナ達は既に知っている。
「ここから第六皇子、いや皇帝から聞いた話をするね」
レイビンはサラが淹れたお茶を一口飲んで続きを話し始めた。
✎ ------------------------
本日完結予定です
残り2話1時間おきに投稿致します😊
不意に後ろから声をかけられた。
ミリアーナはピタリと体の動きが止まる、どれ位時間が経過したかわからない頃、再び声が掛かる。
「私の声⋯⋯忘れてしまった?」
戸惑う言葉にミリアーナは首を振る。
忘れてない、忘れるわけがない、忘れたくなんかない。
「忘れるわけ、ないじゃない!」
振り返りながらそう言ってミリアーナはその胸に飛び込んだ。
3年前必死で鍵を開け飛び出したバルコニーの時のように。
そしてその時と同じ様にレイ、レイビンは難なく彼女を抱き留めた。
「⋯⋯⋯⋯⋯レイ」
息が詰まるほど驚いたミリアーナは抱きとめられながら、その人の名を呼ぶのが精一杯だった。
「ミリアーナ会いたかった」
3年の間、一度だけ旅装の商人から受け取った封筒。中には小さなマラカイトで出来たピアスが入っていた。言葉は何も認められていなかった。
でもミリアーナにはそれが誰からなのかすぐに分かり、その日ミリアーナはピアスの穴を開けた。
その深緑の石が今もミリアーナの耳朶を飾っている。
「とても似合う」
レイビンはミリアーナの耳朶に手で触れ、そのまま耳元でそう囁いた。
耳元で囁かれた言葉にミリアーナは擽ったくて、真っ赤な顔でレイビンを見上げる。
王宮の庭園で不埒な行為はご法度だ、レイビンはミリアーナの手を引いてそのまま馬車停まりまで歩いていく。
ルクオート家の馬車に近づいた時、ミリアーナはセルヴィを思い出した。
「あっ!お父さん」
つい平民の時に呼んでいたように言ってしまい、繋いでいない方の手で口元を慌てて隠す。
その様子を見てレイビンは可愛くて堪らないという風にクスリと笑った。
「大丈夫、ちゃんと話してるから」
二人は馬車に乗り込み夜の闇に消えていった。
‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹
翌朝、新聞の一面を大きく飾ったのは帝国皇帝の交代だった。
第六皇子が皇帝の座を勝ち取ったと載せられている。
レイビンは、ベットにすやすやと眠るミリアーナの顔を視界に入れながら、新聞記事を見て珈琲を口に含んだ。
「さて、マダムに怒られに行かないと」
レイビンは湯を張りにバスルームに向かった。
‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹‧⁺ ⊹˚.⋆ ˖ ࣪⊹
ルクオート侯爵家の執務室では、羞恥に下を向く孫娘と飄々とした態度を変えない元伯爵子息を向かい側のソファに座らせ、懇懇と説教をしているアリーラの姿があった。
「全く帰国したその日に事に及ぶとは油断も隙もないわね」
「お褒めの言葉と取らせて頂きますマダム」
「その呼び名はもう必要ないわよね」
アリーラは帝国でマダムアリーという名で暗躍していた。サラの娘で戸籍上のミリアーナの母ルティアの後押しをする為に、必要な処置だった。
医師として帝国に向かったルティアは、なかなか皇室に手が届かず苦戦を強いられていた為、医師からのアプローチではなく商人として皇室へと入り込む事にした。アリーラの作った商会のおかげで皇室に入り込む事に成功はしたが、それでも肝心な中枢には入り込めなかった。だがレイビンが帝国へ派遣された事で事態が急変した。
そして諸悪の根源、帝国第三皇子を倒しミリアーナの父である第六皇子に皇帝の冠を齎したのだった。
「ミリアーナ、レイビンから昔の話を聞きましょう」
下を向く孫娘の顔を上げさせアリーラは微笑んだ。
「ミリアーナ、今からの話は皇帝から聞いた話だからおそらく間違っていない、だけど被害者の私の姉アイリスと君の母ソフィア様からは証言が取れない為、こちら側からの話は犯人達の主観の話しかないんだ。それを踏まえて聞いてほしい」
今から約20年前、廃妃になった前王妃は当時の第二王子に横恋慕していた。
そんな事実はなかったが、ソフィアに決まるまで自身も婚約者候補だったと何故か信じていた。
実際は最初から王家ではソフィア一択であった。
そんな時、ルクオート侯爵家の嫡男の病気が悪化したとの噂が実しやかに流された。
そこで野心を持ち計画を立てたのがルクオート侯爵家の分家筋だ。
ルースライアは病弱ではあったが、そこまで酷いとは皆思ってなかった、普通に侯爵家を継ぐだろうと思っていたし、ソフィアは第二王子が臣籍降下ないし王家に連なる身分になるから、ルクオートからは確実に離れると思っていた。
だったらルースライアが継いだあと、分家筋から忠臣として入り込み実権を握るつもりだった。
だが思ったよりもルースライアの病状が思わしくない、このままではルクオート侯爵家は第二王子がソフィアの婿として入ってしまう。
それではルクオートの分家筋は入り込む事は不可能になる。そこで彼等は一計を案じた。
それが第二王子の妻の座を欲していたミセトナル公爵家を唆す事だった。そこからは公爵家主導になる。
彼らの計画はソフィアの誘拐の時点で狂った。
アイリスが思ったよりもソフィアから離れなかったのだ、しょうがないから二人まとめて誘拐した。
そしてその頃帝国の皇子たちが作ったハーレムに二人を売った。
その後無事にミセトナル公爵家の公女がソフィアの後釜に納まったし、ルースライアは何とか持ち直してはいたがソフィアの件で病状も悪化していった、ひょっとしたら養子という手も使えるかもしれないと益々野心に燃えたルノー伯爵家だった。
ただ王太子のやらかしだけは偶然だったという。
ここまでがこの国で起きた事だ、ソフィアが見つかったあとの話はミリアーナ達は既に知っている。
「ここから第六皇子、いや皇帝から聞いた話をするね」
レイビンはサラが淹れたお茶を一口飲んで続きを話し始めた。
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