ミリアーナの恋人

maruko

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「そもそも帝国が荒れたのは先の皇帝が好色だったからだ」

 先の皇帝は兎に角女好きでしかも絶倫だった。
 一人では満足できない、というより一人では抱え切らない、なんせ毎晩のように抱き潰されてしまう。
 そこで側妃が実に10人選ばれた。
 そして一切の避妊を拒んだ、自己防衛で避妊薬を口にする側妃もいたが厳しく罰せられた為、皆皇帝の子をボロボロと産みまくった。

 実に先の皇帝には皇子が8人、皇女が16人も存在する。
 そして厄介だったのが皇子達の年の差だった。
 6人が同い年で2人が1つ下だった。
 皆等しく皇帝への道が開かれ帝王学も同じ様に学んだ、その中で第三皇子は父の絶倫まで受け継いでいた。
 そして皇帝が病に倒れた頃、その隙をつくように帝国の暗黒期が始まったのだ。
 第三皇子は他の皇子を捕らえ軟禁した。
 父に倣って自身の好みの女を攫ってハーレムを作り上げていく。
 ただ実権は第三皇子が握って決議は行っていたが、皇帝が玉璽を隠していた為、正式には皇帝を継承してはいなかった。
 帝国のそんな状態が4年目の時、ソフィアとアイリスがハーレムに売られてきた。

 ハーレムに来て直ぐにソフィアは召し上げられたが、彼女は割れたグラスの破片を手に持ち死を持ってそれを回避しようとした、その反動で記憶を無くす、その時に身代わりになったのがアイリスだった。
 ソフィアは記憶を無くした時に退行していた。彼女を守る為に、第三皇子のハーレムにアイリスは身を置いた。
 3年ほど過ぎた頃にアイリスは、軟禁されていた皇子たちと密かに交流を持つようになった。
 実は皇子達はハーレム内の部屋に軟禁されていたのだ。第三皇子は自身の目の届く範囲に置いておきたかったようだ。何故、直ぐ様命を奪わなかったのかというと、彼等がいる事で皇族以外の者が自身を狙わない様にとの考えからだった。
 実際には毎年1人ずつ皇子の命を奪っていっていた、1人ずつ居なくなることで恐怖を植え付ける事と、そのうち父皇帝が亡くなるのを見越していた。

 いつか第三皇子を亡き者にして逃げようとアイリスは機会を伺っていたが、その行程でソフィアが第六皇子に懐いていってしまった。
 ソフィアの心はその時まだ12歳程だった、だが体は成熟している。あまり衣服を与えられないハーレムの中で辛うじて布を纏うような姿に、到頭第六皇子は自制が効かなくなりソフィアと通じてしまった。
 そしてソフィアは妊娠してしまう。

 第三皇子にそれが分かってしまってはソフィアの命は無い、アイリスはハーレムから逃げる算段をその時から始める。
 だがなかなか上手くは行かなかった。そんな時、皇帝の側近だったが諌めて馘首になった男が、第六皇子に接触してきた。
 その者の手引きでアイリスとソフィアはハーレムから逃れられた。
 それから船を使ってこの国に帰る事になったのだった。それ以降のアイリスとソフィアの事は第六皇子は知らなかった。

「あの時、ソフィアは記憶をなくしていただけでなく精神が子供だったのね」

 レイビンの話を聞いてアリーラはポツリと呟いた。
 よく考えればわかったことかもしれない、あの時質問するアリーラ達の何に対してもソフィアは首を振るばかりだった。ただお腹だけは庇っていた。あれは無意識の本能だったのかもしれない。

「運良くというか悪くというかソフィア側妃は第三皇子に襲われた事は、恐怖心から覚えてないのでしょうね。きっと自分が死のうとした事も」

 レイビンは自身の見解を話した。

「ミリアーナ、君は本当の父親に会いたいかい?」

「⋯⋯会わなくてもいいなら無理に会いたいとは思えないかな」

「そうか、皇帝には今後ソフィア様とミリアーナには関わらないことを陛下を通じて盟約してもらってる、それが彼を皇帝に押し上げる協力の条件だった。でもミリアーナが会いたいなら会う事も出来るとはしていたんだ」

「前も言ったでしょう、私もう2人も父親がいるのよ。お腹いっぱいだわ」

 ミリアーナはそう言って笑った。

 その日の夜、アリーラは執務室で一人ワインを飲んでいた、そこにミリアーナがやって来た。

「お祖母様、ご一緒してもいいかしら?」

 彼女の言葉にアリーラは微笑んで手招きした。
 隣に座ったミリアーナのグラスにワインを注ぐと、恐る恐るというように彼女はチビリと飲んだ。ミリアーナはワインが苦手だった。
 もう一口チビリと飲んだミリアーナがアリーラの肩にコテンと頭を乗せて話し始める。

「お祖母様、お母様はもう記憶が戻らないほうがいいのではないかしら?だから私は会わないほうがいいと思うの」

「ミリアーナ、でもそれは」

「だって私お母様にそっくりなのでしょう?レイも言ってたわ、私に初めてあった時何処かで見た気がしたって、それって後で考えたらお母様の事だったって。私の顔を見て万が一にもお母様が私を産んだことを思い出したら、それはとても辛いことではないかしら?今は貴族達は私がお母様に似ていても姪だからと思ってもらえるわ。お母様もそう思ってくれ続けていればいいけれど、何かの拍子に思い出してしまったら。そう考えたら私会うのは止めようって思えたの。これから先いつか会う時が自然にあるかも知れない、そんな巡り合わせを私は待つわ」

 そう言い切るミリアーナの顔は少し寂しそうではあるけれど、慈愛に満ちてもいた。
 アリーラは彼女を愛おしく思い何時までも頭を撫で続けながら抱きしめた。










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