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第一章 初恋の終わり
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「それでは、婚約を解消しようと思います」
──カチャン──
ロッサルト公爵家での祝いの晩餐の最中、デザートに差し掛かり、そろそろいいかな?と云うふうに、父ロッサルト公爵の問いかけに対して、ユリアーナの返したその応えに、一番動揺したのは問いかけた父でもなく、招待された婚約者家族でもなく、ユリアーナの義母エリーヌだった。
彼女は震える指先がままならず、思わずスプーンをソーサーに落してしまった。
その彼女の心を慮ったユリアーナは義母に申し訳ないと思い、それ以上言葉は続けず長い睫毛を伏せた。
「も、申し訳ありません」
義母エリーヌの口から出た謝罪の言葉は、食器の音を立てた無作法に対してか、今日まで慈しんだなさぬ仲のユリアーナの婚約を壊したのが、自身の連れ子だったという事実に対してなのか、それはユリアーナには分からなかった。
心の中で大きく嘆息するユリアーナ
ユリアーナ・ロッサルトは今日3年間通った王立貴族学園を卒業した。
この晩餐の席は彼女の卒業祝いの為に用意された物であった。
お祝いの席で自身の婚約解消を願わなければならないなんて。
(どうしてこんな事になってしまったのか)
ユリアーナの見つめる先には、まだ婚約者であるオスカーが座っており、無表情でユリアーナを見ていた。
◇◇◇
ユリアーナとオスカーの婚約が調ったのは、彼女が貴族学園に入学する直前だった。
女王陛下の統べるこのライレーン王国には、近隣諸国と異なる事柄が大なり小なりある。
それは女王陛下が幼き頃より外交に力を入れ、自身で諸外国に赴き、取り入れる事と切り捨てる事の選別を行った結果だった。
陛下の改革の一つに学園の有り様があった。
王立学園は王立貴族学園と名を変え、その名の通りこの学園には貴族しか通えず、またそれは強制でもあった。
その代わりに設立したのが無償で通える平民向けの領立学園だった。
こちらの主体は各領主に一任し運営は各領内の税収にてする事となり、足りない分は国からも補助金を申請させる事にした。
そしてこの学園運営の評価が、各貴族家の評価と定めたのだ。
貴族しか通わない学園では、完全に小さな社交界となり、学内の教育は貴族としての自覚を持たせることに重きを置く事になる。
これは市井から流行が始まった読み物の影響で、一番重要視しなければならない貴族間の婚約を、軽んじる風潮に待ったをかける為であった。
女王陛下が即位する前は婚約破棄や解消などを、卒業式や公の夜会など衆人環視の中で行われ、貴族家では“負”でしかない事案が相次ぎ、衰退する貴族、特に上位貴族で傾く家が多くあったが、陛下の学園改変により改善されたおかげで、各家の当主は安心して学園入学前に婚約を結ばせる事が可能になった。
ユリアーナの父であるユリシーズ・ロッサルト公爵は、溺愛する愛娘の婚約を慎重に吟味した。
ユリアーナはロッサルト公爵家の嫡女である。
将来はロッサルト女公爵として領地経営に手腕を発揮してもらわなければならない、そんな彼女を心身共に支えられる男を探した。
そして送られて来た数多の釣書の中から見つけたのが、ルルベルド伯爵家の次男オスカーだった。オスカーはユリアーナの一つ年下ではあったが、家庭教師から優秀な成績だと聞いていたし、何より彼は優しい少年だと評判で、身分の低い者にも毅然とした態度ではあるが見下したりは決してしないと、公爵は身辺調査で確認してオスカーならばユリアーナは幸せになれると確信して婚約を纏めた。
ユリアーナは父から婚約者の名を聞いた時まさかと思った。
父はひょっとして知っていたのかと少しだけ疑ったが、ただの偶然だったようで安心した。何故ならオスカーはユリアーナの初恋の相手だったから。自分の初恋を父が知っているなんて恥ずかしい事この上ない。
彼との出会いをユリアーナは鮮明に覚えている、彼の言葉のおかげでユリアーナの心はとても慰められ、嫡女であろうという気力も湧き覚悟もできたのだから。
残念ながらオスカーの方は忘れているようで、ユリアーナとの初顔合わせで、何も名言しなかったから少しだけ寂しく思った。
オスカーから「初めまして」と挨拶された時は、ツキンと胸が傷んだ。
忘れてしまった相手に覚えていないのかと言うのも野暮だと思い、それ以降初めてあった日の事をユリアーナからオスカーに言う事はなかった。ただ心の中では「ありがとう」と感謝の気持ちを持っていた。そしてその出会いを結婚式のあとに打ち明けようと、密かに思ってもいたのだった。
だがユリアーナは話して於けば良かったとそれを知った時は後悔して泣いた。そうすればここまでモヤモヤすることも無く惨めにならなかったかもしれない。喩え結果は変わらず同じだったとしても、まだスッパリと諦めがついたのではないだろうか。
オスカーは、ユリアーナとの思い出を彼女の義理の妹のマリアンナだと勘違いしてしまっていたのだ。そして控えめで大人しいマリアンナは、オスカーから聞く出会いに身に覚えはないが、きっと自分が忘れているだけなのだと、オスカーの勘違いを訂正することなく話を合わせていた。
それが二人の始まりのきっかけだと知ったのは、ユリアーナとオスカーが婚約して3年が経とうとするつい先日の事だった。オスカーから婚約解消の打診を受けた日だ。
勘違いを知って数日経った今もユリアーナは訂正できていない、今更言ってもオスカーの気持ちは変わらないだろうと思う。
ユリアーナはこれ以上惨めな気持ちにはなりたくなかった。
✎ ------------------------
新連載です、久しぶりの恋愛カテ
緊張しております- ̗̀(๑ᵔ⌔ᵔ๑)
2章の予定ですので途中で短編から長編になる可能性があります。
先ずは1章12 話から
よろしくお願いします🙇♀
──カチャン──
ロッサルト公爵家での祝いの晩餐の最中、デザートに差し掛かり、そろそろいいかな?と云うふうに、父ロッサルト公爵の問いかけに対して、ユリアーナの返したその応えに、一番動揺したのは問いかけた父でもなく、招待された婚約者家族でもなく、ユリアーナの義母エリーヌだった。
彼女は震える指先がままならず、思わずスプーンをソーサーに落してしまった。
その彼女の心を慮ったユリアーナは義母に申し訳ないと思い、それ以上言葉は続けず長い睫毛を伏せた。
「も、申し訳ありません」
義母エリーヌの口から出た謝罪の言葉は、食器の音を立てた無作法に対してか、今日まで慈しんだなさぬ仲のユリアーナの婚約を壊したのが、自身の連れ子だったという事実に対してなのか、それはユリアーナには分からなかった。
心の中で大きく嘆息するユリアーナ
ユリアーナ・ロッサルトは今日3年間通った王立貴族学園を卒業した。
この晩餐の席は彼女の卒業祝いの為に用意された物であった。
お祝いの席で自身の婚約解消を願わなければならないなんて。
(どうしてこんな事になってしまったのか)
ユリアーナの見つめる先には、まだ婚約者であるオスカーが座っており、無表情でユリアーナを見ていた。
◇◇◇
ユリアーナとオスカーの婚約が調ったのは、彼女が貴族学園に入学する直前だった。
女王陛下の統べるこのライレーン王国には、近隣諸国と異なる事柄が大なり小なりある。
それは女王陛下が幼き頃より外交に力を入れ、自身で諸外国に赴き、取り入れる事と切り捨てる事の選別を行った結果だった。
陛下の改革の一つに学園の有り様があった。
王立学園は王立貴族学園と名を変え、その名の通りこの学園には貴族しか通えず、またそれは強制でもあった。
その代わりに設立したのが無償で通える平民向けの領立学園だった。
こちらの主体は各領主に一任し運営は各領内の税収にてする事となり、足りない分は国からも補助金を申請させる事にした。
そしてこの学園運営の評価が、各貴族家の評価と定めたのだ。
貴族しか通わない学園では、完全に小さな社交界となり、学内の教育は貴族としての自覚を持たせることに重きを置く事になる。
これは市井から流行が始まった読み物の影響で、一番重要視しなければならない貴族間の婚約を、軽んじる風潮に待ったをかける為であった。
女王陛下が即位する前は婚約破棄や解消などを、卒業式や公の夜会など衆人環視の中で行われ、貴族家では“負”でしかない事案が相次ぎ、衰退する貴族、特に上位貴族で傾く家が多くあったが、陛下の学園改変により改善されたおかげで、各家の当主は安心して学園入学前に婚約を結ばせる事が可能になった。
ユリアーナの父であるユリシーズ・ロッサルト公爵は、溺愛する愛娘の婚約を慎重に吟味した。
ユリアーナはロッサルト公爵家の嫡女である。
将来はロッサルト女公爵として領地経営に手腕を発揮してもらわなければならない、そんな彼女を心身共に支えられる男を探した。
そして送られて来た数多の釣書の中から見つけたのが、ルルベルド伯爵家の次男オスカーだった。オスカーはユリアーナの一つ年下ではあったが、家庭教師から優秀な成績だと聞いていたし、何より彼は優しい少年だと評判で、身分の低い者にも毅然とした態度ではあるが見下したりは決してしないと、公爵は身辺調査で確認してオスカーならばユリアーナは幸せになれると確信して婚約を纏めた。
ユリアーナは父から婚約者の名を聞いた時まさかと思った。
父はひょっとして知っていたのかと少しだけ疑ったが、ただの偶然だったようで安心した。何故ならオスカーはユリアーナの初恋の相手だったから。自分の初恋を父が知っているなんて恥ずかしい事この上ない。
彼との出会いをユリアーナは鮮明に覚えている、彼の言葉のおかげでユリアーナの心はとても慰められ、嫡女であろうという気力も湧き覚悟もできたのだから。
残念ながらオスカーの方は忘れているようで、ユリアーナとの初顔合わせで、何も名言しなかったから少しだけ寂しく思った。
オスカーから「初めまして」と挨拶された時は、ツキンと胸が傷んだ。
忘れてしまった相手に覚えていないのかと言うのも野暮だと思い、それ以降初めてあった日の事をユリアーナからオスカーに言う事はなかった。ただ心の中では「ありがとう」と感謝の気持ちを持っていた。そしてその出会いを結婚式のあとに打ち明けようと、密かに思ってもいたのだった。
だがユリアーナは話して於けば良かったとそれを知った時は後悔して泣いた。そうすればここまでモヤモヤすることも無く惨めにならなかったかもしれない。喩え結果は変わらず同じだったとしても、まだスッパリと諦めがついたのではないだろうか。
オスカーは、ユリアーナとの思い出を彼女の義理の妹のマリアンナだと勘違いしてしまっていたのだ。そして控えめで大人しいマリアンナは、オスカーから聞く出会いに身に覚えはないが、きっと自分が忘れているだけなのだと、オスカーの勘違いを訂正することなく話を合わせていた。
それが二人の始まりのきっかけだと知ったのは、ユリアーナとオスカーが婚約して3年が経とうとするつい先日の事だった。オスカーから婚約解消の打診を受けた日だ。
勘違いを知って数日経った今もユリアーナは訂正できていない、今更言ってもオスカーの気持ちは変わらないだろうと思う。
ユリアーナはこれ以上惨めな気持ちにはなりたくなかった。
✎ ------------------------
新連載です、久しぶりの恋愛カテ
緊張しております- ̗̀(๑ᵔ⌔ᵔ๑)
2章の予定ですので途中で短編から長編になる可能性があります。
先ずは1章12 話から
よろしくお願いします🙇♀
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