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第三章 葛藤
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あの日部屋を勅使用の応接室へと移動した後、カインはロッサルト公爵夫妻とユリアーナに、ファライナやショーズ侯爵への積年の恨みを吐露した。
もう関わりたくない、あの家には近寄りたくもないと、その願いをセルシオが叶えてくれたのだと彼は言った。
元々ファライナの側にいるようにと命を出したセルシオへ思うところはないと、感謝しているとカインは帰り際に言っていたからそれは本心なのだとユリアーナは思った。
ファライナには幼い頃から専属で侍女が付いていた。正確に言えば侍女見習いだった。
ファライナは幼い頃から自由奔放だった、凡そ令嬢らしからぬ振る舞いは憶測で言えば両親の気を引きたい行動だったかもしれない。だが彼女の両親はそれに気付かないばかりか、令嬢らしからぬ振る舞いも咎めなかった。
そんなファライナを使用人達は扱いに困った。
困ったが世話はしなければならない、そこで侍女頭は一計を案じた、それが侍女見習いだった。
喩え不手際があったとしても見習いなら侯爵夫妻から咎められても切り抜けられると考えた。
その日から侍女見習いはファライナの側にずっと侍っていた。
ゲートラン公爵家のセルシオにカインが侍従として侍っていたように、ファライナにもその侍女見習いのルーシーが侍っていたのだ。
幼馴染は4人ではなく5人だった。
ファライナのカウントに入っていないのは彼女の中でルーシーは“そんなつもり”はなかったのだ。
カインは云わばルーシーとは使用人仲間だ。
出会った時から一歩引いて、主達を見守らなければならない身分だったから自然と距離が近くなる。
二人が心を通わすのは自然な事だった、それでも分を弁えてそんな事はおくびにも出さない様にと二人とも心がけていた。
ルーシーは生まれは男爵家の娘だった。
だが父が亡くなって母共々男爵家を追い出されて母親の生家の男爵家に出戻った。だが母の生家は貧困に苦しむ没落寸前の貴族だった為、母は直ぐに実家の為に再婚した、似たような話は何処にでも在るのだとユリアーナはその話を聞かされた時思った。
マリアンナ達とルーシーが違うのは母親の再婚先がルーシーを連れてくるのを拒んだ事だ。
再婚は実家への融資の為だったから母の生家はそれを受け入れるしかなかった。母娘は引き裂かれルーシーは侯爵家へメイドとして奉公に出た。
メイドから侍女見習いになったのはショーズ侯爵家の侍女頭の都合だった。
そんなルーシーは主によく仕えた。
ファライナの情緒不安定からくる我儘も癇癪も全て受け止め、ある程度の精神の落ち着きに尽力した。
その事はショーズ侯爵家の使用人は皆知っていたが、肝心の侯爵夫妻は知らなかった。
シモンの気を引く為のファライナの愚かな作戦を、妻を亡くしたばかりのショーズ侯爵は鵜呑みにしてしまった。
領地に行ったファライナと王都に残るファライナに全く関心を示さないシモンとの橋渡しを、カインがセルシオに言われて進んで行ったのは、ただ主に忠実だったわけではない、セルシオもただ闇雲にカインに命じた訳でもない。
二人とも、ファライナに只管従っていたもう一人の幼馴染ルーシーを案じたからだった。
そんな事とは知らないファライナは領地でも自由奔放だった。相変わらずルーシーは振り回され、その振り回される要員にそのうちカインも加わった。
ファライナはショーズ侯爵にカインと婚約したいとパフォーマンスを始めたが、その行動が嘘だと言う事はカインもルーシーも気付いていた。
気付かなかったのはショーズ侯爵のみだ。
始めはカインが男爵家という事もあって侯爵は反対していた、だがファライナのあまりの熱意に彼は気が変わった。
ファライナの望みを叶えようとし始めたのだが、その事に一番動揺したのは他でもないファライナだ。
ファライナには“そんなつもり”はなかった。
ただシモンの気を引きたい一心だ。
だが今更父親に本当の事を言えない彼女は言い訳にルーシーを使った。
自分はカインを好きだが、カインはルーシーが好きなのだと二人を引き裂けないのだと言い出した。
よく考えればそれまでのファライナの言動と行動とは辻褄も全く合っていないのだが、妻亡き後ファライナを溺愛し始めた侯爵は愚かにも気付かなかった。
そのままルーシーを排除する事にしたのだ。結果的にそのやり方が卑劣だった。
始めは普通に解雇した、落ち度のないルーシーを解雇するのに少しだけ罪をでっち上げた。
ファライナの物を盗んだと冤罪を掛けられたルーシーは男爵家に帰される事になったが、そこでまさかのセルシオが手を差し伸べる事に土壇場でショーズ侯爵は気付いた。
カインからの報告でゲートラン公爵家に頼ろうとしたルーシーを、ショーズ侯爵は根本から切り捨てようと男爵家を製紙業に絡めて没落させた。
ルーシーの母の再婚のおかげで何とか没落を免れていた男爵家だったが、借金が返せただけで生活は苦しかった。姪を餓死させない為に侯爵家に奉公に出したのだ。そんな青息吐息の男爵家を罠に嵌めて没落させた侯爵は、これで娘の願いが叶うと信じていた。
“ショーズ侯爵は間違えた”
最初の出来事だった。
もう関わりたくない、あの家には近寄りたくもないと、その願いをセルシオが叶えてくれたのだと彼は言った。
元々ファライナの側にいるようにと命を出したセルシオへ思うところはないと、感謝しているとカインは帰り際に言っていたからそれは本心なのだとユリアーナは思った。
ファライナには幼い頃から専属で侍女が付いていた。正確に言えば侍女見習いだった。
ファライナは幼い頃から自由奔放だった、凡そ令嬢らしからぬ振る舞いは憶測で言えば両親の気を引きたい行動だったかもしれない。だが彼女の両親はそれに気付かないばかりか、令嬢らしからぬ振る舞いも咎めなかった。
そんなファライナを使用人達は扱いに困った。
困ったが世話はしなければならない、そこで侍女頭は一計を案じた、それが侍女見習いだった。
喩え不手際があったとしても見習いなら侯爵夫妻から咎められても切り抜けられると考えた。
その日から侍女見習いはファライナの側にずっと侍っていた。
ゲートラン公爵家のセルシオにカインが侍従として侍っていたように、ファライナにもその侍女見習いのルーシーが侍っていたのだ。
幼馴染は4人ではなく5人だった。
ファライナのカウントに入っていないのは彼女の中でルーシーは“そんなつもり”はなかったのだ。
カインは云わばルーシーとは使用人仲間だ。
出会った時から一歩引いて、主達を見守らなければならない身分だったから自然と距離が近くなる。
二人が心を通わすのは自然な事だった、それでも分を弁えてそんな事はおくびにも出さない様にと二人とも心がけていた。
ルーシーは生まれは男爵家の娘だった。
だが父が亡くなって母共々男爵家を追い出されて母親の生家の男爵家に出戻った。だが母の生家は貧困に苦しむ没落寸前の貴族だった為、母は直ぐに実家の為に再婚した、似たような話は何処にでも在るのだとユリアーナはその話を聞かされた時思った。
マリアンナ達とルーシーが違うのは母親の再婚先がルーシーを連れてくるのを拒んだ事だ。
再婚は実家への融資の為だったから母の生家はそれを受け入れるしかなかった。母娘は引き裂かれルーシーは侯爵家へメイドとして奉公に出た。
メイドから侍女見習いになったのはショーズ侯爵家の侍女頭の都合だった。
そんなルーシーは主によく仕えた。
ファライナの情緒不安定からくる我儘も癇癪も全て受け止め、ある程度の精神の落ち着きに尽力した。
その事はショーズ侯爵家の使用人は皆知っていたが、肝心の侯爵夫妻は知らなかった。
シモンの気を引く為のファライナの愚かな作戦を、妻を亡くしたばかりのショーズ侯爵は鵜呑みにしてしまった。
領地に行ったファライナと王都に残るファライナに全く関心を示さないシモンとの橋渡しを、カインがセルシオに言われて進んで行ったのは、ただ主に忠実だったわけではない、セルシオもただ闇雲にカインに命じた訳でもない。
二人とも、ファライナに只管従っていたもう一人の幼馴染ルーシーを案じたからだった。
そんな事とは知らないファライナは領地でも自由奔放だった。相変わらずルーシーは振り回され、その振り回される要員にそのうちカインも加わった。
ファライナはショーズ侯爵にカインと婚約したいとパフォーマンスを始めたが、その行動が嘘だと言う事はカインもルーシーも気付いていた。
気付かなかったのはショーズ侯爵のみだ。
始めはカインが男爵家という事もあって侯爵は反対していた、だがファライナのあまりの熱意に彼は気が変わった。
ファライナの望みを叶えようとし始めたのだが、その事に一番動揺したのは他でもないファライナだ。
ファライナには“そんなつもり”はなかった。
ただシモンの気を引きたい一心だ。
だが今更父親に本当の事を言えない彼女は言い訳にルーシーを使った。
自分はカインを好きだが、カインはルーシーが好きなのだと二人を引き裂けないのだと言い出した。
よく考えればそれまでのファライナの言動と行動とは辻褄も全く合っていないのだが、妻亡き後ファライナを溺愛し始めた侯爵は愚かにも気付かなかった。
そのままルーシーを排除する事にしたのだ。結果的にそのやり方が卑劣だった。
始めは普通に解雇した、落ち度のないルーシーを解雇するのに少しだけ罪をでっち上げた。
ファライナの物を盗んだと冤罪を掛けられたルーシーは男爵家に帰される事になったが、そこでまさかのセルシオが手を差し伸べる事に土壇場でショーズ侯爵は気付いた。
カインからの報告でゲートラン公爵家に頼ろうとしたルーシーを、ショーズ侯爵は根本から切り捨てようと男爵家を製紙業に絡めて没落させた。
ルーシーの母の再婚のおかげで何とか没落を免れていた男爵家だったが、借金が返せただけで生活は苦しかった。姪を餓死させない為に侯爵家に奉公に出したのだ。そんな青息吐息の男爵家を罠に嵌めて没落させた侯爵は、これで娘の願いが叶うと信じていた。
“ショーズ侯爵は間違えた”
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